とびしまハッカソン
公開日:
:
最終更新日:2022/12/11
ハッカソン・アイデアソン, 呉 とびしまハッカソン
まず最初に意識高い皆んなにとってお馴染みのデレク・シーバスの「ムーブメントの起こし方」というTEDのプレゼンを見て欲しい。
ムーブメントを起こすには、最初のフォロワーが重要だ。
裸踊りする最初の人間は先駆者であるが、フォロワーがいないと、ただの変人に過ぎない。
経緯
2017年4月
僕は二十数年間勤務した会社から出向し、新しい職場に配属された。
担当業務は、ハッカソンなどのオープンイノベーションである。
そんな頃、ウフルという東京の会社が長野県伊那市でIoTのハッカソンをするとの情報を得た。
これだと思った。
その頃、僕の担当業務ではないが、職場ではAIやIoTをどう普及させるかということが議論されていたからだ。
IoTのハッカソン。
僕の業務的に1粒で2度美味しい。
周りからは、視察とかヒアリングでいいのに、わざわざ長野県までハッカソンに参加するなんて奇異に思われたことだろうが、実際に自分で経験しないと本質は分からないというのが僕の考えだ。
2017年6月
ハッカソンに参加した。
IoTなんかよく知らなかった僕は、実際に手を動かすことで多くのことを学んだ。
その時の様子
これを広島でもやりたい。
でもどうしたらいいか分からない。
この時の僕は、裸踊りするただの変人だった。
その変人に1人声をかけてくれた人間がいた。
最初のフォロワーだ。
TEDのプレゼンでは
「彼の勇気ある行動が、1人の変人をリーダーに変える」
という。
彼は、瀬戸内海に浮かぶ大崎下島のレモン関係者から農業のIT化、機械化の相談を受けていた。
今度大崎下島で農業関係者が集まるフォーラムがあり、そこで他の地域の事例として僕にハッカソンのことをプレゼンしてくれと言う。
願っても無い。
速攻で了承した。
とはいえ、遠く長野県の話を興味を持ってもらえるか不安だった。
2017年7月
フォーラムでの発表の様子
その時のスライド
ハッカソンなる未知の話に、いまひとつ会場の反応が分からない。
が、
このページで会場の空気が一変した。
プレゼンの最中だったが、地声の大きい強面の農家の男性が凄い圧で、僕に尋ねてきた。
「そのシステム、欲しい! いくらで売ってるのか?」
この瞬間から「とびしまハッカソン」は始まった。
※とびしまとは?
広島県呉市川尻町から瀬戸内海に浮かぶ下蒲刈島・上蒲刈島・豊島・大崎下島・愛媛県今治市の岡村島を7つの橋で結ぶルートのことを「安芸灘とびしま海道」(島々が庭園を渡る飛び石をイメージすることから名付けられた)といい、これらの島々のことを「とびしま」と呼ぶようになった。
ハッカソン開催に向け本格的に動いたが、ここには書けない色々な障害があり、1年ほど前(2018年初旬)に一旦は立ち消えになるも、 2018年8月にとびしまのレモン事業が広島県の事業「ひろしまサンドボックス」に採択されたことが追い風となり、再度ハッカソンの開催の機運が高まった。
(ご参考)「ひろしまサンドボックス」 第一次公募選定プロジェクト,ついに決定!
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/322554.pdf
そして、とびしまハッカソン、2019年3月16日、17日に開催に至る。
募集ページ
https://uhuru.connpass.com/event/117829/
とはいえ、実現に至ったのはいいが、ハッカソンの会場の大崎下島は、遠い。とても遠い。
広島市内から車で1時間30分かかる。呉市内からでも1時間。
それに、ほぼ全員が相部屋で合宿形式。
わざわざ、土日を潰してまで、来てくれるのかだろうか?
杞憂だった。
35名もお申し込みいただいた。
逆に、土日を潰してまで、わざわざ遠方の場所のハッカソンに参加するという方々なので、モチベーションは高かった。
とびしまハッカソン
そんなこんなで、なんとかハッカソン開催。
ウフルのハッカソンは、多数の人がイメージするゴリゴリ開発するハッカソンとは若干違う。
ハッカソンをすることが目的ではなく、地域課題を解決するサービスを実装するための手段としてハッカソンを活用している。
ハッカソンはアイデアを絞り出し、そのアイデアが実現可能かをその場で検証するための手段に過ぎない。
地元の人不在の独りよがりのプロダクト、サービスになってはいけない。
地元の人の話を聞き、現場を見るフィールドワークの時間を入れている。
とびしま柑橘クラブの秦さん
レモン農家の末岡さん
イギリスから移住された写真家のトムさん
雑草対策、放置竹林問題に有効な竹チップを製造しているTEGOの中原さん
話を聞くだけでなく、実際に現場を見に行く。
御手洗地区
ひろしまサンドボックスの実証実験の畑
ドローン
自動追尾する台車「カモーン」
これらを元にチームでアイデア出しをし、プロダクトを作る。
フィールドワークがある分、開発の時間が少ないが、そのへんはよく考えられている。
チームは運営側でランダムに決め、チームビルディングの時間を不要にしている。
開発ツールを環境設定済みのRaspberryPi、GrovePiに統一しているので、すぐに開発を始められる。
さらに地元の人がメンターとして常駐。
地元のことについて、分からないことがあれば、すぐに聞ける。
3時のおやつの時間にトムさんのお店Tea Cozyからスコーンの差し入れがあったり。
懇親会、合宿(同じチームメンバーを同室)によって、チームワークは強化された。
懇親会の様子
懇親会はレモン尽くし
さて、2日目
各チーム追い込み
そして発表
優勝チームは、
複数のカメラでレモンの大きさ、品質を判定するプロトタイプを作ったチーム「ゴレモンジャー」
おめでとうございます!!!
