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『里山資本主義 日本経済は「安心の原理」で動く』を読んで、未来の日本の進むべき道を考える

公開日: : 最終更新日:2016/09/03 地方創生, , , , , ,

産業革命以来の革命が進行中だ。

ここ数年、我々は何か間違った考え方に洗脳されていたのではないだろうか?

少子高齢化で日本は衰退する。

日本はガラパゴスなので、急速なグローバル化が必要だ。

世界を相手に戦い、かつての輝きを取り戻すべきだ。

こんな論調を毎日のようにテレビ、新聞で目にする。

実は日本経済は衰退なんかしていない。

たんに現役世代の人口が減っているのに、商品の供給過剰を、大量生産に慣れきった企業が止められないことによってデフレが生じてるだけ。

需給バランスがまだ崩れていないコストを価格転嫁できる分野を開拓してシフトすればいいのに、高度成長期の成功体験を忘れられない大量生産・大量消費の古い考えに固執した企業や産業の新陳代謝が起こらないことが原因にすぎないのだ。

そして、少子高齢化って言葉もネガティブに言われるが、他の国が経験していない最先端を走っていることでもある。

全人類共通の課題を最初に解決するという超最先端の立場にいる。

そして、そのカギは日本の田舎が握っている。

マネー資本主義に変わる「里山資本主義」が握っている。

「里山資本主義」という産業革命以来の革命が起きようとしているのだ。

「デフレの正体」の藻谷 浩介さんの「里山資本主義」を読んだ。

「グローバルマネー資本主義」に洗脳されている私には衝撃的な内容だった。

まさか、私の住んでる中国地方の田舎町が世界の最先端を走っているとは、まったく気がつかなかった。

都会人が田舎と揶揄している間に、革命は静かに進行していたのだ。

岡山県真庭町の木材ベレットやバイオマス発電、CLT(クロス・ラミネイティッド・ティンバー)

広島県庄原市総領地区のエコストーブや地産地消の循環経済

山口県周防大島の取組

などなど

石油や原発に依存してきた我々だが、忘れてはいけない。1960年代まで、日本のエネルギーはみんな山から来ていたことを。

60年代以降の我が国は、自動車や鉄鋼という中央集約型の産業を主軸に据え、高度成長をもたらした。

しかし、高度成長の恩恵のため、日本人は最も身近な資源である山の木を使うことを忘れ、山とともに生きてきた地域を瀕死の状態にまで追い込んだ。

しかし、時代は変わった。

リーマンショック、震災、福島原発を経験した我々は何となく気づいているはず。

もはや我々は、ジャパンアズNo1、高度成長期ワンモアタイムなどという昔の人間の郷愁につきあってる場合ではない。

エネルギーを石油に依存するのは、遥か遠くに住んでるアラブ人を儲けさせるだけだし、地政学リスクに振り回されすぎる。

原発依存も、福島がその危険性、持続不可能なことを教えてくれた。

真庭町は、バイオマスで世界最先端のオーストリアと技術面で交流している。

オーストリアは人口1000万人の小国だが、経済は安定し、豊かな国だ。

その理由は「里山資本主義」だ。

エネルギーの多くは森林から得ているが、森林伐採を的確にコントロールしているから、森林は破壊されていない。

育った分だけ伐採し、それをエネルギーに使う。

元本には手をつけず、利息だけでまかなっている。

「森を持つなら、手入れをしっかり行わなければならない。手入れされることによって、森は健康であり続ける。それによって、これからもずっと守られるんだ。これがオーストリアの林業の哲学なんだ」

待てよ。

これって、江戸時代の日本と同じではないか。

ピュリッツァー賞受賞作家のジャレド・ダイヤモンドの『文明崩壊』にも書いてあった。

過去の文明が滅んだ理由のほとんど全てが、人口増大により資源を食いつぶしてしまったからなのだが、江戸時代の日本の完璧なサステナビリティな森林政策に驚嘆するレポートを書いていた。

持続可能性のある森林政策には、木を伐採する技術以外にも、経済学、生態系、最新のテクノロジーなど高度な専門知識が必要なので、オーストリアでは林業が、若者にとってもクールな仕事になっているらしい。

世の中の先端は、もはや田舎の方が走っている。

人類が100年も信じてきた「常識」を打ち破られようとしている。

最後に「里山資本主義」について、本書から抜粋し、締めくくる。

間違えてはいけない。生きるのに必要なのは水と食料と燃料だ。お金はそれを手に入れるための手段の一つに過ぎない。

「里山資本主義」とは、お金の循環がすべてを決するという前提で構築された「マネー資本主義」の経済システムの横に、こっそりと、お金に依存しないサブシステムを再構築しておこうという考え方だ。お金が乏しくなっても水と食料と燃料が手に入り続ける仕組み、いわば安心安全のネットワークを、予め用意しておこうという実践だ。勘違いしないで欲しいのだが、江戸時代以前の農村のような自給自足の暮らしに現代人の生活を戻せ、という主義主張ではない。お金を媒介として複雑な分業を行っているこの経済社会に背を向けろという訳でもない。

里山資本主義は、マネー資本主義の生む歪みを補うサブシステムとして、そして非常時にはマネー資本主義に代わって表に立つバックアップシステムとして、日本とそして世界の脆弱性を補完し、人類の生き残る道を示していく。

爽やかな風の吹き抜ける未来は、もう、一度は忘れ去られた里山の麓から始まっている。

■参考図書

デフレの正体

http://tatsuya1970.com/?p=558

 DSC00533

文明崩壊

http://tatsuya1970.com/?p=154

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