風立ちぬ
先日引退を表明された宮崎駿監督の
『風立ちぬ』を観ました。
素晴らしい。
心が優しくなる素敵な作品でした。
ベタなプラトニックなラブストーリーを絡めているのですが、
それがまったく嫌みにならず、43歳の私の胸をキュンとさせてくれました。
また、鑑賞中はアニメーションだということを意識させないリアル感に脱帽しました。
そして、この映画の一番訴えたかったことは、
イノベーションを起こす人たち、エンジニアたちへのリスペクトなのだと私は思います。
画面一杯、彼らへの愛情、尊敬の念があふれてました。
人類はイノベーションを起こす人たちによって、進歩しているのだと。
暴言かもしれませんが、
「職業に貴賤なし」という言葉は、ウソです。
私はそうは思いません。
職業には貴賤は存在します。
我々の生活をより豊かにするために、人類の叡智の限界に挑むエンジニアたちは、もっともっとリスペクトされる存在です。
少なくとも、マネーゲームに興じる経済界の人間、利権に群がる政治家どもよりは、しかるべきリスペクトとサラリーが与えられるべきです。
我が国では、高度成長期には、ソニー、ホンダなどエンジニアの時代でした。
彼らエンジニアたちは皆から賞賛されていました。
その風向きが変わったのが、バブル崩壊後、
思い浮かべるのが、青色ダイオードの中村修二さんの頃からのような気がします。
新しい価値を創造すること。
それこそが、人類の存在する意味であり、
それを忘れかけている我々に宮崎駿監督は、警告を与えてくれたのではないかと思います。
昨今、日本の電機メーカーは苦戦を強いられています。
技術力は素晴らしいのに、経営のマズさから、多くの日本のエンジニアたちはリストラされ、中国、韓国などに流出しています。
もう遅いかもしれませんが、エンジニアの復権こそが、日本復活のキーとなるのは間違いありません。
そう。
この映画は、そういった日本のエンジニアたちへのエールなのです。
一方で、この映画の主人公は、ゼロ戦という人を殺す道具を作り、たくさんの人間の命が犠牲になりました。
この映画に対する批判の多くは、そのことを糾弾しています。
しかし、これこそが、宮崎駿監督が一貫して主張されている
「テクノロジーと自然との調和という矛盾」
への問題提起なのだと思います。
人類の存在そのものが矛盾に満ちている存在なのです。
それでも、人類は前に向いて進まなければいけません。
人間と自然の調和の矛盾をついた作品「もののけ姫」で宮崎監督は
「生きろ!」
と私たちにメッセージを送りました。
それが、本作では
「生きねば!」
に変わりました。
矛盾に満ちた罪深い私たち人間ですが、
私たちは自然によって生かされてることを自覚することです。
「生きろ!」と単に生きるだけではなく、
生きるということは、私たちの意志とは無関係で絶対十分条件なこと、
つまり「生きねば!」ということなのだから、
生かされている短い人生をどう人類の発展に貢献できるかが、問われているのではないでしょうか?
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