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キャズム

公開日: :

昨日はiPhone4Sではしゃいでた私。
そういう今やバカ売れのiPhoneだけど、日本では当初相当苦戦してた。
でも、いつの間にやら、iPhoneはキャズムを超え、私のまわりでも急速にiPhoneばかりになってきた。

ところで、
なに、キャズムって?

というわけで、
今日は、ハイテク業界のマーケティング担当者には必須の理論「キャズム」を説明した本を紹介。

キャズム
chasm

 1 深い裂け目;小峡谷(gorge);(構築物の)割れ目.
 2 (連続したものの)とぎれ,切れ目;(原稿中の)脱落
 3 ((a [the] ~))(意見・感情などの)隔絶,溝,くい違い
 eプログレッシブ英和中辞典 より

ハイテク製品が、一部の新し物好きやオタクから一般ピープルに受け入れられる前に、深い溝(キャズム)がある。
キャズムの概念は、本書のオビを見ると分かりやすい。
(ちょっと加工)


これを見ると、
ハイテク機器やソフトウェアの利用者は以下の5種類の人間に分けられる。

イノベーター       (別名:テクノロジー・マニア、ハイテクオタク)
アーリー・アダプターズ  (別名:ビジョナリー、ビジョン先行型)
アーリー・マジョリティーズ(別名:実利主義者、価格と品質重視派)
レイト・マジョリティーズ (別名:保守派、みんなが使ってるから派)
ラガード         (別名:懐疑派、ハイテク嫌い)

アーリー・アダプターとアーリー・マジョリティーの間に大きな溝がある。
これが、「キャズム」だ。

本書を読めば、
なぜ、キャズムを超えるのが難しいのか?
どうすれば、キャズムを超えることができるか?
を学ぶことができる。
革命的な製品であっても、マーケティングに失敗し、キャズムを超えられなければ、何年後かに、「そういえば、あれってどうなったん?」とオタクの間の会話のネタになりさがるだけ。
スムーズにキャズムを渡ることができれば、無名の企業であっても、新たに創出された市場を独占することも可能だ。そのときにはデファクトスタンダードになってるはず。
しかしキャズムを超えるのに戸惑ってたら、すぐに業界大手にマーケットを浸食されるだろう。
製品が良いから勝手に売れるんじゃなくて、その後のマーケティングがいかに重要なのか、本書は教えてくれる。

キャズムを超えるにはどうしたらよいか?

「どこへ行こうとしているかがわかっていなければ、おそらく目的地にはたどり着かない」
(ヨギ・ベラ または ケーシー・ステンデル /ニューヨーク・ヤンキース のどちらかと思われる言葉) 

まずアーリー・マジョリティー(実利主義者)にどう使ってもらうかだ。
アーリー・マジョリティーの火を起こすこと。
メインストリーム市場での橋頭堡を確保すること。
それには特定のニッチ市場を攻略地点として設定し、持てる勢力を総動員してそのニッチ市場を支配すること。
そして、そこからメインスストリーム市場の他の顧客を開拓することだ。
しかし、キャズムを超えることは極めて危険性の高い行為。
判断を間違えると企業の存亡にも関わる。
信頼できる情報がほとんどない中で、どう決断していくか?

通常ならば意思決定にはデータが必要だ。
しかしこの場合、統計データの頼るのは大変危険だ。

「嘘には3つの嘘がある。普通の嘘、とんでもない嘘、そして統計」
(マーク・トゥエイン)

そもそも情報がない。
ひとたび、統計データや予測値が一人歩きをしたら危険だ。
「3年後には1億ドルの市場になる。その市場の5%をとれれば。。。」
こんな声が聞こえたら、財布をしっかり握りしめて退散しよう。
もはや道を踏み間違えている。

じゃあ、どうすれば?
数値的な分析はあまり意味をなさない。
情報に基づく直感が一番大切だ。

えっ、直感?
そんな主観的なものでいいのか?
いやいや、直感といっても単なる思いつきではない。
豊かな想像力、情報から来る直感だ。

ターゲットとなるであろうカスタマーを思い浮かべよう。
シナリオ、イメージを作り上げよう。
ターゲット・カスタマーのニーズに応える形でマーケティングを進めていけばよい。
たとえば、それがティーンエージャーの女の子だとしたら、
想像してみよう。
買い物はどこでしてるのだろうか?
人気の歌手は誰だろうか?
そういえば、親の言うことには耳を傾けないなあ。
などなど。
どんどん想像できるはず。
こうやって、ターゲット・カスタマーをたくさん俎上にあげ、検討、選定していく。

さて、ターゲット・カスタマーが決定したら、次はホールプロダクト理論により部隊を集結し、戦線を見極める。
そのなかでも、ターゲット・カスタマーへのメッセージ
「ポジション・ステートメント」
が印象に残ったのでを紹介する。
顧客には製品をシンプルに説明できないといけない。
以下の空欄を埋めるくらいシンプルに。

この製品は
「 ① 」で問題を抱えている
「 ② 」向けの、
「 ③ 」の製品であり、
「 ④ 」することができる。
そして、「 ⑤ 」とは違って、
この製品には、「 ⑥ 」が備わっている。

ポジション・ステートメントを作成するときに大切なことは、
「何を盛り込むか」ではなく、「何を捨てるか」ということ。
スティーブ・ジョブズの
「1000の可能性にノーという」
に通じる。

そして、あとは作戦の実行だ。
市場、販売チャネル別に攻略法、
そして、無事キャズムを超えた後のことなどが詳細が述べられている。

最後に、
キャズム超えって、
そもそも新しい市場だから、前例はないし、データもないから、とてもリスキーだ。
そういった市場を攻略するのだから、数値ばかりに頼ってはいけない。

結局は、
「キャズムを乗り越える」という強い情熱

「顧客はだれか?」という想像力、直感
につきる。

豊かな想像力を持つには、今までの人生で
どれだけ、社会に、市場に、感心を持ってきたかということ。
どれだけ、いろいろなことに興味を持ってきたかということ。
月並みな言葉でいうと、どれだけ高感度なアンテナをはってきたかということ。

だから、いまさら想像力を持てって言われてもねえ。
そうはいっても、今からでも遅くない。
日頃から、
自分の頭で考えること。
同質的な集団に浸らないこと。
いろいろな人間に会うこと。
多様な価値観に耳を傾けること。
それらを心がけるだけでも、昨日とは違う世界が見えてくるはずだ。

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