映画『万引き家族』を観て(ネタバレあり)
(注意)ネタバレあり
カンヌ映画祭でパルムドールを受賞した「万引き家族」をみた。
私は、是枝監督の映画は、
「歩いても歩いても」
「そして父になる」
2本しか観てないけど、
その2本とも「家族とはなんぞや」というテーマで、観る者の心をエグってくる。
それも、テーマをゴリゴリに押し付けることなく、自然な描写で、静かに心をエグってくる。
本作も同様に、静かで淡々とした展開なのだが、児童虐待、年金詐欺といった現代社会の忌まわしき事件を背景に、不穏な空気が流れ、なんとも言えないやるせなさが心を突いてくる。
登場人物の背景などの説明が全くないから、脳はそれを補うために、画面・セリフに集中し、想像力が掻き立てられる。
是枝監督の映画は、観客に行間を読まさせる。
物語が進行する中、登場人物の会話、仕草、画面の様子から、徐々にいろいろなことが判明する。
最初、私は、リリー・フランキー演じる男の目線からこの家族に良い感情を持って物語に没入した。後半、ある真実がわかった途端に、私の脳は善悪の二次元論で語れないことに混乱した。
結局、この物語の真相の全ては明確に提示されず、観客に委ねられる。
映画中盤で冗談っぽく、リリーフランキー演ずる男が、万引き家族は「お金で繋がった関係」だと言う。その時は冗談だと気に留めてなかったあの台詞が伏線となって、後半で色々とグッとくる。お婆さんも、その他の人たちも、結局はお金だったのか、いや違うとか、心をかき乱される。
万引き家族は、弱い者たちが寄り添い、お金でつながれている疑似家族だったにかもしれないけど、実の家族以上に幸福だったように見えた。
だが、その幸福は永遠には続かない、いつかは壊れる脆いものだと、万引き家族の少年は心で理解してたのだろうか。
少年は、ある行動をとって家族を崩壊させ、それをリリーフランキー演じる男に告白する。告白後の毅然とした態度が男にとって残酷なシーンだったが、過去と決別し自分の未来を生きることを選択した少年の毅然とした態度に希望を感じた。未来は子供達の手にあるものだと。
そしてもう1人の子供はどうだったのか。
少年とは対照的に、少女は再び虐待のある救いようのない現実に戻ったかのように見える。
少女は何かに気づくが、映画は唐突にそこでプツリと終わる。
彼女の目には何が見えたのだろうか。
僕は、希望が見えたと思いたい。
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