ブーメラン 〜欧州から恐慌が返ってくる
昔からよく言われる。
日本人は働き過ぎって。
満員電車に揺られて、睡眠不足、ノイローゼ1歩手前。
自殺者が年間3万人。
もう、どうなってんの?
ふと、テレビをつける。
「世界不思議発見」とか「なるほど・ザ・ワールド」(古っ)とか、世界旅行ものを見る。
そこで、南ヨーロッパを紹介してたりする。
ギリシャとか南仏、スペイン、ポルトガル、イタリア。。。
エーゲ海、素敵♥
スローライフに憧れるわ♥
それに比べて、日本人はあくせく働いて、かっこ悪い。
中年リーマンはキモい。
私も、家族を犠牲に社畜と化して企業に忠誠心を尽くす日本人よりも、テレビの世界で描かれるヨーロッパの人間の方がより人間的なんだと思ってた。
だが、しかし。。。
最近の欧州債務危機で、それが幻想だと分かった。
スローライフだと?
奴らはドイツという親にたかるニートに過ぎない。
お父さんも大変だから、無駄遣いしないでね。
もうパチンコや競馬、風俗に行ってはいけません。
それを守らなかったらお小遣いはあげませんよ。
って言ったとたんに、お父さんに殴りかかる。
さて、今日はマイケル・ルイスの新作『ブーメラン』をご紹介する。
彼の前作『世紀の空売り』は、サブプライムローン問題の本質をずばりエグッた骨太の内容でありながら、娯楽性たっぷりでワクワク読める一級のエンターテイメントのノンフィクションに大いに楽しめたし、先般の金融危機の理解が深まった。
なお最近ブラビ主演で映画化された『マネーボール』の作者でもあり、経済関係のノンフィクションの一流の書き手である。
今回は
アイスランド、ギリシャ、アイルランド
という破綻国家および実質破綻国家を巡る旅。
まさに、映画『ハゲタカ』の鷲津さんの台詞「資本主義の焼け野原を見る」旅だ。
そして、それら破綻国家を支援せざるを得ない苦悩の国、アメリカの投資銀行に一番カモにされた国ドイツを巡る。
最後に、アメリカで最も財政がめちゃくちゃなカリフォルニア州に飛ぶ。
アメリカ人が開発した錬金術は、自らを焼き付くし、欧州をも破壊しつくした。
それは終わったかにみえたが、巡り巡ってアメリカに返ってきた。
ブーメランのように。
金が自由に手に入るようになったとき、そして、それをとりあげられたときの行動が、各国の国民性や事情が見えて大変興味深い。
なかでもギリシャは異常だ。
そもそもユーロに加盟を維持するために国家支出を粉飾する国。
公務員が民間企業の3倍の給料をとる公務員天国。
ギリシャの国民全員を国鉄ではなくタクシーに乗せた方が安上がりというほど。
賄賂を受け取る公務員がゼネストをうつという倒錯した人々。
借金したのは国だから国民は被害者だといい、自分たちの警察に火炎瓶を投げたり、ドイツの首相に爆弾を送りつける。
狂ってる。
そして、
アイスランド、ギリシャ、アイルランド、
これらに共通するのは
「我が銀行は健全である。我が国の財政は健全である」
という言葉。
みんな、王様は裸だと薄々気づいてたけど、熱狂の中では、認めることはできない。
もう戻ることはできなかった。破綻するまで。
こういったアホな国々を助けてるのが、ドイツ。
ドイツは、その規律とルールを重んじる国民性から騙されやすい。
サブプライムローンのカモとなってしまったし、ギリシャを信用してしまった。
(他にドイツが欧州各国を支援するのは、ホロコーストの贖罪という説もあるが)
こういったドイツの国民性を記述してる章は大変興味深い。
特にドイツ人は「糞」や「汚物」に異常な興味を持つという切り口を土台に構成されているところが大変面白い。
さて、ギリシャで起こったことは対岸の火事ではない。
飽食の上に立ち行かなくなった自治体がアメリカ中で悲鳴を上げている。
我が国も同じだ。
チョコレートケーキを見てしまうと、ダイエットのことは考えなくなる。
長期的利益よりも短期的利益を優先してしまう。
現在の欲求はとても重要なものだから、それを満たす為には、将来をある程度犠牲にしてもよい。と考えてしまう。
我々は理性を持っているはずなのだが、基本的にはトカゲと同じ脳に支配されている。
誰もが自分のことしか考えなくなったとき、大切なものが失われる。
はたして、このブーメランの次の行き先はどこか?
【参考】
世紀の空売り
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3642423
史上最大のボロ儲け
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3793887
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