『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』を読んで
「測ることができるすべてのものを測れ。測ることができないものは、測ることができるようにしろ」
(ガリレオ・ガリレイ)
現在の IoT時代に、ガリレオが今生きていたらどう思うだろうか。
『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』を読んだ。
IoT、AI、ロボットによる農業で、少子高齢化なんか、なんのその。
そういった希望の本だった。
IoTとか農業に少しでも関係していれば必ず読むべきと思う。
テレビでは「世界からスゴイと言われてる日本」などと言ってるが、実際は凋落している。
工業分野では、ドイツに何周も遅れているし、IT分野では、アメリカ、中国、インドなどの後塵を拝している。
しかし、本書では、
農業を主体として、再び、日本が輝ける時代になる可能性を教えてくれる。
日本を先頭とした「農業版インダストリー4・0」の世界が到来するかもしれない。
なぜ、そうなのか?
大量離農と、センサー、ビッグデータだ。
少子高齢化のため、これから数年以内に零細な農家が一斉にやめる「大量離農」がやってくる。
残る農家の大部分では規模の拡大や農地の集積が進む。
必然的にIoT、ロボット、AIを求めざるを得なくなってくる。
そして、農業がデジタル化すると、米アップルが音楽業界に入り込んできたように、IT企業が農業界にも参入し、業界の垣根は取り払われ、新たな競争が始まる。
まさか、少子高齢化としう日本の最大の問題点が、利点になるなんて予想だにしなかった。
そんなIoTの世界では、センサーとビッグデータ解析が鍵を握る。
数年後には1兆個(現在の100倍)のセンサーが張り巡らせられるトリリオンセンサーの時代がくると言われている。
そんな中、我が国はセンサーは世界シェアの47%を握っている。またデータ収集やデータ解析のレベルの高さでは世界トップクラスの技術者を揃えている。
労働力人口が減っても、労働生産性が高まれば、経済成長は可能だ。
IoT、ビッグデータ解析により、労働生産性が高まれば、人口減少には影響されない。
地方は農業から復活し、国土全体が豊かになる。
自動車産業以上のGDPを稼ぎ出すという。
さて、ビッグデータについて。
重要なのが、ビッグデータの時代には、相対的な価値の重要さは因果関係から相関関係に主軸が移るということ。
なぜそうなるかなんか知る必要はない。
ビッグデータが事実を教えてくれる。
農業のビッグデータには大きく3つのデータがある。
環境情報と管理情報、生体情報
1.環境情報
気象、土壌、水といった、植物が育っている環境に関すること。場合によっては作物以外の微生物の働きを入れることもある。
2.管理情報
人によるマネジメントに関すること。
たとえば、種子、農薬、肥料をまいた時期やその量、あるいは農業機械をどこでどれだけの時間を動かしたかも含む。人がロボットを通して、間接的に働きかけることもこれに当たる。
3.生体情報
作物の生育状態に関すること。葉の面積、果実の糖度や酸度、収量といった作物そのものの情報などだ。
農業も製造業と同じく、最終的な目標は、一定以上の品質や生産量を得ることにあるが、農業には天候など環境の不確実性が立ちはだかる。
目標達成のために、環境に応じて、今までカンと経験に頼っていたこと(いつ耕すとか、どれくらいの肥料をまくかといったこと)を適切にマネジメントする必要がある。
それを判断するうえで大切なのが、3つのデータをきちんと集めること。
そして蓄積したビッグデータを解析して、科学的な農業をやっていくこと。
これがIoT時代の農業の基本になるという。
それでは、
本書にあった興味深い例をざっと、ご紹介
(本書は2017年3月発行の本なので、もっと先進な事例はたくさんあるでしょうが、)
KSAS(クボタスマートアグリシステム)
クボタのクラウドサービス。
食味センサー(タンパク値と水分値)と収量センサー(重さ)を内蔵したコンバインで、収穫しながらクラウドサーバーにセンシング情報を蓄積する
スマートフォンやタブレットでKSAS専用のモバイルアプリを使い、収集したデータはいつでも、どこからでも、閲覧できる。
ゼロアグリ
ルートレック・ネットワークス(神奈川県川崎市)が明治大学農学部とともに開発したIoTによる営農支援ツール「ゼロアグリ」
