普通じゃないことは素晴らしい! 〜『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を観て
第2次世界大戦で、解読不可能と言われたナチスドイツの暗号エニグマを解読し、英国を勝利に導き、コンピュータの父とも言われる天才数学者アラン・チューリングの生涯を描いた『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』を観ました。
とても、素晴らしい映画でした。
「数学者の話」ときいて、難解な映画と思うかもしれませんが、第2次世界大戦、戦後、幼少時と、3つの時間軸をテンポ良い編集で展開し、観るものを飽きさせません。エンターテイメント、社会問題、人物ドラマと、総合的にバランスがとれた娯楽作品に仕上がっていました。
とくに、「イノベーション」とか「ダイバーシティ」いう言葉が好きなひとには堪らない映画だと思います。
この映画に何度も出てくるこのセリフ
「誰も想像すらしなかった人が、誰も想像すらしなかったことを成し遂げる」
この言葉が、この映画を一言で表しています。
普通じゃないことの素晴らしさ。
多様性の素晴らしさ。
普通じゃない人たちのイノベーションのおかげで、私たちは素晴らしい世界を生きることができています。
とはいっても、1人の天才だけの力ではエニグマは倒せません。
チームの協力がとても重要です。
イノベーションを生む組織とはどんなものなのか?
そんなことも教えてくれます。
リクルートの方法も面白い。
チューリングは新聞にクロスワードパズルを掲載して人材を集めます。
このパズルを解いた人に仕事を与えます。と。
エニグマ解読という目的のためには、肩書きは関係無いことです。
本当に能力のある人、市井にうもれた人を発掘させるためとった合理的な方法です。
このリクルートの方法のおかげで、普通では一般社会に埋没していた人材を発掘できました。
その中にはパズルが得意な普通の一般女性がいました。
この女性は、最終試験でチューリングが6分で解けなかったパズルを5分で解き、即採用となりました。
このようなリクルート方法だったから、普段でも埋もれていた優秀な人材を採用することができました。出身大学、性別、面接でのウィットにとんだ受け答えを重用するのではなく、本当の能力を判定する採用方法が、企業にも求められているのではないかと考えさせられるところでした。
人生において、自分の能力を発揮できる場におられないことは、一番の悲劇です。
さて、そうはいってもエニグマの解読は難航を極めます。
何度もチューリングのプロジェクトは中止させられそうになります。
あと1ヶ月で解読できないとクビだと最後通告をうけ、崖っぷちに追いやられます。
しかし、イノベーションは何気ないところから生まれます。
同僚がバーで女性を口説いたときの何気ない会話から、エニグマ解読のヒントが見つかりました。
私は、これが、アルキメデスの「エウリカ(Eureka)」なんだなあと思い、思わず「エウリカ!」と心の中で叫び、映画鑑賞中なのに手を叩きそうになりました。
おかげで、難攻不落だったエニグマが、あっさりと攻略できました。
これで、物語はハッピーエンドと思いきや、これからが苦悩の日々になります。
敵の暗号を解読できるので敵の作戦が筒抜けになりましたが、全部防衛したらエニグマが破られたことを敵に知られます。すると今度は違う暗号方法に変えることでしょう。
だから、エニグマを解読したことがを敵にも味方にもばれないようにしなければいけません。
そのために、事前に敵の作戦を知っていても、攻撃を受けるところと、攻撃に対処するとことを選択する必要があり、それを数学的に導くことになりました。
これは、陸・海・空軍も知らない特殊機関だけが知っている最高機密でした。
我々は神じゃない。
でも、やらなければ。
せっかくエニグマを解読したのに、これからの展開は、暗くなります。
チームのメンバーの中には、自分の兄が乗船している艦隊が攻撃を受けると知りながら、それを誰にもいえない苦悩にさらされる者もいます。
攻撃されると知りながら、見殺しにしなければいけない。
エニグマ解読のおかげで、戦争は2年早く終結し、1400万人の命が助かったと推計されます。
しかし、戦後50年間彼らの活動は隠されていました。
主人公は戦後苦悩します。
晩年は惨めな人生でした。
同性愛者だったため、警察に捕まった(当時のイギリスは同性愛は犯罪)ことを知ったかつての同僚の女性がチューリングを訪ね、慰めます。
「普通じゃない人のおかげで、この世の中は素晴らしい」
と。
しかし、1年後チューリングは自殺します。
このような事実を知り、
映画の最後の最後に出てくる一文に、ハッとします。
チューリングのおかげで、現代を生きる私たちの生活も、素晴らしいものになっていることを知るからです。
普通じゃないことは素晴らしい。
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