【44歳中年サラリーマン、初めてのインドひとり旅】4日目早朝:ガンジス川のボートに乗る
朝5時に目を覚ます。
ホテルの部屋のベランダに出て、ガンジス川をぼうっと眺める。
今日も二度と来ない1日が始まる。
今日はガンジス川の名物、ボートに乗る。
昨日散策してたとき、ボート漕ぎの男と、約束した。
1時間で500ルピー。5時半に火葬場の近くで待ってると。
一応、行けないかもしれないと断ったが。。。
ホテルを出ると、ホテルの前で昨日とは別の男に捕まった。
「ボートはどうか」
値段は300ルピー。
昨日の男より安いな。
もうちょっと値切ると、200ルピーでいいという。
僕の先輩が90ルピーで乗ったという話をきいていたので、まだまだ交渉の余地はある。
別のボートにも値段を聞こうとも思ったが、また1から交渉するのも面倒なので、この男のボートに乗ることにした。
何かする度に値段交渉をしなければいけないのが、うっとおしかったり、面白かったり。
こういうことを続けると、そもそも価格って何なんだろうと思ってしまう。
大学の講義で、需要曲線と供給曲線が交差する点、それが価格だと教わった。
彼らは純粋に需要と供給という経済学の原理をただ忠実に実践しているだけにすぎないのかもしれない。
安く仕入れて、少しでも高く売る。
ただそれだけのこと。
ぼったくりという人もいるが、ぼったくりとは意味合いがまったく違う。
高く買う可能性の高い日本人に、高い値段を提示するのは当り前のこと。
ボートに乗る前に、小さな女の子が花を売りに来た。
ボートの上からガンジス川に流す用の花を。
こんな小さな子が、こんな朝から大変だ。
花を買うから写真を撮らせてくれというと、かわいい笑顔を見せてくれた。
とても良い表情をしてる。
ニューデリーの物乞いのような悲壮感はまったくない。
そりゃそうだ。
この娘は商売をしてるのだから。
さて、
まずは、上流に向かう。
意外にもガンジス川の流れは速く、男は必死にボートを漕ぐ。
「見ろ、この早い流れを」
自分の大変さをさりげなくアピールする。
多分、あとで追加料金を要求されるんだろうな。
大変なハードワークなので1日2人が限界だという。
途中で休憩するかと言っても、
「これがオレのジョブだから大丈夫だ」
インドのボート競技は強いのだろうか?
ここガンジス川でスカウトすればいいのではないか。
毎日たくさんの男が、生きるためにハードなトレーニングをしている。
「それより、見ろ」
男はオールを漕ぎながら、顔で促す。
その方向にはうっすらと朝日が見えた。
ガンジス川の夜明けだ。
朝日がもっとよく見えるように角度を変えてくれた。
ボートの男もなかなかいい笑顔をしてる。
そろそろ、昨日プージャを見たダシャーシュヴァメーダ・ガートが見えて来た。
朝6時なのに、このにぎわい。
大勢の人が沐浴をしてる。
沐浴というか、水浴びに近いけど。
記念に1枚。
昨晩のプージャや、朝の沐浴と、ダシャーシュヴァメーダ・ガートはいろんな顔を見せる。
この色彩、喧噪がとても好きだ。
次は、火葬場に向かう。
マニカルニカー・ガート。
ここは、撮影禁止の場所だが、川からの撮影はオーケーらしい。
それにしても、この恐ろしい外観に息を飲む。
死の世界への扉が開いているかのようだ。
ここにはインド全土から毎日遺体が送られてくる。
365日、24時間絶えず誰かが焼かれている。
火葬場については、後述する。
火葬場に近づくと、ボートの男は、ここでさっき買った花を流せと言う。
灯籠流しのようにロウソクに火をつけて流すのだ。
あれっ、火を持っていないけど、どうしよう。
そのタイミングを見計らったかのように、いつのまにかボートが近づいてきた。
そのボートの男は何も言わず、火を貸してくれた。
そして、自分のボートにある花を僕の手に乗せ、
「これは両親の」
「これは兄弟の」
「これは家族の」
と、僕に祈るようにいい、火をつけ川に流させた。
その間、祈るどころか、
やばい、どうせカネをせびられるなあ。
どうしようかなと、思案していた。
一連のことが終わると、
花のボートの男は、僕に向かって片手を差し出してきた。
「150ルピーだ」
来たな。。
インドに来たばかりの僕なら渋々払ってたかもしれないが、ニューデリーで経験値を上げた僕にはそんな小細工は通じない。
「オレは頼んでない。お前が勝手にしたんだろう」
僕は相手が反撃できないように、何度も同じことをまくしたてた。
しかし、まったくお金を渡さないのもヤバいと思い、
「しょうがない」
と、10ルピーだけ渡した。
花ボートの男は不満感をあらわにしたが、関係ない。
僕も少しはインド式に慣れてきたようだ。
そうこうするうちに、火葬場の近くに停泊してる一艘のボートに近づいた。
そこには、ちょっとキレイなシャツを着た少し偉い雰囲気の男がいた。
僕のボートの男に何やら話し、話し終わると、なぜかこちらに乗り込もうとしてきた。
いったん乗られたら何をされるか分からないので、僕は断固とした厳しい口調で
「このボートに乗るな!」
と叫んだ。
男は乗りかけた足を元に戻した。
もし乗ってきたら、何が起こったのだろうか?
ボートに乗るのも気が抜けない。
とそのとき、後ろから僕を呼ぶ日本語が聞こえた。
振り向いた先には、団体さんのモーターボートの中から、夜行列車でご一緒した日本人親子が手を振っていた。
おお。
自然と笑顔が出て来た。
とても暖かい気持ちになる。
彼女らもガンジスを満喫しているようで何よりだ。
もうちょっと観光。
これは、傾いて水につかっている寺院。
おじさんばかりの、どうでもいい光景。
それでも、ここではとても趣がある。
そろそろ1時間経つ。
ボート観光の終わりだ。
案の定、降りる前に、ボートの男は言う。
「あれだけハードだったんだ。ボーナスをくれ」
まあ、いいか。がんばったんだから。
と、50ルピーを渡す。
まだまだ、僕は甘い。
でも甘くていいと思う。
せっかくの旅なんだから、
もっと値切れたはず、ぼったくられたとか、インド人に負けたとか、そんなことを気にするなんて、もったいない。
どうせ日本円に直したら大したことないんだし。
そして、男は別れ際に、
夕方、ボートで対岸に行って夕日を見ないかと僕を誘う。
さすが、商魂逞しい。
見習わなければ。
To Be Continued.
「4日目:ガンジス川の火葬場、バラナシの路地裏、人との出会い」に続く
http://tatsuya1970.com/?p=4355
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