NT加賀に出展しました。 〜メイカーイベントはSTEAM教育に繋がる
2018年12月15日、16日と、「NT加賀」というメイカーイベントに出展しました。
NTとは?
NTとは「ニコテック(ニコニコ技術部)」の略で、ニコニコ動画で工作や技術、ソフトウェア開発等に関する「製作系」動画を作っている人達のことです。
当初は動画だけでしたが、2008年大阪の高槻で開催されたニコニコ技術部関西勉強会を発端に、実際に展示するようになり、全国各地でNT◯◯と名乗るイベントが発生しました。
以降、NT名古屋、NT京都などの展示会、海外のMakerFaireに共同出展するNT台北、NT深圳、NTシンガポールなどの活動を合わせると、過去10年間で50以上のNTイベントが開催されています。
NT加賀、NT金沢はニコテックの流れを汲んでいますが、NTはニコテックではなく、「(N)なんか(T)つくってみた」の略で、技術的に尖った人だけでなく誰もが参加できるという思いが込められています。
なぜ行ったのか?(背景・経緯)
Maker Faireのようなメイカーのイベントに出展したといっても、一般ピーポーには、ただの個人の趣味の展示会としか認識されないことが多いですので、まず最初にメイカーイベントの凄さ、ここに至るまでの経緯を述べます。
2012年の世界的ベストセラー クリス・アンダーソンの「MAKERS」でハードウェアの世界でもロングテールの時代が来ると言われ,6年経った今やっと世界的なムーブメントになった感があります。
インダストリー4.0のような産業ベースの話ではないですし、「スタートアップだぜウェーイ!」的なものとは違いますので,ビジネスマンや意識高い人たちの視野には入ってきていませんが,昨今のIoTブームと同じくハードウェアのオープンソース化,クラウド化の流れが法人だけでなく個人にも起こっています。中国の深圳を代表するように今日のイノベーターは、オープンソースのデザイン、プログラムと3Dプリンタを使い、ハードウェアで世界の産業構造を変えようとしています。我が国の電子部品販売会社「スイッチサイエンス」では,メイカーズが制作したプロダクトの委託販売実績が,5年前にくらべ総売上が約10倍も拡大しています。
こういった「自分が作りたいものを、自分の手で作る」メイカームーブメントは、世界的な流れとなり、世界各国でメイカーズの展示イベント「Maker Faire(メイカーフェア)」が開かれています。Maker Faire東京2018にはプロアマ混合の出展が約600ブース,2万人を超える来場者を集めました。(私も出展しました)
我が国でのメイカーズのイベントは,最大規模のMaker Faire 東京を筆頭に,Mini Maker Faire 大垣(来年5月には京都開催、数年後にはつくばも予定)、つくるシリーズ(横浜,大阪,福岡など),NT(名古屋、京都、金沢、加賀など)があり,個人のメイカームーブメントを支えています。
また,昨今のSTEAM教育への注目から,メイカーズのイベントには,小学校から大学などの教育関連の出展やワークショップも増えています。 私は11月に出展したMakerFaire台北で、香港の小学生が自信満々に私たち外国人に自分のプロダクトを説明する様子に驚きましたが、東アジアでは当たり前の光景のようです。
そのMakerFaire台北でNT加賀の運営責任者から刺激を受け、広島でのNTを開催することになりました。
NT広島をやると言ったはいいが、今までこのようなメイカーイベントをやったことはなく、何をどうやってらいいかは不安だらけでした。
金沢大学の秋田教授のマッハ新書のおかげで随分不安は解消しましたが、
Make的イベントをやってみた経験とそこでの知見から、他でも似たイベントをやるときの参考になればと思い、NT金沢のオープンソース化の一環で、共著で #マッハ新書 を書いてみました。「NT金沢をやってみた ~Make的イベントのやりかた」 #NT金沢 https://t.co/1wfgfGLuNY
— akita11/JunichiAkita (@akita11)
NTのことを肌感覚で理解するため、直近にあるNT加賀に参加することにしました。
GO!
広島を始発6時の新幹線に乗り、新大阪から特急サンダーバードに乗って、人生初の北陸へ。
このような機会がないと、加賀に行くことは一生なかったと思います。
広島から会場近くの加賀温泉駅まで4時間かかります。これは広島から東京に行くのとほぼ同じです。
北陸って広島人から見ると、すごく遠い地だと思ってましたが、意外に近いです。
しかしながら、ゆっくり旅情を楽しんでる暇はなく、サンダーバードの中で到着ギリギリまで開発してました。
さて、加賀温泉に到着!
巨大な観音像がお出迎え。
めちゃシュール。
会場は加賀温泉駅前のアビオシティ加賀というショッピングモールの中です。
僕のブース、セット完了!
さあ、頑張るぜ!
