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坂の上の雲(三)

公開日: : 最終更新日:2018/01/08 , ,


NHKのスペシャルドラマで再注目されている「坂の上の雲」をドラマの進行にあわせて再度読み返しています。
過去の記事はこちら
一巻
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2595569
二巻
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2637298

あの頃の日本には坂の上に雲があった。
それに向かってがむしゃらに突き進んでいけた。
まだ坂の上を進む途中のこの三巻では、ついに日露戦争が勃発する。
満州、旅順と南下するロシアはもう目と鼻の先だ。
もう戦うしか無い。
シベリア鉄道が完成する前に、極東の兵力が少ない今しかない。
そして時期を見て講和するという筋書きだ。
これ以外に日本が生き残る道はない。
貧しい国力で、大国ロシアをどう打ち負かすか?
貧しいからこそ、人間の英知が結集される。
冷静に日本とロシアの戦力を分析し、死中に活を見いだしていく。
対するロシアは、大国のおごりが抜けない。
皇帝とその側近は
日本は侮れないと冷静な分析をする者の意見を無視し、
「猿に戦争ができるか?」
「猿に負ける訳がない」
という傲慢な考えから抜けきれない。
このあたりは、最近の我が国にあてはまる。
いつの間にか家電で韓国に凌駕された我が国。
しかし未だ危機感を持つ人間は多くない。
以下の日経新聞(2010.12.12 9面より)の記事がまさに当てはまる。

なぜ韓国が死にものぐるいで返信している事に日本人は気づかなかったのか?
それは傲慢さからだ。韓国企業なんかに負ける訳ないと思い込んでいた。
経営者が現場を歩かず、負けている事さえ自覚していない。日本人とだけゴルフをやってワインを飲んで終わりという、まだ日本が一人勝ちしていた頃のノリの海外視察も多い。
韓国が強くなったというよりも我々がやるべきことをちゃんとやらなくなってきるのだ。

話はそれた。もとに戻す。
初戦の朝鮮の仁川港の戦いを大勝した日本、
森山少佐の言葉が印象的だ。

「おどろくことはありませんよ。勝つべくして勝っただけです」

この戦いでは、その戦闘地域において相手の戦力よりも多くを投入しただけのことだから、勝って当たり前なのだが、用意周到な日本艦隊とロシア艦隊の無防備さが対比され、判官びいき的痛快さを禁じ得ない。
ナメまくってるロシアをどんどん圧倒していく様は痛快だ。
(それも乃木将軍の旅順攻撃までだが。。。)

そして、魅力的な人物がたくさん登場する本作だが、
この巻では、なんといっても海軍大臣 西郷従道の人物が凄い。
あの西郷隆盛の弟だ。
理想的なトップの形の1つといえよう。
西郷隆盛もそうだが、薩摩的トップというのは、まず優れた実務家を探し、いっさいを任す。
その実務家が失敗すればさっさと腹を切る。
西郷従道は海軍のことは何も知らなかったが、一大佐か少将にすぎない山本権兵衛に海軍のいっさいがっさいをまかせ、

「なにもかも思う通りにやってください。あんたがやりにくいようなことがあれば、私が掃除に出かけます」
「私は海軍のことが分からない、ミナサンは分かる。ミナサンがよいと決めたことを、私は内閣で通してくる。それでよいではありませんか」

と、政治的処理だけにつとめた。
いらぬ浅知恵は組織を混乱させるだけ、トップはどっしり構えるものだ。
私もすべてを任してもらえるような部下になりたいし、ゆくゆくはこのような上司になりたいものだ。

このように「坂の上の雲」は
組織とは何か?
マネジメントとは何か?
を教えてくれる経営者、マネージャー必読の書であり、ゆえに未だに日本中のビジネスパーソンを魅了してやまないのだろう。
読んでない人は、いまからでも遅くない。
ドラマでは不十分。
ドラマはあらすじを追ってるだけで、小説に比べたら内容は浅い。
小説には経営のヒントがたくさん詰まっている。

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Comment

  1. けったん より:

    「竜馬がゆく」全8巻を読み終え、今度はこの「坂の上の雲」に挑戦しようと考えています。その前にドラマで予習しようと思ってます。
    先週放送のオープニングシーンがかなり印象的でした。真之が戦術講座のシーンで言った言葉
    「無識の指揮官は殺人犯なり」
    上に立つ者の責任は重い

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