『DX CX SX ―― 挑戦するすべての企業に爆発的な成長をもたらす経営の思考法』を読んで
Industry 4.0 、Society5.0 と言われて久しい。
最近はそれらを包括してDXと言われるようになった気がする。
使われる言葉は変わっても、10年前から同じことを聞かされ続けてきた。
いや、もうバブル以降ずっと同じことを聞かされ続けてきた。
・日本はデジタル後進国
・失われた○年を取り戻す
・デジタル化は喫緊の課題だ
・今年がラストチャンスだ
これらの言葉は、頭では理解しているが、自分ごとには考えられなく、どこか遠くの国で起こってることかのように現実感もって受け入れてなかったように思う。毎年年初に多くの政治家、企業トップが使う「変革」という言葉のような虚しさが漂っていた。
それが、2年前、新型コロナ感染症で一気に世界は変わった。
今までのように先送りできない、いますぐ対処しなければいけない事象に、日本でのデジタルへの関心は一気に高まったように感じる。
ただ、高まったのは良いのだけど、多くの企業、個人は、じゃあどうしたらいいか、何から手をつけたらいいのか戸惑っている状況ではないかと思う。
それへのアンサーの糸口となりうる本
INDUSTRIAL-X の八子さんの新刊を読んだ。
八子さんは大学のときの知人で、卒業以来疎遠だったが、まさにFacebookというデジタルのおかげで10年前に再び繋がり、以降モバイルクラウド、ミスターIoTと変遷するところを見続けてきた。そういう八子ウォッチャーから本書を読むと、前作の「IoTの基本・仕組み・重要事項が全部わかる教科書 」以来ここ4年半の彼がしてきたことの知見をまとめた集大成的な本といえる。
2018年に初めて広島で講演してもらい、その後広島県の事業で協業したときと内容とブレてない。
(広島県の事業については本書に記載あり)
本書でも触れられる「境目」に着目したビジネスの重要性を繰り返し語られていた。
そのころは「ふーん、へー」と聞いてたことがまさに、今リアルでいろいろな場所で起こっているのを実感する。
昨今メタバースという言葉が大衆化したおかげで「デジタルツイン」の概念も一般にも理解されるようになってきたように思う。
2018年に彼から聞いた「デジタルツイン」のことはいまだにスライドのデザインと一緒に脳裏に刻まれている。
彼が主戦場としていた領域は、クラウドに始まり、IoT、そしてDXと、言葉こそ違うが本質は同じで、10年前からブレてないと感じる。
本書のキーワードの1つである「バックキャスト」
20年、30年後の未来から逆算して戦略を考えるということを、自身で証明してきたからその主張に説得力がある。
それも人口減少の脅威を前面に出してるのでわかりやすい。
20年後には日本の人口は20%減少する。つまり今5人でやってることを4人、2人のところを1人でやらなければいけない。
だから、バックキャストして考えるんだと。
そして、
VUCA、デジタルツイン、ダイナミック・ケイパビリティ、ビッグデータ、ESG経営、カーボンニュートラル・・・
本書の前半では、昨今の企業の決算報告書、アニュアルレポートには必ず登場するワードの説明が続く。
このあたりのことは、いろいろな本や雑誌で語られているが、類似書と違うところが、実際に彼が関わってきた事例が豊富なことだ。
繰り返しになるが、自身の経験をもとに語っており説得力のある言葉が並ぶ。
トヨタの下請けの旭鉄工は、自分たちでIoTシステムを内製化し、いまやシステムやノウハウを外販している。
地方の観光地の食堂「ゑびや」のAIもしかり。
中小企業の方が大企業よりもアジャイルに競争優位にたてることを証明してくれる。
まさにデータを持ち、自分の頭で考え実践したユーザー企業は、SI企業にもなれることを教えてくれる。
SIer にとっては、その存在価値を脅やかされる恐ろしいことだが、コマツのLANDLOGなどユーザー企業がプラットフォームを持つ方がSIer主導よりもうまくいく事例も描かれている。
内製化については、「ITベンダーに丸投げするのではなく、自社が主体的にコントロールすることを前提に、IT人材を抱えてDXを推進する必要がある」と述べている。
最終章、本書のタイトル「DXからCX、そしてSXへ」は
「魔のデッドロック」に直面するサラリーマンにとっては耳が痛い言葉のオンパレードが続く。
Digital Transformation から Corporate Transformation
そして、Social Transformation
DXからESGへ
これらは不可分なもので、繋がっている。
P.S.
謝辞に私の名前が出ていて、ビックリしました。
これ以上書くと身バレするので書きませんが(今更身バレもへったくれもないが)
人生初のことで大変興奮してます。
ありがとうございました。
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