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饅頭が地球を覆い尽くす前に。。。 〜『機械との競争』を読んで

公開日: : 最終更新日:2018/01/09 人工知能, , , ,

 

 

テクノロジーは神様からの贈り物である。これは、おそらく命の次にすばらしい贈り物だ。テクノロジーは文明、芸術、科学の母である。

──フリーマン・ダイソン(アメリカ合衆国の物理学者)

 

 

 

 

 

ドラえもんのひみつ道具に、「バイバイン」という、かけたものが5分ごとに倍になるという液体状の薬がある。

おやつの饅頭が1つしかないことに不満だったのび太は、バイバインを饅頭にかけ、何個も何個も食べて満足を得たが、食べきれなくなった饅頭は増殖を続け恐ろしい事態に発展した。このままでは、饅頭は2時間15分で1億個を超え、1日で地球を覆い尽くす。。。

 

数年前のベストセラー「機械との競争」を読んで、ふと、ドラえもんのこの話を思い出した。

 

 

機械との競争
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コンピューターの指数関数的な進化はバイバインのようだ。

 

普通の一般人は、今まではコンピュータの進化に大して気にもしなかった。

ムーアの法則? なにそれ、おいしいの?

新しい技術が開発されるたびに、さほど驚かず、その恩恵を当たり前のように受けてきた。

 

しかし、饅頭が増えるスピードにそろそろ人間がついて来れなくなってきた。

 

人工知能が初めて自分より高性能な人工知能を作ることに成功するときを「特異点(シンギュラリティ)」といい、それが2045年に訪れるという説を最近よく聞く。

映画ターミネーターのスカイネットが実現するという突拍子もない話だが、ホーキング博士やビル・ゲイツ、イーロン・マスクが警告を鳴らしていることから、夢物語ではないのだろう。

 

まだ、饅頭の存在はだれにも知られてないので、実感は沸かないが、指数関数的な進化は、あっという間に私たちを飲み込むだろう。

私たちが饅頭の存在に気づくのはこれからなのだ。

 

すでにその兆候は現れている。

 

 

 

新しい技術革新が起こると、それによって失業する人間、既得権益を失う人間は猛反対する。

産業革命時のラッダイト運動のように、機械を壊しまくる。

今でも、UBERの車を襲撃するタクシー業界の人がいたりする。

 

そういう話を聞いて、バカだなあと思う。

だって、技術革新により淘汰された産業のかわりに、新しい産業が生まれるからだ。

地球上の誰もが技術の進歩の恩恵を与えられるはずだ。

 

そう、つい最近まではそうだった。

 

近年はどこか違和感を感じないだろうか。

景気循環に関わらず、技術革新に関わらず、貧富の差は拡大する一方だ。

中間層が不要になり、裕福な人間はより裕福になり、そうでない人間は貧しくなっている。

 

本来は人間を豊かにするはずのデジタル技術の進化のペースがあまりにも速くなったため、人間の能力が追いつけなくなったためだと本書は主張する。

デジタル技術の恩恵を受けるわずかな人間に富は集まる一方で、その他大勢が貧しくなっている。

コンピュータが人間の領域を侵食することにより、雇用は減り、その減った雇用は、高所得を得られる創造的な職場と、低賃金の肉体労働に二極化する。

 

 

そろそろ饅頭の増殖の恐ろしさに皆気づきはじめた。

 

 

では、どうしたらよいのか?

 

本書では、機械と対決するのではなく、協調することだという。

 

産業革命時に蒸気ハンマーとの掘削対決で勝利はしたが消耗して死亡したジョン・ヘンリーの伝説が暗示するように、機械との直接対決で人間が叶うわけはない。

それよりも年々優勝タイムが更新されるインディ500のように機械を味方につけるべきなのだ。

機械との直接対決をやめ、機械と手を携えて競争を始めたら、事態は興味深い方向に展開していくだろう。

コンピュータは定型的な処理、反復的な計算、一貫性の維持といった面では圧倒的に強いが、決められたこと以外はできない。直感も創造性も備わっていない。

人間はまさにコンピュータが弱いところに強い。

よって、お互いにすばらしいパートナーになる可能性は十分にあると著者は述べる。

 

 

本書の主張は楽観的だが、果たしてそうなのだろうか?

 

 

私も技術のスピードについていけない哀しい中年だ。

饅頭が地球を覆い尽くしていく事態に対して何もできず、ただ傍観し、座して死を待つだけだろう。

しかし、前途ある若い人にとっては、道を誤らなければ、素晴らしい未来が待っている。

これから成人する若者、就職活動を控えた若者へ、本書記載の以下の言葉を伝えたい。

 

大学を出たら毎日上司にやることを指示されるような従来型の仕事に就こうなどと考えていると、いつの間にか機械との競争に巻き込まれていることに気づくだろう。上司のことこまかな指示に忠実に従うことにかけては、機械の方がはるかに得意であることを、ゆめ忘れてはいけない。

 

 

 

 

 

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