インサイド・ジョブ 世界不況の知られざる真実
公開日:
:
映画感想文
資本主義の焼け野原を見てきました。
ちょっと前の日経ヴェリタスで紹介されてた
アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞受賞の
『インサイド・ジョブ』
金融機関の人間は必見!
金融にあまり詳しくない人は、後述する映画、本を読んでからの方がいいかも。
インタビューばかりの1時間50分なので、辛いかもしれない。
そのインタビューを受ける人は凄いメンツだ。
ジョージ・ソロス
ヌリエル・ルービニ(経済学者)
リー・シェンロン(シンガポール首相)
現IMF専務理事のクリスチーヌ・ラガルド
そして、
メイド萌え(?)のIMF前専務理事ドミニク・ストラス・カーン
などなど
先般の金融危機を描いたドキュメンタリーといえば、
マイケル・ムーアの『キャピタリズム』を思い出すが、
それよりは金融界の出演者は豪華。
さて、本作は
2008年の世界的経済危機はなぜ起こったのか?
について、中立的ではなく、「銀行や政府が諸悪の根源」という立場から、
いかに詐欺的行為によって一般人が食い物にされたかを解明する。
本作の主張を簡単にいうと、
銀行と政府と教育機関がグルになって、ウォール街の人間が巨大な富を独占する社会を構築しているのがアメリカだ。
先般の金融危機は、一般庶民から金を吸い上げ、破綻する前に売り逃げし、損失は一般庶民にかぶせるという詐欺的行為だ。
たとえば、
一般庶民にサブプライム・ローンを推奨する一方で、
サブプライム・ローン債券のCDSを買うなどサブプライム・ローンが破綻すれば儲かる取引を同時にしていた。
なんちゅう人たちだ。
クズと分かっていながら、顧客にどんどんクズを売りまくってたということ。
儲かれば何してもよいのか?
しょうがない。
彼らのインセンティブは儲かることだから。
儲かれば何をしてもいい。
罰する者もいないし。
それにしてもウォール街の人間の報酬が高過ぎる。
だから、自らの会社を破滅させることになることを知っていても、顧客が損をしようが関係ない。
今たくさんボーナスをもらえるんだから、そんなことどうでもいいさ。となってしまう。
(これは専門用語で「代理人問題」という)
格付け機関が機能しないのも問題だ。
AAAをたくさん連発する担当者のところにたくさん仕事が来るし報酬も高い。
悪い格付けをつけるインセンティブが働くわけがない。
そして、規制が無いからしょうがない。
かつて金融は正常に機能していた。
しかし、莫大な資金を背景とした金融機関のロビー活動により、自分たちの都合のよいように規制を大幅に緩和させた。
そして今や政府の中枢はウォール街の人間ばかりだ。
だからたとえオバマが規制を強化しようとしても無理だ。
銀行と政府が一体となったアメリカの状況は、我が国の電力事情を思い出させる。
電力会社、政府が一体となり、消費者を食い物にしている我が国の実体を。
だからこそ、我々は思考停止に陥ってはいけない。
権力者はあの手この手で我々を白痴にしようとするけど、頭脳で武装しよう。
権力者は物事をわざと複雑怪奇にし、我々の思考能力を奪おうとするけど、負けてはいけない。
(参考)金融危機に関する映画、書籍
キャピタリズム (マイケル・ムーア)
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2666163
世紀の空売り (マイケル・ルイス)
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3642423
大いなる不安定 (ヌリエル・ルービニ)
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3402075
金融危機後の世界 (ジャック・アタリ)
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2666637
PS
1つ気になったこと。
この映画には日本がまったく登場しない。
中国、シンガポールは登場するのに。
ここでも我が国の地位低下を感じる。
気のせいだろうか?
いや、、、
映画『ウォール・ストリート』でも中国は出るのに日本は出てこない。
PS
オープニングの曲はPeter GabrelのBIG TIME
懐かしい。
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Comment
この映画、アカデミー受賞にもかかわらず日本では原則未公開みたいだね。
なぜだろう?
えっ、そうなの?
広島では鷹野橋のサロンシネマでやってるよ。