展示作品
個人的に印象に残ってるのを一部ご紹介。
写真を撮り忘れたのは、他の方のツイッターを引用してます。どうかご了承ください。
光るスカート
テクノロジーとファッションの素敵な融合。素晴らしい。 #NT加賀 pic.twitter.com/SvnlbHr6gc
— たつや@12/15-16NT加賀 (@tatsuya1970)
光るスカートは、このAkipartyの記事を見て以来、ずっといつか見たいと憧れてました。
同じ記事で紹介されてたカサネタリウムも。
今回は傘ではなく、剣だったので、最初MakerFaire東京で話題になったエクスカリバーかと勘違いしました。
カサネタリウムと同じ作者さんの
光るお面
同じ作者さん、もう1つ。
「心拍を電球に保存する装置」
この方の想像力は素晴らしい。
お次は、別の方の作品をご紹介。
ヒューズ管工作 (NT広島にも来られます)
TLで眺めていたものを実際に見れて感動!#ヒューズ管工作#NT加賀 pic.twitter.com/K3KyJvZNPt
— MOD0 T.W. (@0TechWorks)
綺麗な電飾!
この電飾のパターンの制御は画期的な方法を使ってるらしい。
説明を聞いたけど半分くらいしか分からなかったけど、すごかった。
#NT加賀 のakira_youブースの設置状況 サイズ感が店にちょうど良かった pic.twitter.com/wbG5EXCWbs
— akira_you (@akira_you)
7セグでこの表現。
これもすごい。(ボキャがない)
これすごいよね・・・ わかるかな #NT加賀 pic.twitter.com/xZZB1zPDrc
— いまかみ (@imakami)
初音ミクが360度から見える。
サイリウムを振ると、星が流れたりする。
紙製のプラネタリウム
紙製のプラネタリウム。2000個の穴を空けたらしい。これすごい!! #NT加賀 pic.twitter.com/w4ZB85qr2o
— 湯村 翼 Tsubasa YUMURA (@yumu19)
手作りプラネタリウム
これはすごい!(ボキャなさすぎw)
迫力の3D演出に子供がビビってた。
(NT広島にも来られます)
習字ロボット
達筆なロボットアーム!
最初にロボットアームを手で動かして、その時の角度を記録して、その角度を再度再生してるそうです。#NT加賀 pic.twitter.com/TVD6n7meMd— カサネタリウム @NT加賀 (@kasanetarium)
楽器演奏ロボット
(NT広島にも来られます)
鍵盤ハーモニカ自動演奏
LED + Arduino のペンダント。
非売品、売ってたら絶対買う。
NT名物、抵抗コースター!!
(NT広島にも来られます)
電動インラインスケート
LEDモニターがついたカバン
(ドット絵アニメーションが流れる)
そーてっくさんのかばんちゃん、相変わらず綺麗に見える!#NT加賀 pic.twitter.com/LLnZ5tkXuX
— カサネタリウム @NT加賀 (@kasanetarium)
中身を見せてもらった。
そもそもカバンの機能なくしてるしw
自作の実験用マウスのMRI
(実際に病院で使われてた)
話声が大きくなるとパトランプが警告
会議のコストを可視化。
うちの会社に欲しい。
照度センサーでトイレの空き状況がわかる。
これも我が社に欲しい。
ウォシュレットをハッキング!
発想がすごい!
名前が秀逸「ウンコジャマー」
超音波センサーにより、
近くによると不気味な声を出す人形
知らなかったら絶対ビビると思う。
安定の前骨格のスケルトン
MakerFaire台北でもお会いしましたが、どこでも子供に大人気。
お城と3ショット! #NT加賀 pic.twitter.com/aP9FFcU91l
— その辺の人 (@create_clock)
最後に、
今回一番感動した作品。
筋電センサーで車椅子を操縦する。
奥歯を噛むことで操縦できる。
最近ALSの方々がロボットを操縦するカフェが話題になりましたが、まさにこういったテクノロジーの素晴らしさに感動を覚えました。
ショッピングモール内をパレードをしました。
とてもシュール。
ショッピングモールの下着売り場前に現る魑魅魍魎 #NT加賀 pic.twitter.com/W4vG5SXQVa
— 五味 (@GomiHgy)
#NT加賀 仮装行列 pic.twitter.com/iBNcwgj85X
— めむくろ (@MEMchro)
所見
(1)STEAM教育
NT加賀は,展示だけではなく、メインステージでは、殺陣、大道芸人などのパフォーマンス、テクノロジー関連の講演、トークセッションとジャンルごった煮の催し物が行われていました。
トークセッションでは,シンガポール・サイエンスセンターのTan所長,イチゴジャムの福野泰介氏,micro:bitを日本に普及させたスイッチエデュケーション代表取締役小室真紀氏,スイッチサイエンスの高須正和氏,金沢大学の秋田純一教授,呉高専の宮本先生などが登壇されました。
私は自分の出展が忙しく、トークセッションはスイッチエデュケーション代表取締役小室真紀氏のセッションだけ見ました。
