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愛、アムール

公開日: : 最終更新日:2022/12/21 映画感想文

昨年のカンヌのパルムドール受賞作品、今年の米アカデミー賞外国語映画賞の
「愛、アムール」
を観ました。
http://www.ai-movie.jp
とても地味な映画なのですが、映画を観た後にジワジワと来ます。
人生とはいかに残酷なものなのかと。

ミヒャエル・ハネケ監督は、これで前作「白いリボン」に続き、2作連続パルムドール受賞という快挙を成し遂げ、名実ともに現代の映画界で最も偉大な監督の1人となりました。
前作「白いリボン」では、ナチス台頭前のドイツの田舎の日常生活をたんたんと描き、ささいな違和感から生じるどことなく不穏な空気を絶妙に描いてました。
今回も、日常生活をたんたんと描きつつも、全編を通じ観客に不安な気持ちを持たせます。
冒頭に衝撃的な結末を持ってきているため、優しく穏やかな空気が流れる老夫婦の生活を見ながらも私たちはずっと不安感を感じます。

私のようなド素人には技術的なこと、演出的なことはよく分かりませんが、素人目にも映画とはこう撮るんだというお手本のような映画だったと思います。
たしかに日頃ハリウッドの過剰な演出に慣れてる私にとっては、とても地味な映画でした。
音楽はほとんど無く、オープニングもエンドロールにすら音楽はありません。その分、本当に必要なところに、効果的に音楽が使われていました。
そして、最初のシーンを除き、全編にわたり老夫婦の住むパリのアパルトマンが舞台で、まるでその中にカメラを固定してるかのように、カメラがほとんど動きませんし、ズームとかもあまりありません。
蛇口から出る水の音、遠ざかったり近づいたりする足音など、他の部屋から聞こえてくる音や声で、今何が起こっているのかを表現する演出に、とても新鮮な感覚を受けました。
私が一番すごいと思ったのが、ラストの主人公の娘がアパルトマンを訪れるシーン。
まったく何の説明もないシーンなのですが、もう誰も住んでないことを空気で見せる演出に唸りました。

こういった数々の地味だけど素晴らしい演出を観るにつけ、
「行間を読む」という言葉を思い出しました。
この映画は「行間を読む映画」なのです。
過剰な演出は必要ありません。
映画とは、かくあるべきなのです。

「人生はかくも長く、素晴らしい」
と主人公の妻は昔のアルバムを見ながら言います。
この言葉が予告編やポスターに全面的に出てますが、
本当に人生は素晴らしいのか?
と疑問に思えてきます。
私には、主人公の妻の本心から出た言葉でなく、そう思いたい願望だったように見えました。
今までの素晴らしかった人生、しかし人生の最後の最後でなぜ私が。。。
というやり場の無い憤りからくる願望だったのでは。
なぜ、神は私たちに人生の最後の最後に「老い」という試練を与えたのでしょうか?
映画を観終わっても、ずっと考えこんでしまいます。

人生のパートナーを大切にしよう。
素晴らしい人生を送るために。。。

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