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金融危機後の世界

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昨日の日記マイケル・ムーアの「キャピタリズム」に続き、金融ネタです。
「ヨーロッパ復興開発銀行」初代総裁にして経済学者・思想家・作家であり、“ヨーロッパ最高の知性”と称されるジャック・アタリの「金融危機後の世界」を読んだ。
今回の金融危機の原因、そしてこれからどうしたらよいかということが、すごく分かりやすく書かれているので、万人にお薦めです。
では、本書に内容をかいつまんで紹介。

すべてのはじまりは経済の自由化にあった。
それにより所得格差は増え、需要は減少。
所得を減らさせずに、新たな需要を創出させるために、住宅ローン、クレジットカードにより、国民に借金漬けになってもらった。
平均寿命がのび、高利回りが要求されるようになったがため、ヘッジファンドが跋扈することになった。
リスクに躊躇する者には、格付け、モノライン等で安心させ、どんどん資金を集めていった。
「神がアメリカ人を選んだ」という思いあがった信念によるポジティブ・アティテュードが、拍車をかけていった。
インサイダーたちは危機を予見していたが、自らの利益を最大にするため何でもやった。
あたかも銀行強盗が、警察が到着する寸前まで、金庫からできるかぎりの札束をボストンバッグに必死に詰め込んでいるかのごときである。
そして、金融市場というゴーレムは制御不能となり、バブルは弾けた。
だが、インサイダーたちは、それでも、自らの強欲の後始末のために、国家を揺り動かし、空っぽの状態の国庫にマネーを掻き集めさせた。

That’s all

マイケル・ムーアの「キャピタリズム」でも描かれていたように、資本主義は、ごく一部の人間の富を独占するシステムである。
彼らは富を創造することなく、合法的に、誰の監査も受けずに、生産された価値の大部分を、独占する。
世界中の納税者・消費者・預金者を収奪することによって、膨大な富を独占する。
このような収奪を容認するシステムを変えなければいけないのだ。

さて、アタリは、今回の金融危機の根源的な原因は
・情報が不平等で、一部の人間(インサイダー)に独占されていること
・個人の自由という価値観を尊重しすぎたこと
であると言う。
情報の偏りが不平等な形で拡大し、それを制御できなかったのが、今回の金融危機なのだと。
だから、アタリは金融市場を規制すべきだと唱える。それも地球規模で。

地球規模となった市場に対して、法整備を実施すること。
すなわち、できるかぎり民主的な統治制度を、地球規模で構築することである。
(もちろんインサイダーを許さない)

最後に、アタリは、われわれが忘れがちな4つのシンプルな真理を唱える。

・われわれ各自が、社会的制限なく身勝手に行動すると、
 自らの利益だけを追求し始め、
 その果てに自らの子孫の利益さえも奪い取ってしまう。
・他社の幸せは自らの利益であることに、われわれ各自が気づいてこそ、
 人類は生き延びることができる。
・いかなる種類の仕事であれ、
 労働(特に利他主義に根差した労働)だけが富を得ることを正当化できる
・唯一、本当に希少なものとは「時間」である。
 人々の自由時間を増やし、人々に充実感をもたらす活動に対しては、
 とくに大きな報酬がもたらされるべきである。


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