一九八四年 (ネタバレあり)
仕事中に仕事とは関係ないウェブサイトを閲覧したことはないでしょうか?
仕事中にソリティアをしたことはないでしょうか?
仕事中にFacebookやTwitterに投稿したことはないでしょうか?
誰にもバレてないと思ってるかもしれませんが、会社はすべてお見通しです。
そして、一歩外に出ても私たちは監視されています。
街中いたるところに防犯カメラが設置されており、顔認証技術であなたの行動は筒抜けです。
先週の日経ビジネスの特集「社員は見られている」に、こういった事が記載されていて、とても興味深く読みました。
さて、仕事も終わり、家に帰ってリラックスタイム。
Facebookで、友人とのタワイもない気楽なやりとり。
Googleで検索、ネットサーフィン。
でも、これらの投稿や検索ワードも、誰かに見られる可能性は否定できません。
アメリカNSA(国家安全保障局)のスキャンダルが世界中を震撼させています。
国家がインターネット上の活動を監視、収集していると元CIAの人が暴露しました。
恐ろしいことです。
もはやプライバシーは無いも同然です。
さて、そういったことから、今、アメリカではジョージ・ウォーエルの全体主義の監視社会を描いたディストピア小説「1984」が再びベストセラーになってます。
この本は、1948年から見た1984年という未来の世界を描いています。
ここで描かれる1984年のロンドンは、オセアニアという国家の一部になっており、「ビッグブラザー」という独裁者によって支配されています。
街中のいたるところ、建物の中のいたるところ、家の中にまで、テレスクリーンという双方向の監視カメラがついたテレビが配置されており、国民は国家によって常に監視されています。
個人の自由意志、創造性、知性といったものを持つ事は許されず、そういう人間は「思考警察」によって、凄まじい拷問による洗脳をほどこされるか、蒸発させられます。
実の子どもが親を思考警察に突き出すことが賞賛されているので、実の子どもだといっても安心できません。
恐ろしいことに、国民を思考させないための一番の方法は、言語というものを無くす事なので、最終的にはアヒルのようにガーガーいうだけで意思疎通が図れることを目標にする部門があったりします。
街中に貼られてるポスターにはこう書いてます。
「ビッグブラザーがあなたを見ている」
「戦争は平和なり。自由は隷従なり。無知は力なり」
・・・・・・・
と書いたらキリがないんですけど、とても恐ろしい社会が描かれています。
こんな感じの内容なので、約60年前に書かれた本なのですが、以来ずっと、反共産主義、反監視社会のバイブルであり、小説を超えたアイコン的な存在になっています。
最近では、村上春樹の「1Q84」は、この小説からインスパイアーされているのは有名な話ですし、
アップルの歴史的なマッキントッシュのCMは、まさにビッグブラザーをぶっとばせ!って内容です。
ちなみに、映画「1984」の予告編
といっても、あながちフィクションともいえません。
ユン・チアンの「ワイルドスワン」に書かれてた文化大革命のときの中国や、
映画「キリングフィールド」で描かれてたポルポト派の村が思い起こされ、ゾッとします。
北朝鮮もこんな感じなんでしょうね。
まあ、そうは言っても我々日本のサラリーマンも笑っている場合ではないと思います。
「自由は隷従なり。無知は力なり。」
って言葉は、そっくりそのまま、多くの日本の会社、そして日本の社会全体に当てはまることですから。
ここからはネタバレになるのですが、
こんな感じの小説だから、読後感は最悪です。
思考警察によって連行された主人公とその恋人は、洗脳ではなく人格を作り替えると称され、長い月日をかけ凄まじい拷問を受け続けます。
どんな苦痛を受けても、どんなに恥ずかしめを受けても、主人公は「二人の愛という感情を奪うことはできない」という一心で辛うじて精神の均衡を保ち続けます。
しかし、最後の最後の究極の拷問の内容を知ったときに、ついに主人公は恋人を裏切ります。
「私にしないでくれ。これはジュリア(恋人の名)にしてくれ!」
愛を捨て別人間になった主人公は解放されます。
そこはもう肉体的、精神的苦痛のない世界です。
ビッグブラザーを信じて、何事にも疑問を感じなければ、普通に生きていけます。
自分の思考をもたず、体制の中で体制の言われる通りに生きれば、普通の人生を暮らせていけます。
隷属し、無知であれば、自由になれるのです。
この小説には、希望はまったくありません。
絶望しかありません。
ビッグブラザーに反抗して苦痛にまみれて生きるのも人生。
隷従して生きるのも人生。
どちらを選ぶのかは、私たちにゆだねられます。
PS.映画「1984」のテーマ曲(ユーリズミックス)
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