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冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界大発見

公開日: :


冒険投資家ジム・ロジャーズ
バイク世界一周に続き、今度は車で世界一周。
前作「冒険投資家ジム・ロジャーズ 世界バイク紀行」はこちらの日記参照
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2387176
1999年1月アイスランドを皮切りに3年をかけて、恋人と世界一周。
途中で結婚をしたりと、とても楽しそうな旅のように見えるが、
ただ単なる金持の道楽と思うなかれ。
いたるところで腐敗した役人に賄賂を要求されたり、紛争地帯での危険な体験など
まさに苦難の旅です。
前回と同様に、ジムは冒険とともに現地の株式市場をチェックし、投資をしています。
そこに、ジムの投資哲学が垣間見れ、投資家にとっても、とても有益な書であります。
前作と本書からみえるジムの投資哲学は、
「現場を見ろ、体感しろ」
それに付きる。
決して空港とホテルとタクシーだけでの旅では知ることはできない。
私たちにはそんな時間もお金もないけど、究極の投資哲学だ。
でも投資のことが分からなくてもご安心を。
冒険小説としても読めるし、投資の基礎講座といった趣でも読めます。
地図を片手に想像力を膨らませて読みましょう。

では、内容に入ります。
ジムは前作と同様に、
徹底して、自由経済の邪魔をするもの、がんばる個人を邪魔する者を徹底して批判します。
既得権益に胡坐をかく腐った役人ども、援助のおこぼれにあずかろうとするNGOなど

YMCAや教会などから贈られてくる大量のTシャツが、今や売り物として巨大な市場を形成している。
アフリカの貧しい人たち向けに供出されたはずなのに、大陸に荷揚げされた途端、商品に生まれ変わるのだ。
こうした品は途中で関わった者たちの懐を肥やすだけでなく、地元の仕立屋の仕事を奪う。
ほとんどただで手に入れてくる商品と、どうやって競争していけるというのだ。
米国政府が食糧支援をすることで、アフリカの人々から農業の記憶を消し去っているのと同様に、古着のTシャツを教会に寄付する人々は、アフリカの織物業者や仕立屋の仕事を奪っているのである。
アフリカへ寄付されたものはほとんど同じような運命をたどる。
こういう寄付物資の流通業は、ここ10年間で大きく成長した産業の1つである。
NGOは巨大な産業だ。政府の汚職で増殖する。
NGOは金のなる木で、外国援助と腐った政府の間にたくさ仲買人を呼びこんだだけだった。
そうして役人どもと地元の商売人たちが、お金がどこかに消える前におこぼれにあずかるようになった。
海外援助のほとんどは外部コンサルタントや地元の軍部、腐った役人、新しいNGOの代表者、そしてメルセデス・ディーラーの懐に収まっている。

そういった既得権益に胡坐をかくものを嫌悪する一方で、
大志のある一個人には惜しみもなく賛美する。
とくに発展が終わり、硬直性のある国には移民のパワーが必要なのだ。
以下の文の米国という箇所を日本に読み替えてみるがいい。

自分で樽に入りフロリダの海岸へとやってきて、そこですぐ逮捕されたキューバ人のことを思い出す。
私は、この人が自分の下で働いてくれるか、あるいは私の町に住んでくれればよいと思う。
米国にいてもらう必要のあるのはこうした人たちである。
リスクを取れて、やる気があって、勇敢で、賢くて、大志を抱いている人たちである。

日本に対しては、
世界で一番裕福で清潔で効率的な国だと評しながら、
硬直性と革新性を失った点に警告を発している。

日本がこれまで成功していた要因の1つは、島国であることだ。
均質な国民性、つまり独自の民族性と単一の思考様式がこの国に恩恵をもたらせてきた。
これほどまでに中央集権化された社会では、意見が相違することはめったにない。
しかし、こうした特徴を持つ国の弱点は、硬直化である。
その柔軟性のなさはもはや克服しがたくなっている。

