組織戦略の考え方
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本
日本型組織の基本や問題点を、多面からアプローチしている良書。
経営に携わる方や大企業の管理職および本部セクションの人は必見。
組織の中にいて忘れていた大事なことを気づかせてくれます。
フリーライダーへの対応、トップの決断について、奇妙な権力者への対応など
紹介したいことは山ほどありますが、
中でも一番共感した「組織の腐り方」の項を紹介します。
組織の腐り方
1.ルールの複雑怪奇化
古いルールを廃棄処分にして、新しいルールを作るという新陳代謝が起こりにくく、
古いものはそのまま残り、新しいものがその上に追加され、
その結果、古い組織ほど複雑怪奇なルールを持ってしまう。
①小者の増加
・煩雑なルールを覚えることに若いうちにエネルギーを割き過ぎる。
その結果、本当に重要な仕事の構想力や大きな視野といった能力の開発が未発達のまま放置される。
→細かい手続きには通じているが、どうみても「小者」という若手が増えてしまう。
②筋論を語ることが経営?
・ルールを守ること自体を重視する雰囲気が組織内に醸成され、
どのようなルールであれ、それがルールである限り守るべきだと信じてしまう若手が増えてしまう。
→従順なる羊の増加
・重役や部長・課長たちが、細則や派生ルールなどに基づいた筋論の戦いを興じていると、
次世代の若手たちは、「その種の議論をすることが経営をすることだ」と勘違いしてしまう。
いったんルールが複雑怪奇化すれば、
外の世界から売上と利益を稼いでくるという戦士たちが減っていき、
組織は長期衰退軌道に乗ることになる。
2.成熟事業部の罠
組織の保守本流である成熟事業部では、皆が仕事に慣れてきてるので、仕事遂行能力が余っており、
その余った時間で内向きの無用な仕事が次々と生み出されてしまう。
①内向きの仕事の増加
・成熟事業部には優秀な人材がたくさんいる。彼らはヒマなので周りの人間を批判する。
・秀才同士が批判し合っているので、批判テクニックがどんどん向上する。
・その結果、企画書の完成度が高まっていく。
[企画書の完成度の向上について]
・企画の聞き手が口うるさいので、聞き手に合わせて企画書立案側も細かいところに精を出す。
・次回提出の企画書はますます完成度が高くなる。
・完成度の高まった企画書にケチをつけるのだから、ますます枝葉末節の部分にケチをつける。
・こうして企画書の完成度はますます上がっていく。
・しかし、企画書の完成度は一定レベル以上になるとほとんど実質上の意義は薄れていく。
・99%の企画書でも99.9%の企画書でも、同程度に成功し、同程度に失敗する。
・だが、99% → 99.9%への完成度アップは仕事量としては極めて大きい。
・だから自分では「忙しく働いている」と自己満足する。
・しかしその「忙しさ」の会社への貢献度は著しく小さい。
つまり、成熟事業部は、内向きの仕事で忙しいのであって、
その内向きの仕事はヒマな秀才たちが互いに作りあっているだけなのである。
成熟事業部の忙しさは見せかけの忙しさである可能性が高い。
②「顧客の声」という罠
・ヒマな優秀層は、仕事がなければ自分で創り出してしまう。
・顧客ニーズの細かな違いを見つけ出し、次々と新しい製品改良の企画が完璧な企画書と共に提出される。
・「特殊な顧客」の「特殊なご意見」に従って、次々と製品アイテム数を増やしていけば、
知らないうちにフルライン化してしまい、規模の経済が失われたり、コア技術が薄まったり、
アイテムの多様化によって在庫回転率が落ちたりする。
・要するに、顧客の言うことを聞き過ぎて、儲からなくなってしまう。
・現場の営業マンの声が強すぎると、
「顧客の直面している問題にトータルソリューションを与える」べく、機軸を離れた製品多様化が進む。
・研究開発部門の技術者が些末な改良研究で忙しくなり、その会社本来の強い技術が枯渇する。
・金の卵を産むアイデアの源泉だったはずの中央研究所の研究員たちが、
知らないうちに些末な改良製品の開発労働者になっている会社は少なくない。
一部の優秀なプレーイングマネージャーとその他数多くの忠実な実行部隊の組み合わせの方が、
多すぎるエースたちの集団よりも効率よく働く。
だから個人よりも組織が強いというのが経営の基本だったはず。
多すぎる優秀層の配置は、内部で互いに仕事を作り合い、
混乱を作り合うという可能性があることを忘れてはならない。
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Comment
ビジョナリーカンパニーと言う本に、
「官僚制度は規律の欠如と個人の無能力という問題を補うためのもの」
と書かれている。
まったくその通りだよね。
結論としては、
「不適切な人をバスから降ろせ。そうすれば官僚制度は不要となる」
のだそうだ。
ごもっとも。
コメントありがとう。
「ビジョーナリーカンパニー」はずっと読みたいと思ってました。
今度読んでみますね。