『プロトタイプシティ』を読んで
最近はあまり見かけないけど、
数年前は、起業ピッチイベントのプレゼンを聞いたあとに
「で、それ動くものあるの?」
って質問すると、
「まだ構想段階です。エンジニア探してるんです」
っていう返答を聞くことがよくあった。
ピッチイベントに出る暇あったら、まずは自分で手を動かした方がいいのにと思ったものだ。
「計画よりも手を動かすこと」
頭でっかちな計画を立てるよりも、手を動かす中で正解を探していくプロトタイプ駆動。
プロトタイプ駆動の実践の場、すなわちプロトタイプシティの時代が始まっているということが、この本に書いてあった。
「プロトタイプシティ」といえば、まっさきに中国の深センが思い浮かぶ。
本書では深センの状況や歴史といったことも学ぶことができる。
次のプロトタイプシティという章があり、興味深く書をすすめるもベルリンが少し取り上げられていたが、結局、予測するのは難しいという結論だった。
次の深センを予測するのは困難だが、非連続的価値創造の時代に合致した時代に我々はどうしたらよいかの答えに以下のようなことが挙げられていた。
・変なものに対するアンテナ
・異質なものに積極的に接近し、取り入れる
・オープン性を保つ
さて、現在、世界をリードしている企業を挙げてみよう。
マイクロソフト、アップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックの超大企業から、ウーバー、エアビーアンドビー、滴滴、バイトダンス、ドロップボックス、Stripe、グラブといった元ユニコーン企業。
これらの企業に共通するのは、創業者自らがプログラミングをしているか、開発チームを率いているということが挙げられる。
綺麗なパワーポイント作るよりも、プロトタイピングを作る方が早い人たちだ。
顧客が欲しがるものを作るための唯一の方法は、彼らの前でプロトタイプを造り、彼らの反応に応じて改良していくということなのだ。
(ポール・グレアム)
アントフィナンシャルのCEOは言う
・多くの企業では戦略をしっかり練って5年、10年と前進するのに対し、アントフィナンシャルにとって戦略とは汲み上げるものであって、先に決めてしまうものではない。
・2年先を予測するのも困難、常に方向性を修正し、ピントを合わせていかなければいけない。
元MITメディアラボの伊藤穣一は言う
・社会は複雑で予測不可能になった。予測不可能だから、計画を立てるコストはどんどん上がっているにもかかわらず、計画そのものの有効性は下がっている。このような時代に対応するためには、計画ではなく、手を動かし、コミュニティを作りながら進むことが大事
・「今を集中して手を動かすことが最も大事。未来予測家でなく実践しよう、フーチャリストでなくナウイストになろう」
私は社会人になって四半世紀が経つ。
四半世紀たって、どんなに社会が変革しても、日本の大企業は、まずは念入りなPLANを立てることが重要で、PDCAはいまだに企業の戦略の基本であることは変わっていないように見受けられる。
市場調査、顧客ヒアリング、そして経営に説明する美しいパワーポイント・・・・
担当者から責任者、責任者から管理職、管理職から部長、役員・・・・
膨大なコミュニケーションコストを払って、上までたどり着く。
そのころには、時代遅れで凡庸なものになっている。
高度成長期、ソニーやホンダのように日本は革新的な製品を作ってきたのに、なぜここまで凋落したのか、原因はいろいろ挙げられているが、僕は本書のこの箇所が象徴的な答えなのだと思う。
例えば、ドローンを使った新ビジネスを企画している人たちが、自分のドローンを持っているという話をあまり聞かない。実際にドローンを触って飛ばしてみなければ、課題や活用方法を思いつくはずもないのに、自分で手を動かすビジネスマンが少ない。手を動かすことろビジネスを考えることの距離が遠いことも、日本はハマっている落とし穴だ。
そう、
頭でっかちに考える前に、
手を動かそう!
ナウイストになろう!
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