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正月なので、たまには未来のことを考えてみよう〜『2050年の世界 英『エコノミスト』誌は予測する』を読んで

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正月なので、未来のことを考えた本を読んだ。

 

3年前の本なので、人工知能、ロボットなどへの考察が少ないところが気になるけど、それらは別の本で補完しようと思う。

 

身も蓋もないことをいうと、今から35年後の世界を予測するなんて、まず不可能だろう。

今から35年前の1980年を考えてみればわかる。

ソビエト連邦、東西冷戦、ベルリンの壁、スマホはおろか携帯電話もインターネットもない時代。

そんな35年前の人たちが今の時代を予見できようか?

35年前は、核戦争、ハルマゲドン、世紀末的・悲観的な予言ばかりで、しかもそれはことごとくはずれている。

 

なぜ、予言は外れるのか?

1つは、良いニュースは目立たず人々の記憶に残りにくいため、悪いニュースだけが残ってしまう。

もうひとつは人間が対策を講ずることを無視しているからだ。

資源が枯渇する、食糧が枯渇する

どの時代でも言っていることだが、そういう悲観論は技術革新を無視している。

 

 

とはいえ、未来を考えることは無駄にはならない。

未来を考えるということは、現在を考え、現在の問題点が浮き彫りになるからだ。

 

本書でとりあげるテーマは幅広い。

 

人口ボーナス、病気、女性の機会、SNS、言語と文化、宗教、温暖化、戦争、民主主義、高齢化、新興国、グロバリゼーション、貧困、創造的破壊、バブル、科学、宇宙開発、IT

 

などなど

 

 

どれもとても興味深いことばかりだが、そのなかから、私が特に興味を持った 「高齢化、新興国、イノベーション」について抜粋する。

 

 

 

高齢化

 

世界的な高齢化によって、多くの国で財政危機が起こるが、本書では高齢化については、楽観的な見方をしている。

たしかにこのままいけば国家は高齢化によって破綻するが、それは、あくまでも「このままいけば」の話。

人類はバカではないので、バカな選択はしないだろうという楽観的見方である。

 

 

本書から抜粋 

・膨張していくばかりの国家に関する予測は、たとえやりくりしきれなくなっても以前のままの制度が続くという大ざっぱな仮定の上に立っている。しかし、寿命がどんどん延びても通常65歳という一定の年齢で公的年金を受給できると定めた戒律があるわけではないし、納税者が基礎年金より多くのものを提供することを、年金受給者が憲法上の権利として当てにできるわけでもない。国家はみずからの義務を定義し直して、未来の出費を抑えることができる。

 

・改革全体の主眼は、労働者に対する年金受給者の割合が高齢化で増大する際に、給付金を制限することで、年金の掛金率の上昇を食い止めることにある。2050年の国家は、老齢者の貧窮を防ぐための最低給付額の保障に力を注ぐだろう。恵まれた人たちは、自分で私的な蓄えから不足分を補うことを期待される。

 

・打開策のひとつは、個人が定額自己負担を通じてもっと私財を提供することだろう。この手の改革は、貧困者や慢性病患者への免除措置も含め、慎重に案出されなくてはならない。しかし、優先すべきは保健医療における選択と競争の拡大だ。IMFのある研究から、市場メカニズムの強化こそが保健医療支出の過度の伸びを抑制する最重要手段であることがわかっている。

 

人口構成の高齢化につれ、若者より老人にお金をかけることを好むような政治的偏向が生じるだろう。しかし、賢明な国家ならその逆を行く。なぜなら、実際にはそれが万人を支援するための最善の方策だからだ。成長は何よりも、より熟練した労働人口を有することから生まれる。その人的資本の土台は間違いなく教育なので、国家は学童にかかる費用を肩代わりし、大学生にかかる費用を一部負担し、貧困層の成人が新しい技術を磨くのを手助けする。

 

