ゼロ・ダーク・サーティ
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映画感想文
いきなりですが、これは、2011年5月ビンラディン殺害直後のTIMEの表紙です。
表紙に赤いXマークつけるのはTIME史上4回目のことでした。
今まではヒトラー、フセイン、アブムサブ(ヨルダン出身のテロリスト)
それだけビンラディン殺害は歴史的大事件でした。
そして、これは最近のTIMEの表紙です。
この恐い感じの女性は映画監督キャスリン・ビグロー。
この監督が撮った映画「ゼロ・ダーク・サーティ」を観に行きました。
ビン・ラディン殺害の舞台裏に迫る映画です。
キャスリン・ビグロー監督の前作「ハートロッカー」のときは、
イラク戦争の爆弾処理チームの話を「女性」が??
という驚きの先入観をまず感じました。
そして今回も、
ビン・ラディン殺害映画を「女性」を主人公に、「女性」が監督?
と驚きました。
男女平等指数世界101位の日本人、アラブ諸国並の男尊女卑社会の日本人にとって、それも私のような中年にとっては、どうしても「女性が?」という先入観が入ってしまいます。
しかし、男性が、女性が、なんてどうでもいいことが分かります。
(映画を見る限りでは)CIAや米軍では、女性が当り前のように活躍してるようです。
それもパキスタンやアフガニスタンの最前線で。
刻一刻と状況が変わる世界の最前線では、性で区別することはナンセンス、とくかく優秀な人を登用する。ただそれだけのことなのでしょう。1人でも優秀な人材がほしいですから、最初から意味不明の理由で人口の50%を無視することじたい有り得ないことなのでしょう。
しかし、我が国やアラブ諸国は、ただ女性というだけで人口の50%を意味も無く閉め出すことの愚をおかしており、国際競争力という観点からあまりにも危機意識に欠如しているというか、どれだけ優秀な人間の才能をゴミ箱に捨ててるんだなあと思ってしまいます。
まあ、こういう私も男尊女卑社会にいるからこそ、その恩恵に授かっている1人なのかもしれないのですが。
この映画を、もし男性監督が撮れば、男性社会の中で、強く健気にがんばる、時には恋もして、という映画になってしまうんだろうなと思いつつ、この映画の事実を淡々と詰めて行く冷静さに、いつの間にやら女性が、男性がなんて意識はまったく無くなってる自分に気づきます。
物語の本質とは、まったく関係ないジェンダーの話になってしまいましたが、多くの典型的な私のような日本人の中年おやじの反応はこんなものではないかと思います。
だから、男尊女卑サラリーマン社会で虐げられている女性にとっては、優秀な女性達がCIAの中で男どもに対等に渡り合っていく姿に胸のすく思いのできる映画であることは間違いないと思います。
さて、肝心の映画についてですが、そもそもビン・ラディン殺害ということ自体、いまだに真偽を疑問視する声も多く、この映画は、政治的なプロパガンダだと批判されてます。
映画の公開を大統領選が終わったあとにずらしたほど米国では論争がわき起こりました。
たしかに最近は、ベン・アフレックの「アルゴ」といい、アラブ諸国を刺激するような映画に賞を与えてますが、大丈夫かしら?と疑問符はつきます。
ただ、そういう政治的な意見はさておき、1つの「映画」という観点から見たら、とてつもなく完成度の高い見応えのある作品です。
冒頭の捕虜に対する拷問、虐待シーンを受け入れない人は多いでしょうが、このシーンの存在があるからこそビン・ラディン追跡の困難さが分かるし、米国の非情さを体感的に理解できます。
なお、911後に行われた米国によるアラブ人に対する非人道的な拷問、虐待については、
「タクシー・トゥ・ザ・ダークサイド」
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2412940
というドキュメンタリー映画を見れば理解が深まります。
といっても、冒頭の30分をを過ぎれば、PG12の内容はありませんので安心してください。
あとは、2時間40分という長さが気にならないほどの、スリルとサスペンスが続きます。
クライマックスのビンラディン潜伏先への突入シーンには、映画であることを忘れるほどの臨場感に圧倒されることでしょう。
最後に、ビジネスマン的視点で見ると、2点ほど大きく共感するシーンがありました。
まずは、ビンラディン突入の決定になかなか重い腰を挙げない上層部の人間に対して、主人公の上司とその上層部のやりとり。
「何もしないリスクを考えないのですか?」
「ならば、大統領を説得できる材料をもってこい」
ビジネスパーソンにとって、両者の立場がわかり、ともに「これぞ仕事、かっこいいなあ」と共感できる場面でした。
そして、真の情熱があれば成就するということ。
だれもがビンラディンが本当に潜伏してるか自信を持てないなか、主人公はキッパリとCIA長官に100%間違いないと言い切ります。その自信はCIA長官を動かし、ついに作戦は決行されます。10年近くも執念深くビンラディンを追い続けた彼女の自信にはもはや誰も逆らえません。これだけの情熱をもって仕事をしたいものだと思ってしまいます。
このように、政治的観点、ジェンダー的観点、ビジネス的観点などなど、いろいろなことを考えさせられる映画です。
CIAのプロパガンダ映画ではないかという意見はさておき、一見の価値はあるはずです。
(ご参考)私の過去ブログ
911の関連本、関連映画の紹介
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=4522289
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