史上最大のボロ儲け
あのジョージ・ソロスを超えた!
1年間で150億ドル(個人では40億ドル)を稼いだ男
ジョン・ポールソンのお話。
ポールソンといっても、スキンヘッドの元米財務長官ではない。
2008年のリセッションで、サブプライムローンの破綻に賭けて、ボロ儲けをしたヘッジファンドの人。
いまや、ポールソンといえば、こちらの方が有名でしょう。
ヘッジファンドときくと、
リーマンショック以来、一般ピープルには強欲というネガティブなイメージしかないけど、本書を読めば印象は180度変わるはず。
彼らは市場のおかしいところをつき、結果的には市場を効率化させてる役割をになってることに気づくはずだ。
安く買って高く売る。
商売の基本をしているにすぎない。
破産する人が大勢いる一方で大儲けをしてるけしからん輩という印象を多くの人は持っていると思うが、スケープゴートにされてるだけだ。
自分の頭で考えないヤツの言い訳にすぎない。
では、どうやって儲けたのか?
サブプライム・ローンの破綻に賭けた。
サブプライム・ローンをショートしたのだ。
といってもローン自体をショートできないので、
サブプライムローン債券のCDSに賭けたのだ。
相場の格言を思い出す。
「人の行く裏に道あり花の山」
当時サブプライムローンがおかしいといえば、バカ扱いされていた。
投資のことを何も知らないド素人だとバカにされた。
だが、実際サブプライムローンの破綻で儲けたに人々は、住宅ローンの専門家ではない。
専門家でないからこそ、固定観念や他人の意見(特に専門家の意見)に振り回されず、論理的な証拠をもとに、サブプライムの破綻に賭けられたのだ。
ここには、フロンティアスピリット、ベンチャースピリットがつまっている。
決して強欲なんかじゃない。
叡智を駆使し、人と違う事をする勇気を持ち、成り上がって行く、サクセスストーリーだ。
とは言っても、サブプライムが破綻する事はわかってるのに、投資家から資金を集められない。
大手が気づいて大量にCDSを購入されたら目論みも終わりだ。
資金を集めつつ、大手の目をごまかす。
とてもハラハラして読み応えたっぷり。
そして、
とうとう
ベアスターンズが破綻した!
リーマンが破綻した!
世間が皆破滅に向かう中、ポールソンが大儲けする様は、不謹慎かもしれないが、痛快である。
ずっと前からサブプライム・ローンは危ない、
王様は裸だって言ってたじゃないか?
そのときバカにしてたくせに、何をいまさら?
ついにウォール街に名を轟かせたポールソン。
帝王ジョージ・ソロスからランチの招待。
このエピソードには感慨深い。
成り上がり者の最高のシーン。
人生の最高の瞬間ってこういう時なんだろうな。
そうはいっても、サブプライムの破綻を予期した人間の全員がハッピーなわけではない。
その悲喜こもごもさも本書の魅力である。
一番最初に気づいたバリーは自身のヘッジファンドで大儲けしたが心身は消耗した。
CDSの伝道者リップマンはドイツ銀行の一社員だったため社内では逆に疎んじられるようになった。
ポールソンにCDSを勧めたペレグレーニは、莫大な報酬を得たが、その功績に見合った名誉や権威を手に入れることはできなかった。
ハーバード大学にポールソンとともに講演に行ったときのエピソードには男の悲哀を感じる。
この取引は自分が考えポールソンに勧めたのに、ハーバードの学生からの賞賛はすべてポールソンのものだった。
以前紹介した「世紀の空売り」と背景は同じ。
「世紀の空売り」のメインキャストのバリーやリップマンも登場する。
難しい専門書なんか読むよりも、
小説仕立てのこちらのほうが先般の金融危機のあらましをよく理解できると思うので、
読んでない人はどちらか読む事をお薦めする。
(参考図書)
世紀の空売り
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=3642423
PS.気に入った言葉をメモ
「処世術は教えてくれる。
誰もが知らない方法で成功するよりも、
誰もが知っている方法で失敗するほうが、
周りからとやかく言われないことを」
(ジョン・メイナード・ケインズ)
「天体の動きなら計算できるが、人の狂気までは計算できない」
(アイザック・ニュートン)
「自分が売ってるヤクでハイになるな」
(映画「スカーフェイス」よりアル・パチーノの台詞)
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