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Think Simple ―アップルを生みだす熱狂的哲学

公開日: : 最終更新日:2019/02/14 イノベーション, , ,

テレビのリモコンを見ると、ウンザリします。
このボタンの機能を全部把握できてる人間、使用する人間がどれほどいるのでしょうか?
そもそも覚えようとは思いませんけど。
電気店に行くと、スマホやケータイがたくさん陳列されてます。
でも、たくさんありすぎて、商品の違いがよく分かりません。
パソコンを買い、梱包を開けると、本体以外にたくさんのものが入っています。
ソフトウェアのDVD、分厚い取扱説明書、冊子、チラシなどなど
たぶん、全部読む人などいないでしょう。
それらは、段ボールとともに押し入れの肥やしになり、引っ越しするときに再発見され、捨てられるという運命が待ってます。

一方で、初めてアップルの製品を買ったときの驚きは忘れません。
iPodだったんですが、びっくりしたのが、取扱説明書がついていないんです。
Macもそう。
普通パソコンを買うと、いろんなものがついてるのに、何もついてない。
この私が撮影したYouTubeを見れば、そのシンプルさがお分かりになると思います。
ちなみに、アップル製品の梱包を開けて起動するまでのことを、開封の儀と呼びます。

ねっ、
シンプルでしょう。
今日は、革新的な製品、サービスを提供し続けるアップルの強さの源泉を「シンプル」というキーワードをもとに分析していく
「Think Simple」
という本を紹介します。

アップルのすごいところは、あらゆることを徹底的にシンプルにすることです。
製品はもちろん、組織にしろ、会議にしろ。。。
「シンプルの杖を叩く」
と表現されます。
たとえば、プロジェクトは少人数のグループ単位で遂行されます。
かかわる人間が多ければ多いほど、複雑になり、手間が増えるからです。
「プロジェクトの成果の質は、そこにかかわる人間の多さに反比例する」

ほとんどの大企業は小さくすることがとても下手です。
どんなに素晴らしいアイデアであっても、無数の会議、無数の承認という複雑なプロセスをへていく過程で、徐々に命を奪われていき、最終的には凡庸なものに成り果てます。
大きな組織では、ルールやプロセスが優先されるからです。
そういったプロセスが王様のときに、アイデアは決して王様になれません。
プロセスの段階を増やせば増やすほど、完成品の質が悪くなるのです。
この本では、
大企業のようなプロセスが好きなインテル、マイクロソフト、デルを例にとり、
いかに素晴らしいアイデアがプロセスのために殺されていくのかが、よく分かります。

たくさんの人間をかかわらせると、いろいろな意見、要素を反映するようになり、たくさんの人を喜ばせようとする製品になってしまいがちです。
しかし、あらゆる人を喜ばせようとすると、誰も満足させることはできません。
もちろん、顧客から意見を聴こうなどど、フォーカスグループを集めても意味はありません。
そもそも顧客自身何がほしいか分かっていないからです。
自動車王ヘンリー・フォード曰く
「世間一般の人に何がほしいかと聞いたら、より早い馬だと言うだろう」


ネーミングもそう。
アップルのコンピューターの名前をざっとあげると。
iMac, Mac Pro, MacBook, Air MacBook
デルのコンピュターの名前をざっとあげると、
インスパイロン、ヴォストロ、XPS、オプティプレックス
何がいいたいか明白でしょう。
デルは新製品を出す度に、その名前をユーザーに認知してもらうのに苦労しています。
こんなバカなことをデルは何でするんだろうと思うでしょうが、
多くの大企業が、シンプルよりも複雑な道を歩みます。

実は、複雑であることの方が簡単なのです。
深く考えず、他人と衝突しなければ、物事は関わる人間の数に比例して複雑になります。
だから、シンプルであることは、複雑であることより難しいのです。
物事をシンプルにするためには、真剣に努力し思考を明瞭にしなければならないし、複雑さのおかげで既得権のある人間や面倒くさがる人間たちを説得しなければならないからです。
よほど、強い意志力と行動力がないとできません。
しかし、困難であるからこそ、1度シンプルさを獲得できれば、その効果は計り知れません。

いまいちシンプルさの良さが分からない人に、以下のエピソードをご紹介。
iMacのCMについて、
メッセージは1つだけ伝えるべきだと主張する広告代理店と、
5つくらい伝えたいとするスティーブ・ジョブズのやりとりです。
(ジョブズでさえ、複雑さの罠に陥ることもありました)
メモ帳でボールを作り、
代理店「スティーブ、キャッチしてくれ」
とボールを1つ投げた。
スティーブは難なくキャッチした。
代理店「これがよい広告だ」
代理店「またキャッチしてくれ」
5つのボールを同時に投げた。
スティーブはひとつもキャッチできなかった。
代理店「これが悪い広告だよ」

うーん、なるほど。
このパフォーマンスは、私もいつか使ってみよう。

さて、最後に、
話はちょっと飛躍しますが、複雑なルールについて私の雑感。
世の中にはたくさんのルールがあります。
人間どおしが、安心して暮らすにはルールが必要です。
そうじゃないと、おちおち夜も眠れません。
同様に組織を潤滑に運営するにはルールが必要です。
でも、組織が大きくなるに連れて、ルールは増え、複雑になっていきます。
このことを的確に論じている『組織戦略の考え方(沼上幹)』という本から抜粋しますと、

古いルールを廃棄処分にして、新しいルールを作るという新陳代謝が起こりにくく、古いものはそのまま残り、新しいものがその上に追加され、その結果、古い組織ほど複雑怪奇なルールを持ってしまいます。

そしてそのような複雑怪奇なルールが、組織の首を絞めていることに、中にいる人は気がつきません。
複雑怪奇なルールを遵守することが仕事であって正義であると信じ込んでしまいます。
ルールが多いということは、承認、決裁する人も多いということです。
更に、そのルールがちゃんと守られてるかどうか検証、監査する人も必要です。
どれだけ、莫大なコストがかかってることでしょう。
どれだけ、官僚的な業務に追われてることでしょう。
何か新しいことをするときには、大変です。
ルールに適合するか、手続きはどうしたらよいかを調べ、そのルール通りにするために多大な労力が使われます。
そうこうするうちに、新しいことを始めようという気概は無くなります。

これは、起業することにも当てはまります。
起業するときの煩雑な手続きが多ければ、だれも起業しようとは思いません。
ちなみに世界銀行発表の「ビジネス環境の現状(2013)Doing Business 2013」によると
日本はStarting Business(ビジネス新規事業の開始)が114位(185カ国中)と、ヒドい状況です。
http://www.doingbusiness.org/rankings

企業の新陳代謝が悪いと、経済は活性化されませんし、国の成長も滞ります。
雇用も硬直化され、若い人間の活躍する場がなくなります。
イノベーションなんてもってのほかです。
グーグルという会社は、ルールとか規制を調べる前に、とりあえずやってみるということを聞いたことがあります。
Googleマップにしろ、ストリートビューにしろ。
その都度、訴訟され、社会問題になるのですが、アイデアを素早く実行させることを優先します。
たしかに、ルールを調べたり、既得権益者に陳情するより、裁判で対決する方が楽なのかもしれません。

ルールがあるということは、その分、誰かが権力を持っているということ。誰かが楽をしているということ。
誰かを楽にさせてもいいが、それによって台無しになるのは、私たちのアイデアなのです。

ルールは、極力シンプルに。

Think Simple!

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