虚妄の成果主義
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本
ここ10年来、
年功制度は「不公平で企業の活力をそぐ旧態然とした古い制度」という考え方が一般的で、
成果主義こそが企業の活力をあげる制度だと持ち上げられ、普及していきました。
しかし成果主義で果たして企業は業績を上げたのでしょうか?
社員は幸せになったのでしょうか?
昨今の世界的恐慌を見るまでもなく答えは明白です。
本書は、豊富な事例・実験に基づき、極めて学術的・論理的に
「日本型年功制こそが素晴らしい。成果主義はダメな制度」
とバッサリ切り捨ててます。
なかから、私がマーカーを引いた箇所を一部抜粋。
■年功制でも差はついている
・年功制では「エース級」だと言われる人に対する社内評価は一致していたし、
誰が「箸にも棒にもかからない」かについても社内評価は一致していた。
→しかし成果主義では「エース級」でも短期的な成果が悪いと評価が悪くなる。
・年功制の会社でも40歳以上になると明らかに昇進・昇格・昇給で差が付いている。
■人は金のみにて働くにあらず(金銭的報酬で逆にやる気を失う)
[実験例:面白いパズルを解かせる(途中に休憩あり)]
無報酬の学生は休憩時間もパズルを解くが、
金銭的報酬のある学生は休憩時間になったら休憩する。
[事例:少年のいやがらせ]
第1次大戦後、ユダヤ人排斥の空気が強い米国のある町で、
あるユダヤ人が洋服の仕立屋を開いた。
すると近所の少年たちが「ユダヤ人!ユダヤ人!」と店先でやじるようになった。
そこで彼らに「私をユダヤ人と呼ぶ少年には10セントあげよう」と言った。
次の日は「今日は5セントあげよう」
その次の日は、「今日は1セントしかあげれない」
少年たちは、「少なすぎる」と言って2度と来なくなった。
■職務満足
・職務満足度と離職確率との間には負の関係がある。
・職務満足度と自己決定度は正の関係がある。
■金銭的報酬について
・金銭的報酬とパフォーマンスが連動していれば、
仕事は金銭的報酬を得るための手段と化してしまい、内発的動機づけは低下する。
目の前の目標だけが気になり、周囲との競争には本質的に無縁になる。
だから成果主義のやっていることは最悪なのである。
その中でも罪が重いのは、成果主義が、仕事それ自体の面白さや楽しさをも奪ってしまうということだろう。
■見通しが与える活力
・例え現在職務に対する不満があっても、その会社での将来への見通しさえ立っていれば、
会社を辞めたりせず、チャレンジを続けられる。
・では、将来の見通しが立つようにするには、
①10年後の自分の会社のあるべき姿を認識にてもらう
②日々の仕事を消化するだけにならないようにしてあげる
③上司が仕事上の目標をはっきり示す
④短期的な数字合わせではなく、長期的展望に立った仕事をする
⑤その会社にいて自分の10年後の未来の姿にある程度期待がもてるようにする
要するに「日本的年功制」が基礎的条件として必要
[事例:アルプス山脈で遭難]
アルプスの雪山で遭難した部隊。
隊員のポケットにあった地図に勇気づけられて冷静に行動し、吹雪の中耐え抜き、3日目に無事帰還。
しかしよく見るとピレネー山脈の地図だった。
→目標は人々の迷いを取り払い、元気づけ、方向づける。
(誤った地図でさえ行動の指針として役立つ)
・目標が最適であるかどうかはあまり重要な問題ではない。達成度も関係ない。
将来の見通しが立つこと自体に、経営的観点からはある種の意義が存在する。
混乱しているときはどんな見通しでも有効である可能性がある。
・企業が危機に直面し、混乱の極みに達しようとするまさにその時、
経営者が毅然として進むべき道を指し示さなければ、組織は崩壊に至るであろう。
そんなときに右往左往するのは愚の骨頂である。経営者が揺らぐなど言語道断なのだ。
むしろ外部環境とは一線を画し、決然と自ら予測をたて、
自らの優先順位に基づいて自律的に行動することで、
自らの能力や優位性を有効に発揮していこうという姿勢こそが重要なのである。
つまり、将来の見通しがある程度明確であり、
金銭的報酬よりも面白い仕事を与えることが、
企業が成長し続ける源泉となるのだ。
いつ解雇になるか分からない職場では、モチベーションは発揮されない。
したがって、イノベーションも起こるはずがない。
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