私とは何か――「個人」から「分人」へ
私とは何か?
本当の私ってなんだろう?
こんな中学二年生が持っているような悩みを、私はいまだに持ってます。
それが、SNSをするようになってからは、もっと加速されました。
家族の中での自分
仕事での自分
中高の友人への自分
大学の友人への自分
SNS上での自分
今までは、私たちは、相手によって、意識はしてないんだけど、違う自分を使い分けてきました。
会社の中での自分は、大学の友人に見せる自分と同じではないはずです。
Facebookをするようになってから、ずっと奇妙な違和感を持ってたのですが、最近、その理由がなんとなく分かってきました。
それは、多分、相手によって使い分けてた自分を、全員にオープンにしてしまうことから来る違和感なのかもしれません。
作家平野啓一郎さんは、「私とは何か」という著書で、
「分人」
という表現を用いて、それを適確に説明しています。
「分人」というたった二文字なんですが、
長年違和感を感じてたことに、パッと霧が晴れました。
私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)
SNSをし始めてからの自分は、現実の自分とのギャップに違和感を感じてますし、本当にこれでいいんだろうかと疑問に思っています。
基本的に、SNS(特にFacebook)ではネガティブなことは書きません。
ポジティブなこと、良いことしか書かないので、ときおりSNS上の自分と現実の自分のギャップに奇妙な感覚を覚えます。
私のブログに書いてあることを読むと、
英語をがんばって、ボランティアにも行って、本をたくさん読んで、iPhoneのアプリまで作ってる。。。
私のブログだけを読んで私という人間を判断すると、もの凄く多才で素晴らしい人物のように見えます。
でも現実は、しがない普通のドメスティックなメタボ寸前の中年リーマンにすぎません。
60年代のイギリスのモッズの少年たちを描いた
「さらば青春の光」
という映画を知ってますか?
さらば青春の光 [DVD]
ステッカーをやミラーをたくさんつけカスタマイズされたベスパに細身のスーツ、ミリタリーパーカーに身を包んだモッズたちの青春映画なのですが、ただのファッション青春映画ではありません。
あるシーンが私の脳裏にこびりついて忘れることができません。
それは、スティング演じるモッズたちの親分。
(日本でいうと、全然違うけど暴走族の総長みたいなものといえば、イメージしやすいかも?)
彼は、ケンカが強く、かっこよくて、モッズの皆が憧れる存在でした。
映画のラスト近くで、
家族も友人にも見放されたと思った主人公は、憧れの彼に会いに行きます。
そこで主人公が目にしたシーンを、私は忘れることができません。
彼はマジメにホテルのドアマンとして働いてるじゃありませんか。
あの、俺たちのヒーローが???
衝撃な内容でしたが、
これも「分人」なのです。
モッズのリーダーという分人、
ホテルのドアマンという分人、
どれも、その人そのものだし、
勝手に憧れていた主人公がガキだっただけのこと。
SNS上でエラそうなこと、意識高そうなことをを書くのも、私の分人。
会社で、さえない普通のサラリーマンをするのも、私の分人。
本当の私は1つじゃない。
1人の人間の中には、複数の分人が存在していて、その集合体が私やあなたなのです。
それで、なにか、心のモヤモヤが晴れたような気がします。
「分人」という考えを採用すると、人生をうまく生きていけるような気がします。
分人とは相手との相対関係で生じるものですから、
たとえ、ある人間と性格的に生理的に合わなくても、
その人間からイジメなどのヒドい仕打ちを受けても、
悩む必要なありません。
辛い思いをする分人で生きるのではなく、楽しい自分になれる分人を足場として、生きる道を考えればいいのですから。
私たちは、日常生活の中で、複数の分人を生きているからこそ、精神のバランスを保っており、
「人格は一つしかない」、「本当の自分はただ一つ」
という考え方は、人に不毛な苦しみを強いるものなのです。
逆に、「相手が私に見せる分人を作ってるのも私」だということも忘れてはいけません。
昔流行った「鏡の法則」みたいな考えですが、相手は自分の鏡なのです。
分人という考えで他者と接すれば、他者の存在を自然に承認できるはずです。
思いやりの心、寛容さで他人に接しましょう。
その分人は、相手の分人に良い影響を与えます。
そうはいっても、それが難しければ、あえて辛い思いをする分人で生きるのではなく、楽しい自分になれる分人で生きるという選択肢もあります。
肝心なのは、自分という人間は1つではないということ。
たくさんある自分の中のたった1つの自分に追い込まれることだけはないように。
私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書) | |
平野 啓一郎
講談社 2012-09-14 |
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