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SONYの旋律

公開日: :

元ソニー会長の大賀典雄氏が4月23日に亡くなられた。
ご冥福をお祈り申し上げます。
訃報をきき、大賀氏の自伝を読んだ。
日経新聞の「私の履歴書」に2002年頃に連載された自伝。
SONYの旋律 (私の履歴書)
SONYの旋律 (私の履歴書)

井深氏、盛田氏、両天才の興した技術者軍団のソニーを、名実共に真のグローバル企業に育て上げたのが大賀氏だった。
ソニーと音楽家という二足のワラジを履く異色の経営者であったが、技術とエンターテインメント両方に造詣が深かったからこそ、大賀社長時代に一気に世界的企業に成長したのだと思う。
音楽家を目指してたのにソニーに入社した経緯が面白い。
東京芸術大学時代、学校が東通工(ソニーの前身)のテープレコーダーを買おうとしてたときに、その問題点を指摘するうちに、井深氏から誘われ、嘱託契約した。
その後ドイツの音楽留学が終わり、盛田さんに欧米に比べソニーのデザインが未熟なことを伝えたら、
「だからそれは気がついた人がやらないと」と盛田氏。
ここから二足のワラジが始まった。
天才がまだ無名の時代のときの話って面白い。

ソニーに入社するやいなや、いち早くインダストリアルデザイン、ブランディングの重要性に気づき、社内を改革していく。
そして業界標準を抑えることに重きを置き、カセットテープ、CDなどの規格を作って行く様子がとても興味深い。
そこで1つエピソードを紹介
CDの記録時間の長さは、ドイツのフィリップスは60分と主張してたが、
「記録時間の長さは音楽の楽曲の時間から逆算して決めるべきだ」
という大賀氏の主張で、ベートーベンの第九が収まる長さから75分に決めたというところには、凄いと思った。
物事は目的から考えるというアリストテレスの目的論にも通じる。
「顧客とは何か」を考えるドラッカーに通じる。
私は日頃なにも考えてないけど、こういう発想が必要なんだよね。

そして、大賀氏は次々と大事業をやってのける。
CBSソニーを設立しレコード産業に参入、
コロンビアピクチャーズを買収し映画産業に参入、
プレイステーションにより家庭用ゲーム産業に進出。
(ビデオの規格は敗北に終わったが)
これらのエピソードもとても興味深くエキサイティング。
そして、ソニーが巨大になっていく過程で悩みも深くなる。
部品の1つ1つのコストを切り詰めていく製造業と、制作に巨額の費用を投じても当たり外れのある音楽や映画のソフトビジネスを同じ企業グループ内の中で融合するという難しい舵取りをどうやってしたか?
それは結局は、「ソニーは人が支える」と大賀氏は述べる。
そのときに必要な人材をすぐに国籍、学歴問わず調達すること。
我が国の企業にしては珍しく、早くからダイバーシティだったので、優秀な人材が世界中から集まり、困難な事業も乗り越えていった。

最後に、
ソニーが独創的な製品を常に世に提供し続けた要因は、
他社のマネをしないこと。
そのためにはどうするか、以下抜粋。

他社のまねをしないということは、他社からもまねのできない商品を作りあげなければならない。それには2つの方法しかない。
・商品企画のスタンダードを自らおさえるか、
・職人芸的な技術に裏打ちされたメカトロニクスを持つかだ。
しかし、いくら独自のプラットフォームと技術を持っていても、商品開発の方向性が間違っていては意味が無い。
それを避けるためには市場の動向を見定め、常に3年後に販売したときにライバルに勝てる商品を今から開発していくロングスパンな戦略を持たなければいけない。
市場が今日求めているものを作っても、それは遅過ぎる。

残念ながら、現在その役目は米国のアップル社に奪われた。
本来ならば、iPodのような商品はソニーが作ってたはずなのに。
子供の頃からソニーに憧れていた私も、iPod購入したときは苦渋の決断だった。
そしてVAIOからMacに転向し、今やスティーブ・ジョブズを教祖に崇めるアップル信者になってしまった。
ソニーは、大企業病に陥いり、イノベーションが生まれにくくなっているのだろうか?
それとも日本人全体に自由な発想がなくなってきたのだろうか?
本書の最後で大賀さんはこう言われる。

日本の国力からすれば優秀な人材をもっと輩出できるはず。
そうなっていないのは、日本の画一的な教育システムが原因ではないか。
日本の閉塞感は、日本のリーダー層にしっかりと勉強をしている人が少ないからではないか。皆が自分の損得ばかりを考えて、日本の将来をどうすべきかということを真剣に考えようとしていない。今こそ国民一人一人の意識改革が重要である。

真摯に受け止めよう。
先人の作り上げた便利な社会にタダ乗りしてはいけない。

PS
(メモ)
今さら知ったSONYという名前の由来
サウンド(音)やソニック(音の)の語源となったラテン語の「SONUS(ソヌス)」と「小さい坊や」という意味の「SONNY」とを掛け合わせて作った造語。
(その他)
本田宗一郎と藤沢武夫に学生時代に会ってたとか
カラヤンとオーディオや趣味のジェット機操縦を通じての友情など
興味深いエピソードが満載。
特にカラヤンの死を看取った話。
病床のカラヤンと大賀氏が話してるときに掛かり付けの医者が訪問したが、
「ミスター大賀とのこの会談は中国の王様とはいえども邪魔をすることは許されないのだ」
といって医者を追い払った。
その直後にカラヤンは亡くなった。

(参考)
経営者の自伝といえば、
ホンダ創業期を支えた藤沢武夫氏の
『経営に終わりはない』がお薦め
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2310423

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