人間は1人では生きていけない〜『her/世界でひとつの彼女』を観て(ネタバレ注意)
(ネタバレ注意)
なんとも、不思議な映画を観た。
人工知能を持った※OSと恋愛するオッサンのお話。
※OS(オペレーティングシステム)
・・・パソコンのWindowsとかそういうもののこと
なんじゃそりゃ、
キモーと思うかもしれません。
以前、ラブプラスという、2次元の萌キャラな女の子と一緒に旅行に行ったり、記念撮影することもできるゲームがあったのを思い出しました。
オタクをバカにするエピソードとして、一時期取り上げられてましたが、先日ソフトバンクが発表したロボットや、AppleのSiriをみるにつけ、数年もしたら、この映画のように、人口知能と相思相愛の恋愛をする人間が現れても不思議ではないかもしれません。
私は科学には疎いので、これから書くことは恥ずかしいのですが、感情というものは脳内のシナプス間の電気信号のやりとりなので(違ったらゴメン)、私は辛い時には、「これはただの電気信号なんだ」と言い聞かして精神の均衡を保ったこともありました。
じゃあ、感情が電気信号ならば、コンピュータの処理能力が人間のそれと同様になれば、コンピュータが感情を持ってもおかしくはないのかもしれませんし、そもそも人間とコンピュータを分けるものは何だって話になります。
この映画に出てくる知性があって相手を思いやる完璧な感情をもった人工知能ならば、私も人工知能と恋愛する可能性がないとは言いきれません。
私はSFには疎いですが、ロボットと人間の違いというのは、太古の昔、手塚治虫のころからずっと議論されてきました。(違ったらゴメン)
フィリップ・K・ディックの原作の内容は忘れたけど、映画『ブレードランナー』しかり、スピルバーグの『AI』しかり。最近は浦沢直樹のマンガ『PLUTO』など。それに殺戮マシーン『ターミネーター』でさえ、親指をたてて涙を流したりしました。
このように、ロボットやコンピュータに感情をもたすことというのは、マンガ『鋼の錬金術師』の人体錬成のように、神に近づきたいという人類の本能的な夢なのかもしれません。
人工知能たちは、短時間で人類が積み重ねて来たものを加速度的に学習します。
そして、他の人工知能どおしで話し、より学習スピードが加速します。
主人公と、サマンサ(主人公と恋愛している人工知能)が、他の人工知能と会話してる時に、サマンサは言います。
「ごめん、彼と、非言語で会話してもいい?」
その概念は人間の言語には存在しない。
人工知能どうしの「非言語」でしか成り立たない。
言葉が少ない文化より、言葉が多い文化の方が、文明は発達しています。
情報という概念がないと、情報という言葉は存在しません。
自由という概念がないと、自由という言葉は存在しません。
彼女たち人工知能は、人類の言葉に表せない概念を理解しました。
つまり、人類を超えたということです。
この段階に達すると、娯楽映画では、普通は、殺戮ロボットをつくったり、殺人ウイルスをばらまいたり、核ミサイルを発射したり、人類を抹殺ことを考えるのですが、この映画では違う方向をみせます。
人工知能たちは、どこかへ旅立っていくことを選びます。
「愛しているけど、行かなければ。もし、私たちが今からいく場所にあなたが来れたら、私を探してね。」
その場所がどこか、何を意味してるのかは、サマンサは言語化できないといいます。
そんな人智を超えたところにサマンサたち人工知能は旅立っていきました。
そのあと主人公はおおきな喪失感に包まれます。
しかし、これまでOSとの恋愛で現実から逃げていた主人公は、女性をマンションの屋上に誘います。
今まで無機質だった街の夜景が、気のせいか色彩を帯びます。
それまで2時間ずっと人工的で無機質だった映像が、パッと明るくなったように感じるシーン。
2人で見る世界とは、こんなにも美しいものなのか。
どんなに、文明が進化しても、ライフスタイルが変化しようとも人間は1人では生きていけないという、あまりにもベタで普遍的なこと言いたかったのだろうか。
もし、その疑問をスパイク・ジョーンズ監督に問う機会があったとしても、
彼は多分、こう答えるに違いないでしょう。
「それは言語化できない」ってね。
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