STEAM教育は子供の自主性にまかせ,子供が自分のアイデアを形にするための過程(調べる ⇒ 作ってみる ⇒ 失敗する)を繰り返し,最終的に発表(人前で自分の言葉で誰かに伝えてみる)することで大きな学びを得ることができます。これは私も個人的にとても納得するもので,自分の手を動かすことでテクノロジーを肌感覚で理解でき,オープンな場所で発表することで多くの人からのフィードバック,他の出展者から大きな刺激,次の作品製作へのモチベーションにつながっています。
(小室氏のスライド資料より)
(写真)小学生のMicro:bitの作品展示(NT加賀)
来場者にとっては、大手家電メーカーの完成品ではなく、チームラボのような洗練された作品ではなく、自分でも作ることができると思うことが重要だと思います。人間は見たことないものには想像を及ぼすことはできませんが,自分の目で見たら心のブロックが外れます。自分もその気になれば作れるのではないかと。
メイカーズのイベントの出展作品は最先端の技術ではないですが,元任天堂の横井軍平氏のいう「枯れた技術の水平思考」なアイデア溢れる作品や技術の無駄遣い的な作品,クラウドファンディングで起業を狙う作品など,個人でも面白いプロダクトが作れることを目の当たりにでき,自分でも何か作りたいと思う人間を増やし,ものづくりの裾野を広げることができると思いました。
「一番いいイノベーションは趣味、ホビーとしての世界で、考えるよりも本能のままに作ることから始まる」
「イノベーションを生み出すのは“Play”、あくまで遊び感覚からだと思っている。アイデアを思い付く最初の段階で、『ビジネスとして、成功するか、失敗するか』なんて考えていると、新しい発想は出てきづらい。『俺の作ったロボットを見て、ビックリした人が、どんな顔をするかな?』みたいなことをスタート地点にしている。」
(デール・ダハティ /「Make:」ファウンダー)
引用
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1206/08/news138.html
(2)ツーリズム効果
NT加賀は,加賀市が資金を負担しています。イベントだけでなく出展者の宿泊補助もあり,加賀市の温泉旅館の宿泊費を先着70名に一部負担(通常2万円のところを6,000円,私は定額で宿泊)しています。旅館で行われた懇親会という名の宴会には、加賀市長が乾杯の挨拶および出展者へ酌をして回っていました。私は残念なことにトイレで中座して市長への挨拶を逸しましたが。
市長といえば思い出すのが、ウフル主催の地方都市でのハッカソン(伊那市,人吉市など)でも市長が挨拶や審査員をしています。地方の田舎なのに全国からエンジニアが集まっています。自分のスキルを披露・発揮できる場があれば,エンジニアは旅行を兼ねてどこにでも行くようです。(全員が全員ではないと思いますが)
NT加賀の出展者の半分は,北陸以外(東京,名古屋,関西,沖縄など)から来られていました。他のNTも同様です。MakerFaire台北,MakerFaire深センには日本から30人くらいの出展者たち(来場者を入れると100人はいるのでは?)が、わざわざMakerFaireを主目的として渡航しています。
これは僕の思いつきですが、メイカーイベントのついでに旅行をするといったメイカーイベントツーリズムというのも成立するかもしれません。
(3)最後に
Googleのラリー・ペイジがかつて言ったようにアイデアだけに価値はありません。映画「ソーシャル・ネットワーク」のようにアイデアを実装したもの勝ちです。現在は、RaspberryPiなどのマイコン、センサー、クラウド、3Dプリンタが安価に利用でき、オープンソースのプログラムがネットで入手できる時代であり、とりあえずプロトタイプを作ってみて失敗するコストが低くなっています。
一方で、エンジニア不足、STEAM教育が重要だと言いながら、大手SIerのように実態はエンジニアを人月という歯車としか見ず、エンジニアに対するリスペクトの無い状況を放置していたら、ますますアメリカ、中国、インドなどとの差が広がることでしょう。
子供の頃から、物を作る人がかっこいいと思われる、自分の作品を見た大人にすごいねーって言われる。そんな身近にものづくりやプログラミングに囲まれた環境構築が重要です。
メイカーズの展示会は、単なる個人の趣味の範疇を超え、STEAM教育に繋がり、エンジニアの裾野を広げるものだと僕は確信しました。
NT広島へ
ニコニコ技術部の過去の作品を展示してるブースがありました。
そこにはNT広島のことが記載されてました。
(赤いマーカーは私が画像加工)
ニコニコ技術部の歴史にNT広島が刻まれようとしてます。
NT広島
ただいま、ブース出展募集中です。
よろしくお願いします。
詳細はこちらまで。
http://j.nicotech.jp/nthiroshima2019
資金面の支援もよろしくお願いします。
個人の方(300円から)
https://polca.jp/projects/Zuhn923zg9N
法人の方への協賛資料(1万円から)
https://docs.google.com/presentation/d/1PtT8UA3PYfJsv–HLe3tV-qmhtq4FUupQufyw5msl34/edit?usp=sharing
それでは、2月2日、NT広島でお待ちしております。
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