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ビジョナリー・カンパニー 2

公開日: :


前作は、偉大な企業の条件を豊富な調査・分析により解明した画期的な書であった。
前作についてはこちらの日記を参照
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2251687
しかし、偉大な企業とはそもそも初めから偉大だったのではないか。
ほとんどの企業は偉大ではない。
そこそこ良い企業は、どうしたら偉大な企業になれるのか?
という疑問から、再び調査・分析が開始され、本書は生まれた。
原題は、
Good to Great
なるほど、その通りの題名だ。
Good Company が Great Company になるにはどうしたらよいのか?
本書の方が前作よりも我々には参考になるかもしれない。
では、以下抜粋

時代を超えた成功の法則
1.第5水準の指導者であること 
 
 ・偉大な企業の指導者は、自尊心の対象を自分自身ではなく、
  偉大な企業を作るという大きな目標に向けている。
  我や欲がないのではない。
  それどころか、信じがたいほど大きな野心を持っているのだが、
  その野心はなによりも組織に向けられていて、自分自身には向けられていない。
 ・偉大な企業の指導者は、他社の動きにどう対応するかという観点から戦略を考えていない。
  いつも何らかの絶対的な基準に近づこうとしている。
  何かを作り上げたいという深い欲求と、高い理想を純粋に追い求める自身の衝動とに動かされている。
  これに対し、凡庸な指導者は、競争で打撃を受けることや取り残されることへの恐怖に動かされている。

2.最初に人を選び、その後に目標を選ぶ 
 
 まず始めに、適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろし、
 次にどこに向かうべきか決めている。

 ビジョンも、戦略も、戦術も、組織構造も、技術も、「だれを選ぶか」を決めた後に考える。
 
 ・「何をすべきか」ではなく「誰を選ぶか」からはじめれば、環境の変化に適用しやすくなる。
 ・動機付けの問題や管理の問題はほぼなくなる。
  適切な人材なら厳しき管理する必要はないし、やる気を引き出す必要もない。
 ・人材が揃っていなければ、偉大なビジョンがあっても意味はない。
 ・採用において、疑問があれば、採用せず、人材を探し続ける。
 
 ・最高の人材は最高の機会の追求にあてる。
  (問題の解決にあててはいけない)
 ・「人材こそがもっとも重要な資産だ」という格言は間違っている。
  適切な人材こそがもっとも重要な資産なのだ。

3.厳しい現実を直視する(だが、勝利への確信を失わない) 
 どれほどの困難にぶつかっても、最後には必ず勝つという確信を失ってはならない。
 そして同時にそれがどんなものであれ、
 自分がおかれている現実のなかでもっとも厳しい事実を直視しなければならない。
 
 ・岩を転がしてみたら、奇妙なものが下にいっぱいあったとする。
  そのとき、岩をもとに戻す人もいるだろうし、
  そこにあったものがとんでもなく恐ろしいものだったとしても、
  岩を転がして奇妙なものをしっかり確認するのが自分の仕事だと考える人もいるだろう。
 ・社外の現実ではなく、自分の顔色を心配するような状況を経営者が許していると、
  会社は凡庸になり、もっと悪い方向にすら進みかねない。
  カリスマ的な指導者よりも、カリスマ的でない指導者の方が、長期的な実績が良くなることが多い。
 ・偉大な企業への飛躍を導いた指導者は、
  上司が意見を聞く機会、そして真実に耳を傾ける機会が十分にある企業文化を作り上げている。

4.単純明快な戦略(針鼠の概念)
以下の3つの側面が重なる部分に関する深い理解を単純で明快な概念
 (針鼠の概念と呼ぶ)
 にまとめ、すべての活動の指針にしている。
 
 ①自社が世界一になれる部分はどこか?
  ・「能力の罠」を克服しなければならない。
    →利益を上げているからといってそれで最高になれるとかぎらない。
      どこにも負けない事業になりうる部分だけに注力する。   
 ②経済的原動力になれるのは何か?
  ・具体的には、財務実績に最大の影響を与える分母をたったひとつ選んで、
   「X当たり利益」という形で目標を設定している。
 ③情熱をもって取り組めるのは何か?
  ・どうすれば熱意を刺激できるのではなく、どのような事業になら情熱を持っているかを見つけ出す。

5.規律の文化
 
 ・枠組みの中での自由と規律という考えを中心とした文化を築く。
 ・「コッテージ・チーズを洗う」人たちを集める。
 ・規律の文化を規律をもたらす暴君と混同してはならない。
 ・針鼠の概念を徹底して守る。
 ・官僚制度は、規律の欠如と無能力を補うためのものであり、
  この問題は不適切な人をバスに乗せていることに起因している。
  適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろせば、
  組織を窒息させる官僚制度は不要になる、


以上の要因によって、良い企業が偉大な企業へと飛躍する。
その劇的な転換は、ゆっくり進む。
外部から見れば劇的で革命的にみえるが、
内部から見れば生物の成長のような積み重ねの過程だと感じられる。
巨大で重い弾み車を回転させるのに似て、
当初はわずかに前進するだけでも並大抵ではない努力が必要だが、
長期にわたって、一貫性をもたせてひとつの方向に押し続けていれば、
弾み車に勢いがつき、やがて突破段階に入る。

以上、良い企業が偉大な企業になるための過程を抜粋した。
技術やサービスよりも、経営者の資質、人材が重要なのだ。
適切な人をバスに乗せれば、管理する必要がないし、
「針鼠の概念」から外れないように注意しておれば、
あとは勝手にうまくやってくれるのだ。

最後に、なぜ偉大な企業を築く必要があるのか?
という疑問に対する著者の回答を紹介して終わりとする。
結局は自分の人生の問題と同じことなのだ。

「なぜ偉大さを追求するのか」ではない。
「どの仕事なら、偉大さを追求せずにいられなくなるのか」だ。
「なぜ偉大さを追求しなければいけないのか、そこそこの成功で十分ではないのか」
と問わなければならないのであれば、おそらく仕事の選択を間違えている。
自分が本当に好きだからこそ、可能な限り偉大なものにしたいと望むものに関与すべきだ。
そのような活動に関与すれば、第5水準の指導者への道を必ず歩むようになる。
仕事面で偉大さへの道を歩んでいけるだけでなく、人生も偉大なものになっていくだろう。

PS.
本書では現在米政府管理下の「ファニーメイ」を飛躍企業として取り上げているが、
さすがに、本書発行時2001年にサブプライム問題を読めなかったのは仕方がないだろう。

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Comment

  1. joshua より:

    サーキットシティーも飛躍企業として取り上げられていましたね(^_^;)
    ただまあ、この本に書いてあることの本質は、色あせる事はないと考えていますけどね。

  2. Tatsuya より:

    確かに私も本書の哲学は色あせることはないと思います。
    本書は2001年の本。
    たった8年間でこうも世界は一変しました。
    先を読むのはとても難しい・・・。

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