そして、相変わらずの中国びいきに加え、アフリカへの愛情と期待が読みとれます。
確かに、ジムは
「お金持ちになる最善の方法の1つは、ひどい戦争が終わった国へ行くことだ。」
と前作から繰り返して言ってます。
欧州列強に侵略される前のアフリカはもともと活況を呈してたのだから、
そろそろアフリカのルネッサンスが始まるのかもしれない。
そのためには、ジムは以下のような提言をしています。

アフリカの債務は放棄されるべきだ。
債務放棄が行われば、アフリカの指導者たちはそのお金を生産的なことに使えるようになる。
しかし、それ以上の援助は行われないということを条件に含めなければならない。
私たちの援助は盗人どもを権力の座に居座らせておくための銃に使われている。
援助がなくなれば、にっちもさっちも行かなくなって、指導者たちは生産的な活動を余議されなくなる。
そうしなければ権力の座を追われるからだ。
アフリカには真の解放者が現れ、当然、真の解放が行われる。
あのエネルギーと根性のすべてを活用し、この大陸の資源を利用する自由があれば、
アフリカの人々には大変な繁栄と富がもたらせるに違いない。

最後に、その他気になった箇所を抜粋します。

お金を借りること自体は悪い事ではない。
それが国であれ個人であっても、借りたお金がモノを生むために使われ、
将来のための投資になっているなら何の問題はない。
19世紀の米国は世界中から大変な額を借りていた。
借りたお金で鉄道や工場を建設し、生産インフラを整えた。
その後、米国は世界最大の債権国になり、世界最強の国になった。
アメリカ人は借金を賢く投資したのだ。
しかし、もしもたくさんお金を借りてロレックスやポルシェや豪邸を買い、
寄付や慈善事業にいれあげ、あるいは軍備に過大に注ぎ込んでいると、そう長くは持たない。
戦争は例え勝っても、国の資産の大きな部分を燃やしてしまっているのと同じことだ。
人は皆、群れて動くのが好きだ。
部屋から出てきた王様を見て、「王様は裸だ」と言えば、皆が馬鹿にしたり哀れんだりする。
「おい聞いたか。あいつ、王様が裸だってよ。馬鹿じゃないか。王様は服を着てるに決まってるじゃないか」
「ああ。心配するな。おれもその株を持っている」
彼らは皆、お互いの意見を確かめ合う。
王様に電話すればこう言われるのだ。
「わしは、ちゃんと服を着ておるぞ」と。
彼らはエンロンに尋ねた。
「当社では皆、よくやっています」
お互い電話で言い合う。
「万事順調。エンロンで働いているやつに電話したら、うまくいってるってよ」
さらにテレビに出て、王様はご立派だと吹聴するのだ。
多くの人が株式市場で犯す間違いの1つは、
何かを買い、その値段が上がるのを見て、自分は賢いのだと思い込むことだ。
こんなの簡単だ、と思ってしまうのである。
大儲けして、すぐ次の投資を探し始める。
まさしくそんなときこそ、本当に何もしてはいけないのだ。
自信というやつはすぐ自惚れになり、傲慢さに変わる。
こういうときこそ銀行にお金を置いて、冷静になるまでしばらく浜辺にでも行っているべき時なのである。
絶好の機会というのは、そうそうあるものではない。
今度はいつもと違うのだと誰かが言うのを聞いたら、
さっさとお金を持って逃げだしたほうがいい。
ロスチャイルド家の当主メイヤー・ロスチャイルドだったと思うが、
彼はどうやってお金持ちになれたかと聞かれて、こう答えた。
通りに血が流れているとき、市場に悲嘆が満ちているときに買い、
「まだ早すぎる頃」に売った。

私もジムのように、世界一周がしてみたい。
硬直しすぎて同質性の高いこの国を離れ、世界の多様性を感じてみたい。
若い時にこのような本に出会っていたらと思う。
そういうわけで、時間と自由のある若者にこそ薦めます。
社会に出る前にこの本を読むことを。

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