*

セントアンナの奇跡

公開日: : 最終更新日:2018/04/12 映画感想文 ,

スパイク・リー監督の最新作「セントアンナの奇跡」
スパイク・リーの出世作「ドゥ・ザ・ライト・シング」は、
ブルックリンに住む黒人の日常をたんたんと描き、人種差別の深層を問題提起した大傑作でした。
(私の好きな映画5指に入ります)
「マルコムX」は、大作すぎて、オリバー・ストーン的な映画になってしまい、
スパイク・リーの長所が封じこまれた感があり、それ以降、メジャーな表舞台では目立たなくなったような気がします。
近年の「インサイド・マン」で、今までの黒人対白人という構図から
より幅広い視点でアメリカという他民族国家の問題を娯楽サスペンスという形で描写した手腕により、
一躍表舞台に復活をとげたのは記憶に新しい。

そして、本作「セントアンナの奇跡」です。
第2次大戦のイタリアを舞台に、バッファロー・ソルジャー(ボブ・マーリーの歌でお馴染)と呼ばれる黒人部隊の話です。
今回は、黒人対白人、善と悪といった単純な二元論ではなく、
黒人、白人、ドイツ軍、イタリアの一般庶民、ファシスト党員、パルチザンなどの様々な人種・イデオロギーを通して、
単純に善悪で区切ることができない複雑な人間模様を描写しています。
敵味方、主義主張が違えど、個々人はみな善良な人間なのだということを。
しかし、その善良な罪のない人々が殺されていく様子には怒りと同時に、悲しみで涙することでしょう。
このようにとても重いテーマであるが、随所にユーモアをたっぷり散りばめ、
重さを和らげているし、ラストへの話の持って行き方は、さわやかな感動を与えてくれます。
ラストのオチなど、ストーリーは出来すぎた面が多々ありますが、
たとえ極限状態であっても、人間の尊厳を信じるスパイク・リーのメッセージを感じました。
それはあたかも、オバマ大統領になり、
新しい船出となった他民族国家アメリカに対する監督の希望の表れではないでしょうか。
(なお、オバマ夫妻が最初のデートで観た映画はスパイク・リーの「ドゥ・ザ・ライト・シング」)
公式サイト
http://www.stanna-kiseki.jp/

ad

    この記事が気に入りましたら、ぜひTwitter、facebookボタンをお願いします。
    ブログを書くモチベーションになります。よろしくお願いします。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
この記事が良かったらビットコインで寄付をお願いします。
ビットコイン投げ銭ウィジェット



関連記事

人生は一瞬一瞬の積み重ね〜『6才のボクが、大人になるまで。』を観て

        今年の映画賞レースの大本命と言われている「6才のボクが、大人になるまで。」を観ました

記事を読む

Tatsuyaのベスト映画2012

今年を振り返る企画。 今度は映画編です。 今年は22本の映画を劇場で観ました。 ミッション:インポッ

記事を読む

no image

トゥルー・グリット

コーエン兄弟の『トゥルー・グリット』観た。 コーエン兄弟の映画は バイオレンス・スリラーの「ノー・カ

記事を読む

【ネタバレあり】『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』を観て

        ※ネタバレだらけですので、ご注意ください。       僕が最初にスターウォーズを

記事を読む

「スター・ウォーズ /フォースの覚醒」を観て、私の童心が覚醒しました。(ネタバレなし)

        「スターウォーズ /フォースの覚醒」を観ました。     私が初めてスターウォーズを

記事を読む

ad

Comment

  1. joshua より:

    久しぶりに映画見てみるかなー。セントアンナの奇跡、面白そう。
    ちなみにインサイドマンってスパイクリーの作品だったんだね。この間偶然見た「強奪」っていうビデオの中の台詞で、新米刑事がベテランに、「インサイドマンを知ってますか?」とかいうシーンがあったんだよね。
    で、気になってました。

  2. Tatsuya より:

    インサイドマン お薦めです。

joshua へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。

ad

Character Creator 6 で作成したキャラをBlend ShapeとともにUnityへ

  Charactar Creater で作成したキャラをBlend

イギリス旅行に行く前に絶対用意したほうがいいもの2点

ブラタツヤ(イギリス旅行記)に入る前に、イギリス旅行を計画してる人に絶

イギリスをブラタツヤ(プロローグ)

  Tatsuya がブラブラ旅をするという「ブラタツヤ」シリーズ、久

バーチャルヒューマンにリップシンクを(Character Creator + iClone)

  ふと、バーチャルヒューマンを作ろうと思い立ち、Character

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を読んで

  『プロジェクト・ヘイル・メアリー』読了。   全編、続々と起こる

→もっと見る

    • 1682806総閲覧数:
    • 59今日の閲覧数:
    • 248昨日の閲覧数:
    • 3現在オンライン中の人数:
    • 2014年4月29日カウント開始日:
PAGE TOP ↑