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貧困のない世界を創る

公開日: : 最終更新日:2015/11/03 マイクロクレジット,


2006年ノーベル平和賞受賞の
バングラディッシュのグラミン銀行ムハマド・ユヌス氏の
あまりにも有名なこの本をやっと読みました。

なぜ貧困は無くならないのか?
それは政府の仕事ではないのか?
否、
政府は非効率でスピードが遅い、それに不正が起こりやすい。
NPOがいるじゃないか?
否、
寄付を永続的に集めるのは困難、寄付者の同情疲労も起こる。
最近は企業がCSRをうたってるじゃないか?
否、
CSRは単なる飾りものだ。

「ソーシャル・ビジネス」こそが貧困を解決できる。
と、ユヌス氏は述べる。
ソーシャル・ビジネスとは、
利益ではなく、社会的な目標を達成するためのビジネスだ。
しかし、チャリティーでは続かない。決して損害を被ってはいけない。
チャリティーではない。ビジネスなのだ。

ユヌス氏は、グラミン銀行によるマイクロ・クレジットを筆頭に、
様々なソーシャル・ビジネスを展開し、貧困の解消を図っている。
そこで注目されるのは、
ビジネスの相手方が、男性ではなく、女性という点だ。
男はえてして自分の欲望を中心に動くが、
女性は家族や、子供の利益に動く。
その結果、地域の社会的利益をもたらすのだ。
男に金を渡してもロクなことに使わないことは、みなさんよくおわかりでしょう。
貧しい女性に融資する(グラミン銀行)
貧しい女性に情報へアクセスさせる(グラミン・フォンのテレフォンレディー)
貧しい家庭に、安くて栄養のあるヨーグルトを(グラミン・ダノン)
※グラミン・ダノンについては今週の日経ビジネスに記事あり。
女性が自立することで、子供の教育も充実していく。
教育は貧困から脱出できる最良の手段なのだ。

このように本書では、ユヌス氏の数々のビジネスの一端を紹介しているが、
本書の一番の肝は、最終章の「貧困のない世界」だろう。
貧困は、貧困博物館に展示しよう。
将来の子どもたちは、それを見て、なんて昔の人たちはバカだったのって笑うだろう。
そんなこと出来るわけがない。
どうして?
貧困は人間が作ったものだ。
人間が治せないわけがない。
ITとグローバル化によって、その可能性は大きくなってきた。
利益を吸い上げる強欲な仲買人を排除でき、誰もが平等に情報にアクセスでき、本当に自由な世界が実現できるはずだからだ。
そして、一番忘れてはいけないことが、温暖化だ。
貧困と温暖化は密接な関係がある。
今こそ、世界が一体となって温暖化に立ち向かう時だ。
(COP15では紛糾しているが・・・)

さて、本書を読み、私も確信を持ちました。
21世紀は、グリードな資本主義は終わり、
ソーシャル・ビジネスの時代になるのだろうと。
そのためには、
「一身の独立なくして一国の独立なし」(福沢諭吉『学問のすゝめ』)
まず自分の土台をしっかりさせることだと。
そして、全人類共通の問題に立ち向かっていこうと思う。

最後にユヌス氏の言葉で締めよう。

すべての人間には、単に自分の世話をするだけでなく、世界全体の幸福を増加させるために貢献しようという内なる能力がある。
しかし多くの人は、彼らが生まれつき持っている、この素晴らしい贈り物を開ける機会をまったく得ていないのだ。
彼らは自分たちの贈りものを活かすことなく死んでいく。
そうなれば、世界は彼らがなしとげたかもしれない成果のすべてを奪われたことになるのだ。
この世界から貧困を根絶することは可能である。
なぜなら貧困は自然な人間の姿ではないからだ。
それは人の手によって彼らに課されたものなのである。
できるだけ早く貧困を終焉に導き、貧困を永遠に博物館に入れるために、この身を捧げようではないか。

グラミン銀行については、こちらをどうぞ。
『グラミン銀行を知っていますか』
私のブログでも取り上げてます。
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=1962473

地球温暖化と貧困問題について、こちらもどうぞ。
『グリーン革命』
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2187397

その他、ソーシャル・ビジネスの本
『裸でも生きる』
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2313672

『マイクロソフトでは出会えなかった天職』
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2250280

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