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『半沢直樹シリーズ』を読んで

公開日: : 最終更新日:2015/10/18 , 銀行

ついに、さきほど、社会現象にもなったテレビドラマ『半沢直樹』が最終回になりました。
今回は、ドラマの余韻そのままに、小説半沢直樹シリーズ3作品
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
「ロスジェネの逆襲」
の読書感想文を綴ります。

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オレは基本的に性善説だ。相手が善意であり、好意を見せるのであれば、誠心誠意それにこたえる。
だが、やられたらやり返す。泣き寝入りはしない。十倍返しだ。
(オレたちバブル入行組)

型破りバンカーが、自分の信念にのっとり、権力に媚びること無く真っすぐに突っ走っていくところが、多くのジャパニーズ・サラリーマンの共感、支持を得ました。
私もそのひとりですが、毎回、自分の仕事と重ねて、半沢の仕事ぶり、言動に溜飲をさげていました。
と同時に、現実に戻ると、半沢になれない自分に自己嫌悪に陥ることもたびたびありました。
私は、半沢にはなれない。
そういう私は半沢の同期の近藤に自分を重ねてました。
彼は、銀行の本部から大きな期待とともに支店に配属になりましたが、思うように業績を上げられず、結局メンタルをやられて、出向になりました。
気弱な自分が現れるとき、メンタルがやられていく様子を、コールタールが精神に浸透していくような表現で描いてました。
私も似たような経験があるからよく分かります。本当にコールタールが心の中にジワジワと来るという、まさにあの感覚がピッタリでした。

さて、半沢シリーズ3作を通じて、私が感じことは大きく2つ
強烈な世代闘争と、人事権による支配
これらが、私たちサラリーマンが外ではなく、内を向いて仕事をせざるをえない要因であり、半沢シリーズで一貫して流れているテーマのような気がします。


1.強烈な世代闘争
原作の題名が
「オレたちバブル入行組」
「オレたち花のバブル組」
「ロスジェネの逆襲」
と、世代を強調しています。
「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」とは、銀行員以外には見向きもされなさそうな題名ですが、あえて世代を強調しているかのようです。
多分、原作者が銀行員時代に感じていた強烈な世代間憎悪から来るものではないかと察します。
シリーズ先般にわたって、団塊の世代をdisる場面、台詞が随所に見られるからです。
当初、半沢たちバブル入行組は、団塊の世代へ強烈な恨み、嫌悪感を示してました。
全共闘の世代が、のうのうと組織マンに鞍替えした変わり身の早さ、そしてバブルを産み、銀行の社会的信用を地に落とした彼らに、強烈な嫌悪感を示してます。

バブル時代、見境のないイケイケドンドンの経営戦略で銀行を迷走させた奴ら──いわゆる〝団塊の世代〟の奴らにそもそも原因がある。学生時代は、全共闘だ革命だとほざきながら、結局資本主義に屈して会社に入った途端、考えることはやめちまった腰抜けどもよ。奴らのアホな戦略のせいで銀行は不況の長いトンネルにすっぽりと入っちまったっていうのに、ろくに責任もとらないどころか、ぬけぬけと巨額の退職金なんかもらってやがる。
(オレたち花のバブル組)

しかし、3作目「ロスジェネの逆襲」でその主張に変化が見えてきます。
団塊の世代を憎む半沢たちバブル入行組は、現在は体制側、管理する側になっています。
売り手市場だった就職活動、大量採用によって楽に就職できたバブル世代は、今度はロスジェネ世代にとって憎むべき相手になっています。
近年の異常な就活戦線、若者の雇用の状況から、原作者も柔軟な考え方になってる様子が伺えます。
結局は、どの世代に属しているにせよ、文句を言っても始まらないってこと。
半沢の以下の言葉に、世代間闘争のバカバカしさが見て取れます。

オレたちは新人類って呼ばれてた。そう呼んでたのは、たとえば団塊の世代といわれている連中でね。世代論でいえば、その団塊の世代がバブルを作って崩壊させた張本人かも知れない。いい学校を出ていい会社に入れば安泰だというのは、いわば団塊の世代までの価値観、尺度で、彼等がそれを形骸化させた。
だけど、団塊世代の社員だからといって、全ての人間が信用できないかというと、そんなことはない。逆に就職氷河期の社員だからといって、全て優秀かといえば、それも違う。結局、世代論なんてのは根拠がないってことさ。上が悪いからと腹を立てたところで、惨めになるのは自分だけだ。
(ロスジェネの逆襲)


2.人事権による支配

シリーズを通じて、敵役は「人事権」という武器を振りかざします。
まさに、これ以上ないというサラリーマン最強のアイテムです。

出向させるぞ!
希望通りの部署へ異動させてやるぞ!

