『クリード チャンプを継ぐ男』を観て、本当の敵は自分自身なのだと改めて思う
昨年の紅白歌合戦は明らかに40代の中年をターゲットにしてたかのようでした。
トリがマッチと聖子ちゃん、そしてレベッカ、X JAPAN などなど
まさにゴキブリホイホイならぬ、40代ホイホイでした。
従来の紅白を見る層にくらべ、テレビを見ない世代なので、視聴率は振るわなかったようですが、黒柳徹子の「ザ・ベストテン」な感じに郷愁を感じた40代も多かったのではないでしょうか。
映画界も40代ホイホイが続いています。
「マッドマックス」「ターミネーター」「スターウォーズ」
私が40代だからそう感じるだけなのかもしれません。
いや、40代は企業の中での意思決定に大きな影響力のある世代ですし、購買力の高い消費者と見るのが妥当なのでしょう。
そして、今度は「ロッキー」です。
ロッキーは、ライバルだったアポロ・クリードの息子のトレーナーとして戻って来ました。
おりしも、本日、アカデミー賞の前哨戦であるゴールデングローブ賞で、シルベスター・スタローンはこの映画で助演男優賞を受賞、70歳寸前のスタローンの自然体の地味な演技に注目です。
スターウォーズの新作では想像主であるジョージ・ルーカスは降板し、最強のファンであるJJエイブラハム監督が過去のスターウォーズの良いところを存分にリミックスした内容として仕上げ、昔のファンの喝采を浴びています。
この作品も、スタローンが作った物語ではなく、父親がロッキーの大ファンだったという若干29歳のライアン・クーグラー監督が、ロッキーという設定の中で創作した新しい物語をスタローンに持ち込み、スタローンに絶賛されたといいます。
こういった原作者ではなくファンが新しい物語を創作するという漫画の同人誌的な作品が増えていくのかもしれません。
本作は、アポロの息子をロッキーが指導するというロッキーファンにはたまらない設定を、奇をてらわずシリーズの定番を踏襲した丁寧な作りと、過去の名シーンへのオマージュに、40代のロッキー好きのおっさんは安心して楽しめると思います。
難点をいうと、スターウォーズの新作もでしたが、敵役に迫力を感じなかった点でしょうか。
昔はソ連というわかりやすい強大な敵がいたから、映画の中の敵も強大さを誇張していましたが、最近は敵がはっきりしません。国内にいる一般人が突如、敵に変貌します。
それが対戦相手の風貌にも現れていると考えるのは、考えすぎでしょうか。
この物語では対戦相手にはほとんどスポットライトが当たっていません。
ロッキーはクリードに「敵は自分の中にある」のようなことを何度も繰り返し言っています。
最大の敵は自分自身であること
自分を克服すること
素直になる勇気を持つこと
それがテーマのような気がします。
ロッキーは、最愛の妻エイドリアンに先立たれ、「ロッキーの息子」という重圧から息子は父親を避けカナダに移住しています。
ボクシングの世界チャンピオンという栄華を極めたはずですが、決して幸せとはいえない孤独な老後を過ごしています。
ロッキーは、クリードと口論になったあとに、「なんであんなことを言ったんだろう」と後悔します。
本心でないことを口にしてしまい関係を台無しにしたことが何度もあり、それが今の孤独な老後につながっているのではないかと想像させます。
ロッキーは本心が言えない自分を克服できていません。
本当の敵は自分自身なのだ
人生の辛酸を嘗め尽くしたロッキーの言葉だからこそ重みがあるのです。
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