100円のコーラを1000円で売る方法
私は以前一部上場会社の本社にて企画をする部署に7年くらいいたので、それなりに企画力はあると思っています。
とはいえ、企画なるものは、当時の上司から指示されたタスクを通じ学んだものなので、実は体系立ててはよく分かっていないのが本当のところです。
なので、マーケティング関係の本を読もうと思い立ったのですが、コトラーとかポーターとかは、ハードルが高そうなので、「もしドラ」以降、よくあるライトノベル感覚のこの本を読んでみました。
1、2時間で読めますので、お手軽です。
100円のコーラを1000円で売る方法 永井 孝尚中経出版 売り上げランキング : 2857 |
ある会社の現場で営業成績トップのイケイケの女性が、商品企画部に異動。
彼女が現場の経験を盛り込んで新商品を企画するのですが、ことごとく上司にダメ出しされます。
そういった過程を通じて、マーケティングの概要がひととおり学べるという内容です。
コトラー、ポーター、ブルーオーシャン戦略、キャズム理論、ドラッカーなど
いろいろな理論のさわりが分かるのですが、
この本の作者がもっとも言いたかったのは、
「カスタマー・マイオピア(顧客近視眼)になるな」
ってことだと思います。
カスタマー・マイオピアとは、目の前のお客さんが言っていることだけを鵜呑みにして、それにすべてに対応しようとしてしまって、本当にお客さんが必要としていることに対応できておらず、長期的に見るとお客さんが離れていってしまう状態のことをいいます。
顧客に声に耳を傾けろ
顧客中心主義
と耳にタコができるほど聞きますが、
私たちは「顧客中心主義=顧客の言いなり」と勘違いしています。
えてして、現場の力が強いので、声の大きい顧客の細かな要望に答えるために、開発部門が単なる改良部門になり、シンプルだったものが複雑怪奇かしてしまう例は、どこの企業にも多いことだと思います。
顧客の声を聞きすぎると、いつの間にか時代遅れになり、大きな技術革新が起こった時に破滅するという「イノベーションのジレンマ」に陥ります。
「もし私が顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう。」
(ヘンリー・フォード)
著者はあとがきでこういってます。
縮む国内市場にプレーヤーがいっぱいいて消耗戦をやっている。過当競争だから、顧客に言われれば何でも引き受ける。私が社長なら断らせる。こうした体質がいろんな業界で低収益を生んでいる
顧客中心主義とは、「顧客が言うことは何でも引き受ける」ということではなく、「顧客の課題に対して、自社ならではの価値を徹底的に考え、提供する」ということ
なるほど、勉強になるなあ。
そうはいっても、
顧客中心主義といいながら、実際のところは
製品中心主義、自社中心主義の会社は多いでしょう。
あなたの会社は何をしている会社ですか?
その問いにほとんどの人は、
「◯◯を製造する会社」
「◯◯を販売する会社」
と答えることでしょう。
そういう私たちは、本書の冒頭での主人公の上司の投げかけにハッとすることでしょう。
「なぜ、アメリカでは鉄道が衰退したのか?」
「自動車、バス、飛行機の出現で、お客さんがどんどん他に流れているのに、鉄道会社の人たちはなぜ気にならなかったのか?」
「その原因は鉄道会社自身の考え方にありました。彼らは、自分たちの事業を〝輸送事業〟ではなく〝鉄道事業〟と考えていたんです。だから、自分たちのお客さんがバスを使っても、『ウチは鉄道会社だから関係ない』と思ってしまったんです。だから、自分たちの顧客がバスや飛行機を使うようになっても、それは自分たちの問題じゃないと考えた。その結果、鉄道会社は衰退していったんです」
そうなんですよねえ。
この考え方って、よく分かるんだけど、実際できてないんですよねえ。
どうしても、自社の商品を中心に考え、顧客をそれに無理矢理ねじ込む意識になってしまいます。
そして、自社をとりまく同業界のことしか考えないため、世界で何が起こっているか知らない井の中の蛙になってしまって、気がついたら業界そのものが衰退していることに気づかない、井の中の茹でガエルになってしまいます。
「スターバックスはコーヒーを売っているのではない。彼が売っているのは、職場でもなく家庭でもない「第3の場所」だ。
(「スティーブジョブズ驚異のプレゼン」)
「企業の目的はひとつしかない。それは顧客を想像することである」
(「マネジメント」ピーター・F・ドラッカー)
製品中心、自社中心主義の弊害はたくさんあります。
私たちは何をしていいのか分からないので、顧客じゃなくて他社を見てしまいます。
ほとんどの企業は、時間とコストをかけて、他社と同じことを一生懸命自社でもやろうとしています。その結果、どの商品もサービスも同じようなものになってしまい、一生懸命努力しているのにそれに見合った差別化ができていません。その結果、際限のない価格競争に突入して買い叩かれ、利益がどんどん少なくなっていく。実際、そのような状況に陥っていて低収益にあえいでいる企業が多いですね、特に日本では。
企業活動の基本は、どうやって他者と差別かを図ることなのに、
なぜか他社のマネをしてしまいます。
もっとも大事なことは、
バリューポジション
〝顧客が望んでいて〟〝競合他社が提供できない〟〝自社が提供できる〟価値
をとることなのに。
ここでも、カスタマー・マイオピア(Customer Myopia)(顧客近視眼)にならないことの是をときます。
バリュープロポジションの出発点は顧客です。ただし、顧客の言うことを全部受け入れればいいわけではありません。むしろ、顧客本人も気づいていないような価値を見つけられるかどうか、です。顧客が何に価値を感じるか、まずは自分の頭で徹底的に考えることです。大切なのは顧客のニーズを徹底的に絞り込むこと、そして他社と同じことはやらないことです。よく考えたうえで、実は顧客が必要としていないと思うなら、他社がやっていることは切り捨ててもいいくらいです」
我が国は少子高齢化で、差別化なんかできやしない、
果てしない血みどろの過当競争、コスト競争に晒されている。
と私のようなネガティブの人間は思ってしまいますが、
主人公の上司の言葉が、そういう私たちに勇気を与えてくれます。
成熟している業界でも、差別化している事例はたくさんあるじゃないですか。
業界が成熟していることは、差別化できない理由にはなりません。
そう思うとしたら、それは頭を使っていない証拠です
うーん、厳しい。
でも、
月曜日から元気になれる本でした。
実践できたらいいよねえ。
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