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世界はカーブ化している

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トーマス・フリードマンは、「フラット化する世界」で世界は平坦になったと述べた。
確かにそうなのだが、金融の世界は、どうもそうともいえない。
平坦ではなく、どうも前方が見えない。カーブ化しているのではないか?
というデビッド・スミックの疑問からこの金融の冒険が始まる。
※デビッド・スミック氏は国際的な投資戦略立案の専門家として、
  多くのヘッジファンドや投資銀行のアドバイザーとして活躍している。
  なお、本書はソロスやグリーンスパン等の金融界の重鎮が推薦文を書いている。
サブプライム、ヘッジファンド、中国、日本の失われた10年、FRB等を題材に
現在、そしてこれからのグローバル金融をひも解く。
本作はリーマンショック直前の2008年9月に発行されたものだが、
その後の世界的景気後退を見事に言い当てている。
さて、サブプライム以降、ヘッジファンドをはじめ、ウォール街はGREED(強欲)と呼ばれ、
世界的景気後退の主犯であるかのように扱われてきた。
ウォール街を悪役にする方が大衆受けがいいからだ。
しかし、著者は述べる。
悪いのはヘッジファンドでなく、グローバル経済をうまく乗りこなせなかった大銀行とその監督官庁ではないのか?
グローバル経済は、近年貧困を劇的に解消したのではないか?
 (ここ25年で10億人が貧困から引き上げられた)
ヘッジファンドは、不正な企業や非効率な企業・国家を排除してきたのではないか?
 (ジョージソロスによる92年のポンド危機など)
今回の事態も、ヘッジファンドがいなければ、もっと事態は深刻だっただろうに。
それに、
世界経済の発展に寄与する起業家にだれが資金を提供するのか?
経済が発展するためには起業家たちがリスクをおかして達成するイノベーションの継続が必要だ。
それに資金を供給するのはだれか?
少なくとも、今や悪役とされているヘッジファンドやプライベート・エクイティ・ファーム、ベンチャーキャピタルは
リスクマネーを供給し続けてきた。
また、グローバル資本主義は格差を拡大したのは確かだが、
起業活動が盛んな経済はどうしても大勝利者と敗者を生むのは仕方ない。
それよりも、市場に参加できる投資家の数を増やすことのほうが重要ではないのかと著者は訴える。
たとえば、新生児に一律投資マネーを与えたらよいのではないか等。
しかし、それらの意見に反して、
今や世界中でグローバル資本主義は完全な悪者になり、保護主義が台頭し始めてきている。
国家権力が再び幅をきかせようとしているのだ。
最後に著者は、国家から経済を護るためには、
マーケットに詳しい「ヘッジファンド議員」が立ち上がらなければならないと述べる。
彼らのメッセージはこうだ。
「金融のグローバル化は偉大なパラドックスである。
 このシステムは欠陥があって恐ろしい大混乱を生じさせることもあるが、
 同時に金の卵を産む大事なガチョウでもある」
と。

私も最近は、グローバル経済悪玉論という世間の風潮に同調していたが、
レバレッジがあればこその経済発展、
リスクマネーあればこそのイノベーション
であったことを忘れていた。
一部の強欲なバカ者が資本主義の取扱方法を誤っていただけのことであり、
極端な保護主義に走れば、第1次・2次大戦のような暗黒の時代へ逆戻りするだけのことだし、
極端な規制強化に走れば、イノベーションは生まれず、経済は発展しない。
グローバル資本主義は欠点が多いが、やめることを考えるのではなく、
うまく乗りこなすことの方を考えなければならないのだ。

PS.その他
本当に21世紀は中国の時代になるのか?
本書に面白い例があったので紹介します。
・1920年に、 アメリカとアルゼンチンが世界の大国になる(ヨーロッパの最も権威のある地政学者たち、19世紀後半)
・1970年代に、ソ連が世界経済を支配する(フォーリン・アフェアーズの記事、1957年)
・21世紀初に、フランスが世界経済を支配する(ハーマン・カーン:1970年代アメリカで超天才と呼ばれた男)
未来を予測するのは難しい。
はたして、多くの人のいうとおり21世紀は中国の時代になるのだろうか?

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