2050年の国家の姿は、それまでの数十年の政治によって決定する。老齢の有権者が政治的影響力の高まりに乗じて勝手なまねをするという、悲観的な見かたもある。もしそうなれば、悪夢のごとき未来像が現実のものとなろう。しかし、投票は私益のみを目的とするものではないし、老齢者は常に子孫と未来に心を配るだろう。改革がなぜ必要なのかを政治家が説明できれば、2050年の国家はより機動力のある、適応性に富んだものとなるだろう。

 

 

 

 

新興国

 

新興国はますます発展する。

それは、後進国の方が、生産性の改善の余地が多く、あっという間に多くの成果を上げることができるからだ。

先進国はインフラが整備され過ぎているので、過去のしがらみもあって、それらを刷新することが難しい。

一から始めるほうがやり直すよりも簡単なのだ。

 

本書より抜粋

・フィリピン、エジプト、メキシコ、インドネシア、バングラデシュ、パキスタン、ナイジェリアなどの新興国で、教育年数が2050年までに著しく延びて、生産性の高い労働力をその国に生み出し、経済成長をあと押しする。

 

・今後40年間にひとりあたり実質GDPが最も大きく成長するのはアジアの発展途上国(4.7パーセント)で、サハラ以南のアフリカ諸国(4.4パーセント)、中東と北アフリカ(3.9パーセント)がこれに続く。

 

・一番蓋然性の高い最初のシナリオで考えると、最も重要な地位を世界経済で占めてくるようになるのはアジアの経済で、2050年には、世界の半分がアジア経済となる。

 

・しかし、その中で日本は相対的に、急速にプレゼンスを失っていく。

2010年には、世界経済の5.8パーセントを占めていた日本のGDPは、2030年には、3.4パーセントになり、2050年には、1.9パーセントになる。

経済成長のスピードも西ヨーロッパを下回り、今後四十年を通して、1.1から1.2パーセントで推移する。

その結果、2010年には、アメリカの7割あった日本のGDPは、2050年には相対的に58.3パーセントまで低下する。

 

 

 

 

創造的破壊(イノベーション)

 

本書より抜粋

・これからのビジネス界では、創造的破壊の嵐が──おもにいい方向へ──いっそう猛威を振るう。 予想もしないような技術革新は、これまでのビジネス環境を一変させることに。

 

・科学は、権威に従うのではなく挑むことで進展する。今のところ非西洋では随一の技術大国である日本でさえ、本格的な基礎科学の研究は立ち後れている。日本人研究者で科学部門のノーベル賞を受賞したのはわずか15人。それは、例えばオーストリアの受賞者数よりひとり多いだけ(オーストリアの人口は日本の人口の7パーセント以下)で、その理由のひとつとして、日本の若手科学者が先達の理論に迎合しがちなことがしばしば挙げられる。これに対して欧米では、旧来の理論を否定することでキャリアが築かれる。

 

・欧米諸国が苦労してやっと獲得した、科学の繁栄につながるリベラルで知的な環境を新興国でも実現できるなら、その国は科学の面ばかりか社会的、政治的な面でも繁栄するだろう。もし実現しないなら、あるいはできないなら、彼らの行く末には日本と同じ運命が待ち受ける。つまり、ぬるま湯のような暮らしの中でぼんやり日を過ごし、真に新しいことには気持ちが向かなくなるのだ。日本のこの現状に鑑みれば、科学者たちが民主的で序列にとらわれないインド(伝統的に数学に強いもうひとつの国)のほうが、永遠のライバルである権威主義的な中国より前途有望だと言えるだろう。

 

 

 

 

 

全体的に楽観な予測が多いなか、日本の未来については、とても悲観的である。

その主因として、権威に挑戦することを自己規制する国民性が挙げられているところが、残念なところだが、否定できない。

 

エコノミスト記者からの痛烈な日本衰退論に対し、本著の翻訳者は、日本の課題は、「起業家精神とグローバル・リテラシーである」と述べている。

 

 

 

 

さて、翻って自分のことを考えてみる。

そこには、ぬるま湯にどっぷり浸かってる自分がいる。

 

わかってるんだけど、ぬるま湯はとても居心地がいい。

湯船からでたら、寒いし、風邪ひきそうだし。。。。

 

 

 

 

 

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