『広島県版 新型コロナウイルス感染症対策サイト』を運営してみて
公開日:
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最終更新日:2021/01/05
CivicTech, GitHub, オープンデータ, コロナ 広島県版, 広島県版新型コロナウイルス感染症対策サイト, 新型コロナウイルス感染症対策サイト
全国で新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言が解除された最初の週末を迎え、ひとまず第一波が過ぎた感でほっとしている。
コロナ禍の最中は、自治体の関係者には知ってる方も多いので、批判と捉われてはいけないし、逆に迷惑になるのではと思い話題を避けていたが、落ち着いた今だから、私が関わった「広島県版新型コロナウイルス感染症対策サイト」について書いてみた。
実は、東京都が ※GitHub にオープンソースとして公開している「新型コロナウイルス感染症対策サイト」の広島県版は一応私が作った。
私が作った広島版は「対策サイト」というほど対策するような内容ではないので、今は「情報サイト」に名前を変えた。
※GitHubとは、プログラムのソースコード、更新履歴を管理する世界標準のウェブサービスである。システムを共同開発するには必須といえる。
東京都の新型コロナウイルス感染症対策サイトのソースコードをフォークして作成したといえば聞こえがいいが、分かりやすくいうと東京都のをコピペして広島県版に直した程度なので、作ったという表現は言い過ぎかもしれない。
それでも14時間もかかったけど。
※なお、いつの間にか広島県の公式サイトが立ち上がっていたことから、本サイトはその役目を終え、2021年1月4日に閉鎖しました。
経緯
2020年3月4日、Code for Japanという団体が、東京都の新型コロナウイルス対策サイトを立ち上げ、そのソースコードもGitHubで公開した。
東京都の新型コロナウイルス対策サイト
https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/
GitHub
https://github.com/tokyo-metropolitan-gov/covid19
さすが東京都、そういえば副知事はもとヤフーの社長だったよな、凄いなーって思った。
その後、北海道、神奈川県、三重県など続々と東京都のコードをもとに各都道府県の新型コロナウイルス対策サイトができて行く様子が聞こえてきた。
台湾のIT大臣オードリー・タン氏が参加するなど、データやコードをオープンにすることで、すごいムーブメントになっていく様子をワクワクして見ていた。
この時点では私は傍観者で、GitHubで共同開発なんてその道のプロがするもので、広島版はそのうち誰かが作るだろうって思っていた。
で、10日たっても、広島でそのような動きが見えない。
「広島県版、誰か作らないの?」
って、SNSで呟こうと思ったが、
私ならそんな投稿見たら、「そういうお前が作れば」って答えるだろうから、自分で作ってみることにした。
その後、誰かがもっといいものを作れば、譲ればいい。
個人的にはGitHubの練習になるし、その道のプロが作った生きているコードを見るのはすごい勉強になると思い、チャレンジした。
ちなみに、私はエンジニアでも何でもない、普通のサラリーマンだ。趣味でプログラミングをする程度のど素人だ。
まあ、なんとかなるだろう。
どうせ、「東京都」ってところを「広島県」に直したり、データの参照先を変更するだけでそんなに難しくないだろうとタカを括ってた。
・・・・・・。
舐めてた。
ど素人には、すごく大変だった。
結局14時間もかかってしまった。
完成した時、すごく嬉しかったのか、思わずfacebookに投稿した。
この時は、すごくやり切った感があった。
この投稿は、スイッチサイエンス の高須さんの目に留まり、日経ビジネスオンラインで紹介していただいた。
「問題点を自分事と捉え、手を動かして解決する」アプローチは、職業としてのエンジニアを超えて広がっていると感じる。
誰でも当事者になることができ、関心がある問題には自分自身でコミットし、解決する仕組みを自分で作り出す行動は、フルタイムのエンジニアに限ったものではない。
過分なお言葉を頂いたが、まさにこの通りで、昨今は、ツールやウェブサービスが充実しており、何かのデータをどこからか取ってきて表示させるようなサイトは、素人でも作ることができる。
机上で考えキレイなパワポにまとめて会議で合議を得て外部のITベンダーに開発させるなんてことしていたら遅すぎる。