国内最大のトマトの産地である熊本県八代市では、2015年の前年までの平均と比べて収量を20%増やし、肥料代を40%も減らした。
現状の養液土耕システムでは、農家が天気や作物の状態を見ながら、水を与える時間の間隔を自ら設定しなければならない。作物の状態を見ずして「経験と勘」でこなしている。
生育ステージや品種ごとに理想とされている気温、湿度、地温、土壌EC(肥料分の総量)、土壌水分量、日射量があり、ゼロアグリは、これらの変数のなかで、土壌EC、土壌水分量、日射量を基に、作物の持つポテンシャルを上げるための制御を自動で行う。
パディウォッチ
新潟市では、水稲向け水管理支援システム「パディウォッチ」(開発イーラボ・エクスペリエンス、販売NTTドコモ)を活用。
センサーを使って、水田の水位、水温、気温、湿度という四つの情報を定期的に計測し、そのデータをインターネット経由でサーバーに蓄積していく。
利用者のパソコンやスマートフォン、タブレットにも、同じ情報が同時配信される。
パディッチ
富山県のベンチャー企業「笑農和」の水門が自らの判断で開閉する
北海道大学農学部
複数のロボットトラクターが同時に併走する「協調作業システム」
北海道岩見沢市では、市内全域をカバーするべく、3ヵ所にGPSを補正する基地局を設置している。そこから送られる電波を活用して、40~50戸の農家がトラクターを「オートステアリング」で走行させる。その次は無人走行を導入したい意向。
収穫用ロボット
京都市の産業用ロボットを製造するスキューズ。
人間の目と腕と足に当たる部分がある。目はカメラ、腕は伸び縮みするアーム、足はタイヤやクローラー。熟れごろを迎えたイチゴやトマトの色味に関するパターンを事前にでディープラーニングによって覚えさせ、それを見つけたらアームが摘み取る。
佐賀県と佐賀大学、オプティム
「楽しく、かっこよく、稼げる農業」の実現を目指す。
(1)農業専用ドローン
世界で初めて夜間の害虫駆除に成功した農業専用ドローンであり、世界で初めてディープラーニングと融合した農業ロボットでもある。
RGB解析とディープラーニングを活用して、飛行中に害虫の居場所を特定し、農薬をピンポイントでまく。
そのほかにも、害虫を退治するために誘蛾灯をつり下げられるほか、農作物の撮影をしたり、電波の基地局となったりと、その機能は多岐にわたる。
アグリドローンの登場は、農業界においてエポックメイキングであった。センサーやデバイスで収集するビッグデータの処理をAIが引き受けてくれることになれば、人間の想像が及ばないような知見が出てくるに違いない。
だからガリレオが言うようにデータを集めることが重要なのだ。
(2)アグリクローラー
ハウス内を走り回って作物の状態を監視するラジコンカーのような格好のもの
全天球カメラでイチゴやトマトの葉や実を撮影しながら、その動画をクラウドに上げ、ディープラーニングで画像を解析して、病害虫の発生の有無や収穫の時期などを見極める。
(3)ウェアラブル端末
農家は孤独ではなくなり、遠く離れていても誰かと一緒に仕事をすることができる。
農業のノウハウや洞察、モノの見方を、ウェアラブル端末を通じて人から人に伝承させる。
ディープラーニングを使ってウェアラブル端末で集めた音声データを解析し、それを基に栽培マニュアルを自動的に作成することも可能になる。
(4)IT産業
IoTとロボット、さらにAIが融合すれば、農業の生産性を上げるだけではない。
開発したハードやソフトを輸出すれば、地場に大きな産業が作れる。
エブリセンス(サンノゼに本社を置く日系企業)
「農業データ取引市場」を構想中。
取引市場で売買する対象は、データを加工したり分析したりした結果ではなく、センサーで収集したままの生データ。
データの売買は現金ではなく、仮想通貨のポイントで行われる。
(例)駿河湾の水温が山梨の畑でのブドウの出来に影響するという説がある。それが事実なら、畑の持ち主は、駿河湾の水温のデータが欲しくなる。
ファームノート(北海道帯広市)
世界で最も多く農業に関するデータを集め、利用者が困っているときに最適解を提供する、
そんな「世界の農業の頭脳になる」という目標を掲げている。
このように、IoT、AIによって、日本の農業は大きな変革期に来ており、世界をリードする可能性を大いに秘めている。
私も、仕事で農業のIT化に少し絡んでいるので、今後の動向にますます注視し、少しでも貢献できればと思う。
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