余談だけど、
僕も運営チームとしてハッカソンに参加し、審査対象外の余興としてみんなの発表の前座として発表した。
レモンのスマートスピーカー「レモーン」
レモーンに「いいレモンあります」って話しかけ、イケてるレストランのシェフにLINEで伝える生産者とシェフを直接結ぶサービス。
こんなのスマホアプリでいいじゃんと思うかもしれないけど、スマホなんぞ持ってない人が多いので、意外にいけるのではないかと思う。
(Raspberry Pi にマイクをつなげて、docomoの音声認識API、LINE Notify のAPIを使用)
ハッカソンとは?
これからは、特に根拠もなく、僕の主観をツラツラと綴ってるだけなので、気分を害する方がいたら広い心でご了承いただければと思う。あながちピントはずれなことは言ってないと思う。
おそらく大多数の人が思ってるハッカソンとは、エンジニアがゴリゴリ開発し、技術で遊ぶ、面白いものを作ったもの勝ちのイメージだ。プランナーなどの非エンジニアの方は肩身の狭い思いをすることが多い。
即席チームなので、せっかくできたプロダクトがそれっきりになるケースも多い。
一方で、アイデアソンというものもあり、各地でよく開催されている。アイデアだけなので、誰でも参加できる。
地元の課題解決、例えば、寂れた商店街を活気するためにはどうしたら良いか、観光客を呼ぶにはどうしたら良いか、都会からの移住者をどうしたら集めることができるか。など切実なものが多い。
デザイン思考をかじったファシリテーター主導で、住民、地元の学生がポストイットやホワイトボードを使って議論してスライドにまとめたりする。
しかし、結局アイデアは出るけど、実際に作れる人がいないので、発表して終わり。なんか意識高いことしたねーで終わる。
このようにハッカソンやアイデアソンは、その場のお祭りに終わってるケースがほとんどだと思う。
僕はそういう状況をDisってるわけじゃない。
個人的にお祭りなハッカソン大好きだし、ハッカソンから実装できないからといってダメだとは思わない。
だだ、一般人から見たハッカソンのイメージは、数年前よく見られたオープンイノベーションの万能薬のような扱いでは無くなり、幻滅期に入っていることを感じる。
僕の知ってるエンジニアの方たちは、技術で遊ぶのが大好きな人ばかりだけど、それ以上に自分の技術を世のため人のために使いたいと思っている人も多い。とはいえエンジニアに理解のない意識高い人に利用されるのはイヤだし、意識高い雰囲気に馴染めないなどの理由からアイデアソン系にはなかなか足を運ばないように思う。
iPod、iPhoneによるAppleの躍進から、日本はモノづくりは凄いがマーケティング、戦略で負けた。Appleに負けたのは技術ではなく経営力の違いだ。などという言説がまかり通ってしまった。
確かにそういう部分があるのかもしれないが、そういう見解が蔓延したがために、エンジニアはプランナーのことを「パワポ野郎」と揶揄し、プランナーは技術を軽視しポストイットとホワイトボードで横文字を駆使し仕組みづくりを妄想している。エンジニアとプランナーが分断されているのではないかと思う。
エンジニアは、上流から流れてくる受注仕事ではなく、自分の意思で社会に役立つプロダクト、サービスを開発したいはずでで、プランナーも同じ思いのはず。
今回のハッカソンは、エンジニア、プランナーが「特定の地域の課題を解決する」という共通目的で集まり、エンジニア、プランナーが両方とも力を発揮でき、お互いを尊重し、承認要求を満たせるハッカソンになってるのかなあと思う。
少ない人数で膝を突き合わせて、サービスやプロダクトを作る。
プランナーも技術を分からないとプレゼンできない。
技術のわかるプランナー、マーケティングができるエンジニアを育てることになってるのかなと思う。
ウフルのステマのようになったが、今まで、いろんなハッカソンに参加した中でも、ここまでエンジニア、プランナー、地元の人たちが一体になったハッカソンはなかなか無かったように思う。
最後に
審査員講評の時、
レモン農家の末岡さんは言葉に詰まった。
あの涙は忘れない。
どんな美辞麗句よりも、あの涙がこのハッカソンの価値を表してくれた。
そして、レモン農家さんから、このハッカソンのアイデアの中から、数件実装したいものがあったときく。
僕にとって、ハッカソンから事業が生まれることが最大の夢だった。
まさか裸踊りからここまで来るとは思わなかった。
そして、もちろん忘れていない。
TEDの男の言うように、
裸踊りの男よりも、最初のフォロワーがムーブメントの真の立役者であることを。
ありがとう。
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