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映画『スティーブ・ジョブズ』にドラマを期待してはいけない。映画的表現・技巧・演技を楽しむ映画なのだから。

 Steve jobs movie

 

スティーブ・ジョブズ THE MOVIE を観た。

 

監督が「スラムドック・ミリオネア」のダニー・ボイルときくだけで、期待は高まる。

反面、どうやって、あの人生を描くのかめちゃくちゃ不安でもある。

 

だって、伝記映画って難しいと思う。

その人間の人生をたった2時間に収めるなんて、とても困難にちがいない。

 

そんな伝記映画には2つのパターンがあると思う。

一般的なのは、幼少から大人、成功し、そして死ぬまで

という時系列にする方法、

そして、過去と現代を行ったり来たりする方法。

 

果たして、「スティーブジョブズ」はどういう方法を使うのか、とても興味があった。

 

この映画は、私の期待を良い意味で裏切る、思いもしなかった新鮮な切り口を使っている。

 

ジョブズといえばプレゼン。

この映画は、ただそれだけに絞った。

幼少期からの成長やサクセスストーリーなんか全部ぶった斬った。

 

初代Mac、NEXT、iMac

その3つのプレゼン発表直前のわずか数十分の間に、ジョブズの人生を凝縮させたのだ。

 

登場人物も絞った。

ジョブズの娘リサ、スティーブ・ウォズニアック、ジョブズを辞任に追い込んだジョン・スカリー、マーケティング担当の女性ジョアンナ・ホフマン

をピックアップし、全員その数十分にぶち込んだ。

 

プレゼン発表前の慌ただしい所に、めくるめく登場人物が入れ替わり立ち替わりめまぐるしく展開していく。セリフの量・情報量も半端ないが、それを説明と感じさせない自然かつ巧妙なセリフ回し、たった数十分のプレゼンの舞台裏で、ジョブズの人生を凝縮して描くことに成功している。

すごい脚本だ。

さりげなく、iPod、iPhoneの登場を予感する箇所もあり、ニヤリとするところが随所にある。

 

ただ、注意して欲しいのが、大河ドラマのような普通の伝記映画を期待してたり、ワクワクするようなサクセスストーリーを期待してはいけない。ドラマを期待すると絶対に失望する。

 

この映画は、映画というより舞台に近い。

ジョブズの人生を制約のある限られた舞台という場所に凝縮し、それに違和感を感じさせない脚本の技量と、舞台劇のような俳優対俳優の白熱の演技を楽しむものである。

 

そして、長大な話をいかにコンパクトにエンターテインメントにまとめるかという映画学校、脚本家養成スクールの教科書になりえそうな映画といえよう。

 

 

しかし、しかし、 

このような映画ファンを唸らす匠な映画なのですが、

So What?

な感覚はいとめません。

 

映画的テクニック、演技力は凄いんだけど、熱量や魂というものを感じることができなかったです。

結局ジョブズを題材にして何を伝えたかったの?

と冷めた自分がいました。

 

昨年のアカデミー作品賞「バードマン」のように生粋の映画ファンが好きそうな技巧派な映画なんだけど、僕の中では印象に残らない。まだ3年前の映画「スティーブ・ジョブズ」の方が、単純なんだけど心には残る。

 

もっと監督の主張・解釈がゴリゴリきてもよかったと思うけど、まだ亡くなってそんなに経ってないし、生前のジョブズを知ってる人もたくさんいるし、世界中にカルトなファンがいるのだから、こういう形でスマートにまとめるしかできなかったのかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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