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世紀の空売り 〜世界経済の破綻に賭けた男たち

公開日: :

世紀の空売り
世紀の空売り
今までいろんなサブプライム関係の本読んだけど、これが一番わかりやすいし面白い。
難解で退屈な経済書で先の金融危機を学ぶよりも、こちらの方が大変実になる事うけあいと思う。
サブプライム・ローンの破綻を予測し、サブプラム・モーゲージ債券を空売りする3組のヘッジファンドのアウトロー達を描いてる。
サブプライム債券を巡るウォール街の非道に憤り立ち向かうスティーブ・アイズマン
元研修医で隻眼のアスペルガー症候群の孤高の相場師マイケル・バーリ
大穴狙いのアマチュア投資家ジェイミー・マイとチャーリー・レドリー
この3組を軸に物語は展開していく。
各人の人物描写が的確で息づかいが伝わってくる。
純粋に物語としても十分楽しめる。
この3組とも、サブプライム・ローンの怪しさにいち早く気がつき、ショート(空売り)をしかける。
サブプライム・ローン債券に構成されているローンを1つ1つ検証すればするほど確信をえる。
これらのローンはゴミだらけだ。
ゴミをたくさん集めてリスクヘッジしてるつもりだが、ゴミの集団はゴミにすぎない。
それになぜか米国債券と同じトリプルAの格付けがついていたりする。
といっても債券のショートなんかできないので、サブプライム関係の会社の株をショートするか、サブプライム・ローン債券のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)を購入する。

ここで復習。
CDSとは保険のようなもので、
例えば30年もののサブプライムローン債券のCDSを購入すると、毎年プレミアム(手数料のようなもの)を30年間払わないといけないんだけど、もしサブプライム債券がデフォルトすれば、債券の元本が償還される。
サブプライム債券はなぜか格付けがすごくいいので、安価なプレミアムでCDSが購入できた。
つまりサブプライムローン債券を空売りするのと同じことになる。
そして、CDSはローンを借りる人間以上に組成ができないので、合成CDOなる怪しげなものもでてくる。これが更にサブプライムというカジノを一気に巨大にしたんだけど、なんとなくしか分からないのでここでは説明を省く。

そういうわけで、ゴミが多そうで高格付のサブプライムローン債券を探し、そのCDSを購入すればいいだけだ。

でも、なんでまた、こんな高格付けなんだろう。
その理由は

「ウォール街に就職できない連中が、ムーディーズに就職するんですよ。
 とくに資産担保の連中はたいてい能なしです」

という言葉に要約される。
年収数百万ドルのウォール街のトレーダー達が、年収7万ドルの能なし連中をおだてて、考えられるかぎり最悪のローンに可能なかぎり高い格付けをさせていた。
投資銀行にとって格付け機関を欺くのは朝飯前だ。
格付け機関S&Pの担当者のセリフ。
「債券の発行者が情報をくれません。もし情報を要求したらウォール街がこぞってムーディーズに格付けを一任するんじゃないか」
本来ならば格付け機関の方が権力があるはずなのに。。。

この当時はサブプライムローンが破綻するなぞ、だれも夢にも思っちゃいない。
トリプルAのサブプライムモーゲージ債券のCDSを買うなんていったら、いいカモが来た、ぼろ儲けできるぞ、といって、AIGなんかどんどんCDSを売ってた。

主人公たちも、100%の確認は無い。
本当に自分たちだけが気づいてるのだろうか?
本当に自分たちより頭がいい連中が、こんなことに気づかないのだろうか?
といろいろなウォール街の人間やCDS、CDOの売り手、サブプライムローンの買い手に会いにいく。
自分たちの意図をたくみに隠し、情報を集めるのだけど、結局おそろしいことに、だれも分かってないことに気づく。
バンク・オブ・アメリカのCEOと面談したアイズマンいわく。
「こいつの頭は空っぽだ。世界で五本の指に入る投資銀行を、空っぽの頭の男が経営してる」
アイズマンはもちろんバンカメをショート、USB、シティ、リーマンもショートする。

そして、2008年3月ついに世界の破滅が始まる。
ベアースターンズが破綻した。

主人公たちは、もちろん莫大な富を手にするのだが、気分は浮かない。
シャンパンで乾杯する気にもならない。
自分の取引している市場が崩壊してるのだから複雑な気分だ。
ノアの方舟から洪水を観るようなものだ。

結局あの狂乱は何だったんだろう。
頭のいい人間たちの叡智が無駄に使われていた。
皆が理性を失っていたGREEDな時代。
だれにも理解できない複雑な商品にすることで思考停止にさせ手数料を荒稼ぎしていた。
バフェットのいうように自分が理解できない商品には投資しないこと。
年次報告書、目論見書をよく読むこと。
これに尽きるんだろうな。って思う。

とにかく、金融関連のノンフィクションでここまで面白かったのは久しぶり。
本書により金融のダイナミズムを体感してもらいたい。
ウォール街の虚構を批判したつもりの映画『ウォール街』が、監督の意図とは逆にウォール街に憧れる若者を増殖させたように、本書を読めば絶対自分でヘッジファンドを設立したくなると思う。
是非、本書の映画化を望む。
期待はずれの『ウォール・ストリート』を見た後だからなおさら。

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Comment

  1. joshua より:

    この本は、本当に興味深いものだった。
    ほとんど同じ内容だけど、ジョンポールソンの大勝負を描いた「史上最大のボロ儲け」も一緒に読むと、ウォール街がいかに間違っているか確信を持てると思う。
    しかしまあ、懲りないというか、ゴールドマンなんて相変わらず怪しげな金融商品をたくさん売ってるからね。
    去年は中国政府とかなり揉めたんじゃなかったかな。
    結局彼らは目先の利益しか頭にない。
    倫理のかけらもない人間が、多額のカネを動かして経済を操作しようとする。
    それはもう、社会の害悪でしかないね。
    昨年はオバマが金融規制法に署名したけど、もっと突っ込んだレギュレーションが必要だと俺は思う。

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