例えば、コロナ禍によって飲食店がテイクアウトにシフトしたが、その情報が整理されてないので、どこのお店がどんなメニューをテイクアウトしているのかよく分からないという声を聞く。
それを「誰か作ってくれー」ではなく、欲しいなら自分で作るのが現代のアプローチだ。
非エンジニアでも問題を自分ごとに考えて解決しようとする意思があれば、この「東広島テイクアウトマップ」のようなアプリを作ることができる世の中だ。
メンテナンス
作ったら、終わりではない。
これからが大変だった。
私はエンジニアではなく普通のサラリーマン。
そもそもGitHubでチーム開発なんぞやったことはない。
プルリクや issueがたつたびにビビった。
※ プルリクとは、Pull Requestの略で、コードを修正したからよかったら反映してねーというリクエストのこと
※ issueとは、提案や要望の書き込みこと
私なんかより、広島版のサイトの運営にふさわしい人はたくさんいる。
私が「広島の運営者」ってことには、不相応で申し訳ない気持ちになることもある。
誰か別の人が運営をした方が、もっと素晴らしいサイトになるだろうと本気で思う。そういう人が現れたら、いつでも譲りたい。
そして、毎日のメンテナンスが大変だった。
毎日自治体のウェブサイトに公表される情報を「新型コロナウイルス感染情報サイト」に更新する作業だ。
当初、毎日広島県庁のサイトを目視したものを、自分のデータベースに手作業で入力していた。
当初は感染者が1日1人いるかいないかだったので、手作業で十分足りていたが、いつかクラスターが発生した時は人力では無理だなと思っていた。
そんな状況をFacebookに投稿したら、それを見かねた mmorito さんが、pythonでスクレイピングのプログラムを組んでくれた。
これは、自治体のウェブサイトに書いてある情報をウェブスクレイピングという技術を使ってデータを取得することができるプログラムだ。
つまり、今まで手入力してたのが、プログラムの実行コマンド python main.py って打てばいいだけになった。
おお、
これがGitHub上の開発というものなのだ。
これが、オープンソースの開発というものなのだ。
と感動した。
と、順調に思えた矢先、
広島でも感染者が増え始め、広島県の担当者もそれに追いつけず、ウェブサイトはこんな表示になった。
感染者について詳細情報の通り・・・
その詳細情報はPDFファイル
プログラマー泣かせの展開に・・・
結局、コロナが猛威をふるった最盛期は、以下のように「詳細情報のとおり」だらけで、データベースとしての利用できるようなものではなくなっていた。
他にも、ウェブサイトのレイアウトが変わったり、データを参照するリンク先が変わったりして、プログラマー泣かせの状況は続いた。
都度、mmorito さんなどGithubの住人に助けてもらったり、自力で解決したり・・・
なんのためにやってるんだろうって、心が折れかけた時は、メイカーイベントなどでお会いする山口県、熊本県、長野県など他県の方たちの活動が励みになった。
現在は、isuueが放置状態とだらしない状況になってるけど、毎日の更新は半分自動、半分手入力で、大した手間はかかっておらず、なんとかできている。
最後に
自治体のオープンデータの愚痴をつらつらと述べたが、私は自治体の”職員”を批判するつもりではない。
新型コロナウイルス感染症対策で、県民のために公務に従事した職員の方々には敬意を表する。
国家的非常時なのだから、ウェブサイトを更新することなんかより優先事項がたくさんある。現場で必死に目の前の仕事に取り組んでいる。
私のような安全地帯にいる者が上から目線で批判してはいけない。
だから職員ではなく、もっと上の立場の人間が大きな目線でオープンデータについて考えて欲しい。いや考えるだけではなく、理解し、早急に整備しなければならないと思う。
一体何がオープンデータ公開を阻んでいるのだろうか?
東京都の副知事しかり、台湾のIT大臣しかり、ITやオープンデータに明るい人材が要職に就かなければいけないのだろうか。
オープンデータにしておけば、何も言わなくても市民が自主的に(自治体職員や自治体職員が選ぶITベンダーよりも)優れたUI、UXのウェブサービスやアプリを作ってくれると思う。
いや、ウェブサービスやアプリはオープンデータの可能性の中でも小さな話で、市民の英知によってここで私が思いもつかないような素晴らしい展開も期待できる。可能性は無限大だ。
自治体職員の方々はその分、本当の公務に注力できるし、自治体と市民の叡智が結集し、諸問題を解決するスピードが加速するはずだと私は思う。
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