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下町ロケット

公開日: : 最終更新日:2015/10/18

ひさしぶりに、スカッと爽快な読後感の小説に出会えた。
下町の中小企業のドリームカムズトゥルー物語。
池井戸潤さんの直木賞受賞作
『下町ロケット』

「夢」を持ち、それに向かって挑戦することの大切さを思い出させてくれた。
と言っても、たんなるファンタジーではない。
ロケットの技術面、知的財産、銀行の姿勢、その他現在をとりまく中小企業の環境などがリアリティたっぷりに描かれており、膨大で緻密な取材を感じさせられる。
私は以前銀行の融資担当者の経験があることから、小説や映画に登場する銀行員については、ハリウッドで描かれる日本人のように違和感を感じることが多かったけど、三菱銀行出身の池井戸潤さんの描写にはウソっぽさがまったくなく、スッと物語に入ることができた。
このようなリアリティのおかげで、善悪分かりやすくするためにデフォルメされた登場人物にも、決して違和感を感じることがないし、サラリーマン金太郎的なご都合主義にも、まったく辟易することがない。
いつの間にか、登場人物ひとりひとりに感情移入し、一気に読んでしまう。
人物描写も明確なので、各登場人物の背景、大人の事情に同感、同情することが多く、いろいろと考えさせられる。
そして、なんといっても
「資金繰りに悩む下町の中小企業が銀行や大企業の邪魔に屈せず夢を叶える」
というところが、我々の判官びいきを満たしてくれる。
我々が日頃言いたくても言えないことを、登場人物たちは言ってくれる。
横柄な銀行員に対しては、

「あんたら、ウチが苦しいときになんていったんだ。散々理由をつけて融資するどころか、潰れる前にカネは返してくれって態度だったじゃないか。それがなんだ。手のひら返したように」
「御行との取引は解消するつもりで準備しておりますので、そのつもりでいてください」
「あんたたちから投げつけられた言葉や態度は、忘れようにも忘れられないんだよ。傷つけたほうは簡単に忘れても、傷つけられたほうは忘れられない」

横柄な大企業の社員に対して

「俺たちは真剣に作ってるのに、鉛筆を舐めればいくらでもできるなんて、なんの根拠があっていってるんです。教えていただけませんか」
「こんな評価しかできない相手に、我々の特許を使っていただくわけにはいきません。そんな契約等なくても、我々は一向に困ることはありません。どうぞ、お引き取りください」

こんなこと言ってみたい。
スカッとするだろうね。

そして、本書の一番のキモは、夢を疑似体験させてくれるところ。
夢を忘れた私にとって、彼らの夢達成とそのプロセスを体験することができ、つかの間ではあるが、高揚感を感じ、とても癒された。
主人公の言葉が胸につき刺さる。

俺はな、仕事っていうのは、二階建ての家みたいなもんだと思う。一階部分は、飯を食うためだ。必要な金を稼ぎ、生活していくために働く。だけど、それだけじゃあ窮屈だ。だから、仕事には夢がなきゃならいと思う。それが二階部分だ。夢だけ追っかけても飯は食っていけないし、飯だけ食えても夢がなきゃつまらない。

建築家の安藤忠雄さんの言葉を思い出した。

私は、人間にとって本当の幸せは、光の下にいることではないと思う。その光を遠く見据えて、それに向かって懸命に走っている、無我夢中の時間の中にこそ、人生の充実があると思う。

スティーブジョブズもこう言ってた。

The only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work.
And the only way to do great work is to love what you do.
If you haven’t found it yet, keep looking. Don’t settle.

夢を忘れてはいけない。
情熱も忘れてはいけない。
年齢は関係ない。

夢と情熱はすべてを凌駕する。
少なくとも私はそう思う。

 

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  1. HANANOMIZUNO より:

    記事とは関係ないのですが、同じブローチでブログを始めた水野ともうします。
    ブローチにツイッターのツイートする とかのマークをいれるには、どうすればいいか教えていただけますか?何度かトライしたのですが、上手くできません

  2. Tatsuya1970 より:

    ここに方法を載せましたので、ご参照ください。
    http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3937289

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