ほとんどがこの手で口封じ、支配を図ります。
つまらない人間に、権力を与えるとロクなことになりません。
池井戸作品は、一貫して官僚組織、人事権を行使する者に対する憎悪が全面に出てきます。
これは往年の司馬遼太郎作品にも通じるところがあり、人間が存在するかぎり、つまらない権力を行使する者が闊歩する官僚組織は無くならないのでしょう。
いい学校を出ていい会社に入れば安泰だという団塊の世代までの価値観を盲目的に信じたがために、人事権によって会社に都合のよいように支配されてしまうという、サラリーマンの悲哀を感じざるをえません。
ここから、会社に身も心も捧げてはいけないという教訓をえることができます。
半沢は優秀な人間だったから、上司に歯向かい、信念を貫きとおすことができました。
しかし、現実ではこのようなことはファンタジーです。
私もですが、スキルのない人間、市場価値のない人間は会社にしがみつくしかありません。
もうそうなったらおしまいです。
最近よくきく言葉「社畜」にならざるをえません。
このように半沢シリーズからの教訓の1つは、
我々サラリーマンは、会社に身も心も捧げたあげく人事権に縛られる奴隷になるのではなく、主体的に生きることが必要なのです。
目の前の業務に精一杯取り組むと同時に、外の世界にもたえず気を配り、自らの市場価値を意識し、自己研鑽をし続けなければいけないのです。
まあ、就職氷河期を経て、年功序列、終身雇用が幻想だと知っている今の若い人にとっては釈迦に説法でしょうけどね。

銀行には一つのまやかしがあるような気が、半沢にはしていた。 それは、あたかもこの銀行という組織だけが全てであると錯覚させるまやかしだ。それに根ざすものはエリート意識だったり選民思想だったりするのだろうが、そのどれもが滑稽だと半沢は思う。
銀行から離れたとしても、全く問題なく人は生きていける。 銀行だけが全てではない。目の前の人事一つで全てが決まるわけでは決してなく、人生というものは結局のところ自分で切り拓くものである。  肝心なことは、その時々に自分が全力を尽くし、納得できるように振るまうことだ。
(オレたち花のバブル組)

組織の中にいると、あたかもその組織が全てだという錯覚にとらわれます。
これは会社に限らず、学校、部活動、あらゆる組織にあてはまります。
世の中には多様な選択肢があります。
スキルを積み重ねることで、選択肢は増えます。
支配からは逃れ、主体的に生きるためには、若い頃からの自己研鑽、仕事の積み重ねなのです。


最後に、私が思うに、池井戸作品には、一貫して仕事の素晴らしさ、真摯に仕事をする者への愛と尊敬の念が根底に流れています。
そして、
夢を実現すること、
幸せな人生を送ることは、
仕事が叶えてくれるのだと。
そういうことが、一番言いたいのだと思います。

夢を見続けるってのは、実は途轍もなく難しいことなんだよ。その難しさを知っている者だけが、夢を見続けることができる。そういうことなんじゃないのか
(オレたちバブル入行組)

仕事は二の次で余暇を楽しめればいい、そう考えたこともある。しかし、一日の半分以上も時間を費やしているものに見切りをつけることは、人生の半分を諦めるのに等しい。誰だって、できればそんなことはしたくないはずだ。いい加減に流すだけの仕事ほどつまらないものはない。そのつまらない仕事に人生を費やすだけの意味があるのか
(オレたち花のバブル組)

どんな小さな会社でも、自分の仕事にプライドを持てるかどうかが、一番重要なことだと思うんだ。結局のところ、好きな仕事に誇りを持ってやっていられれば、オレは幸せだと思う
(ロスジェネの逆襲)

人生は一度しかない。
たとえどんな理由で組織に振り回されようと、人生は一度しかない。
ふて腐れているだけ、時間の無駄だ。前を見よう。歩き出せ。
どこかに解決策はあるはずだ。
それを信じて進め。
それが、人生だ。
(オレたち花のバブル組)

好きな仕事に誇りを持つこと。
人生は1度しか無い。

身に詰まる思いがします。

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