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漫画『惡の華』は『ノルウェーの森』に匹敵する純愛物語だと思う

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さえない中学生の男の子が、魔が差して、憧れのクラスメートの女子の体操着を盗んでしまいます。その様子を見てた別の女子が、このことをばらされたくなかったら、私の言うことを聞けと脅迫します。

 

こんな感じではじまる変態思春期漫画としての側面で有名な「惡の華」を一気に全巻読みました。

 

 

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たしかに、6巻までの前半は変態思春期漫画としてぶっ飛んだ内容で一気に突っ走りますが、7巻からは一転して、贖罪、再生の静かで深淵な純愛物語にがらっと代わり、深い感動を呼ぶ素晴らしい作品に仕上がってます。

 

あえて例えると、

村上春樹の「ノルウェーの森」のような喪失感と再生感が同居した純愛物語であり、「エヴァンゲリオン」「スタンドバイミー」のように、少年が思春期の冒険を経て大人になっていく成長物語といえます。

 

もちろん、前半の変態部分があってこその後半の感動ですので、1巻から読まないとこの素晴らしさは理解できないでしょう。

変態描写に嫌悪感を持つ人もいるかもしれません。しかしそれがラストの感動のつながっています。

最初は普通の少年少女を演じていた登場人物たちが、1人の少女に振り回されながら、もがき苦しむなかで、本当の自分でいることの大切さに気づく一方で、現状を変えることができない絶望感に陥ります。世界を変えることはできない、現実と折り合いをつけるために、過去と向き合い、生きることは何なのか、人を愛するということは何なのかを問う後半の再生の物語が、素晴らしい感動を呼びおこします。

 

 

多分、思春期には誰もが思います。

自分とは何者なのか?

自分は特別の存在であり続けたい。

このまま普通の人生を送りたくない。

自分は普通のやつらと違う。

 

そういって、聞いたこともない外国人のバンドのファンになったり、

理解できないのに難しい本を読んだり、

奇妙なファッションに身を包んだり、

ついつい背伸びをし、自分は特別なんだと、周りの人間を心の奥底で見下すようになります。

 

主人公の春日くんは、ボードレールの「悪の華」を擦り切れるまで読む文学少年でした。後に苦行のような読書といってました。

「この町でボードレールなんか読む奴はいない。僕は特別なんだ」

僕もそんな春日くんの気持ちは痛いほどわかります。

 

そこへ、破天荒な女の子仲村さんと出会います。最初は、体操服を盗んだという弱みを握られた隷属関係だったのですが、その関係を続けるうちに普通ではない仲村さんに惹かれていき、このクソムシだらけの世界から逃げたいという奇妙な同士関係になり、一気にカタルシスまで突っ走ります。

結局、この町を変えることはできず、自らの命を絶つこともできず、彼らの小さな革命は失敗に終わります。

 

 

で、3年経ち、後半になるのですが、

こういった前半のエピソードを回収していきます。

ここからのエピソードは静かですが、とても深いです。

新たなヒロイン常盤さんの存在が、どうしようもないこの鬱な物語を希望の物語へ持っていきます。

常盤さんはスクールカーストの最上級でリア充を謳歌してるように見えますが、みんなには隠してるけど本当は文学少女で、同じ文学少年の主人公と意気投合します。

常盤さんは、本好きの自分を理解しないであろうリア充の友達グループから、別の世界へ連れ出してくれる可能性のある主人公に惹かれていきます。

この常盤さんとのやりとり、自分が本当に好きなもので意気投合できる相手ができることが、とても羨ましく思い、思春期のトキメキを思い出しました。

 

この常盤さんの存在のおかげで、人間は特別でなくてもいい、普通でもいい、ただ周りに同調するのではなく、本当の自分というもので社会と折り合って生きて行くことの素晴らしさを主人公は知ります。

 

最終巻の、主人公と常盤さんが、仲村さんと対峙する場面は、漫画の神様が降り立ったかのような素晴らしい描写です。

読んでで、無我夢中で、我を忘れるほどでした。

 

変態な面だけがクローズアップされがちな作品ですが、これほどまで思春期から大人になるということに深い洞察力をもった漫画は読んだことはありません。

 

『ノルウェーの森』にも匹敵する純愛物語だと思います。

 

 

 

 

 

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