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空飛ぶタイヤ

公開日: :

昨夜、テレビドラマ『半沢直樹』が最終回でした。
テレビドラマを毎週楽しみにするなんて、社会人になってから20年の間、記憶にありません。
それだけ、私にとって、とても面白いドラマでした。
半沢直樹が多くの大衆の心を掴んだのは、水戸黄門的な勧善懲悪物語という構造にありますが、それを支えているディティールがしっかりしてるからこそだと思います。
ハリウッドのお子様向け映画が、大人の鑑賞にも堪えれるのは、壮大なウソをあたかもリアルだと信じ込ませるディティールがしっかりしているからと同じような理由です。

元銀行員の池井戸潤さんの小説には、資金繰りという企業の生殺与奪の権利を持っている存在として銀行がよく登場します。
銀行員は、顧客に融資をするかどうかの判断をするために、稟議書というものを書いて、権限のある上席に決裁をあおぎます。
その会社に、なぜ、いま、それだけの資金が必要なのか?
どうやって返していくのか?
返せなくなったときのための保全をどうするのか?
そういったことを緻密に調べ、分析し、稟議書にまとめます。

小説も、稟議書も、同じようなものかもしれません。
小説が面白いと感じるのは、どれだけ架空の話を説得力あるものにするか。
少しでも、疑問を感じてしまうと引いてしまいます。
元銀行員の池井戸潤さんは、銀行の優秀な融資担当者が作成した稟議書のごとく、
なぜ、その登場人物は、そういう行動を起こすのか?
どうやって、その問題を解決するのか?
1人1人の登場人物の背景、物語の背景、技術的根拠、業界動向などなど
詳細な調査に基づいたディティールを下地に物語を展開させているので、読者に違和感を感じさせません。

今日紹介する『空飛ぶタイヤ』もそう。
半沢ブームの昨今、先輩に薦められて読みました。
面白いので、1日で一気に上下巻読み終えたところです。

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空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫) 空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)
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大手自動車会社の組織ぐるみのリコール隠しによって、濡れ衣を着させられた中小企業の社長の戦いを描いたお話です。
半沢流にいうと、今度は、
「中小運送会社の社長が、リコール隠しの大手自動車会社、貸しはがしの銀行に対して、100倍返しだ!」
ってところです。
さて、本作では、大企業の無責任な官僚的体質を見事に描写しています。
自分の利益、保身のために
組織の論理、個人の論理を都合良く使い分け、
そのしわ寄せを立場の弱い者にかぶせていく様子を絶妙に描いてます。
1人1人の人間は、善良な普通の人間なのに、
大きな組織の一員になってしまうと、部門最適主義に陥ってしまいます。
そして、徹底した階級意識と選民思想を植え付けられることで、
入社時持っていた理想は消え、顧客を軽視し、組織内の政治に目を向ける人間になってしまいます。

「半沢直樹」にしても
直木賞を受賞した「下町ロケット」にしろ
そういった官僚的体質のエリートに一泡吹かすストーリーに、
判官贔屓な私たちは拍手喝采を送ります。

そして、この物語の主人公の運送会社の社長は私たちに教えてくれます。
決してあきらめてはいけないってことを。
自社のトラックの脱輪事故により1人の人間が亡くなった。
トラックの構造的欠陥だと主張するも誰からも信じてもらえず、
整備不良のため起こった人身事故ということで、
刑事事件として容疑者となり、
大口取引先からの受注は打ち切られ、
銀行からは融資全額返済を迫られ、
資金繰りが逼迫し、
家族は後ろ指をさされ、
子供は学校でいじめられ、
。。。。。
こんな最悪な状況が次々と押し寄せてきます。
しかし、
主人公は GIVE UP しません。
クモの糸をたどるように、どんな可能性にでもかける不屈の魂に、心を揺さぶられます。

経営の名書『ビジョナリ・カンパニー3/衰退の五段階』では、
企業がたとえ破綻寸前となっても、決してあきらめてはいけないと
チャーチルの言葉を引用してます。

Never give in, never give in, never, never, never, never
– in nothing, great or small, large or petty
– never give in except to convictions of honor and good sense.
Never, Never, Never, Never give up.

そう、
ネバー、ネバー、ネバー、ネバー ギブアップ !
ちまたにたくさんある経営の理念なんて、この言葉の前では、戯れ言なのかもしれません。


【参考図書】
ブログ記事『ビジョナリー・カンパニー3/衰退の五段階』
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3317089

ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階 ビジョナリーカンパニー3 衰退の5段階
ジム・コリンズ,山岡 洋一

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【池井戸潤の小説】
ブログ記事『下町ロケット』
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3920537

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ブログ記事『半沢シリーズを読んで』
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