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グリーン革命

公開日: : 最終更新日:2017/06/03

 

 

「フラット化する世界」のトーマス・フリードマンの最新作。
テクノロジーの発展により世界が平らになったと述べた「フラット化する世界」を読んで、私は価値観・世界観が一変するほどの衝撃を受けました。

本作は、「フラット化する世界」のその後、
フラット化に今日の世界の最重要課題である温暖化と人口過密化を加え、これからの人類の生きる道筋を説いている。

これからは「コード・グリーン」だと。
オバマ大統領も熟読し、政策にも反映させたといわれる。

本作は、「地球のために」とか「エコ」とかいうチープなロックバンドが掲げるような表面的なものではなく、経済的、政治的に、グリーンであることのメリットを説いている。

グリーンであることは、世界の貧困を無くし、イノベーションを加速させる。
企業、組織の競争力を高める。
それにアルカイダにも勝てる・・・

環境を扱った話は、絶望で暗くなりがちだが、本書は人間の可能性を信じた希望あふれる書である。

上下巻600ページの大作、まとめるのは困難なので、
今回は、その中で特に引き込まれた箇所を抜粋

 

 

■石油政治

・アメリカ人の石油中毒が変えたのは気候の仕組みだけでなく、以下の4つの側面で国際社会の仕組みも変えた。
①異文化に寛容でなく、現代的でない、反欧米、反女権、反多元論というイスラムの性向を強めることになった。
②ロシア・中南米などで、民主主義の流れを逆行させる。
③各国の悪い部分を批判できなくなる。
・サウジアラビア国内の女性弾圧や宗教の自由の欠如
・スーダンの残虐な独裁政権と中国が手を組む
④間接的にテロへ資金提供していることになる
・アメリカの軍隊はアメリカ人からの税金でまかない、
アメリカが石油を購入することで、間接的にアルカイダ、ハマスなどに資金援助している。
・石油中毒からの脱却は、環境のためだけに必要なのではない。戦略上の必須事項なのだ。
・アメリカの石油中毒は、地球温暖化を促進し、石油独裁者の勢いを強め、きれいな空気を汚し、民主主義の勢いを弱め、過激なテロリストを富ませる。
・地面に穴を掘るだけで政府が歳入を増やすことができる国では、自由は狭められ、教育予算は不足し、人間の発展が阻害される。
・逆に石油の少ないバーレーンや石油の無いレバノンでは民主主義が発展している。
・石油資源が豊富な産油国では、原油価格と自由化の度合いが逆相関となっている。
・原油価格が上昇すると、言論の自由、報道の自由、公正な選挙、司法の独立などが蝕まれる。原油価格が下降すると、自由化の度合いが速まる。

・中東の女性が教育を受けられず、労働力として実力以下の評価を受け、政治力を持たない理由は、イスラムではなく、石油である。
・原油価格の高騰により、通貨が実力以上に評価され、莫大な額の輸入を煽り、国内の製造業が滅びる。と同時に、女性の社会的地位が低いままになる。なぜなら、女性主体の繊維・衣料等の初歩的労働が消滅し、男性主体の土木建設業が増え、男性の力が強まる。

■エネルギー貧困
・地球上の人間の4人に1人は電気を常時使うことができない。
・南アフリカを除くサハラ以南では75%
・インド、パキスタン、バングラディッシュでは50%(農村部では90%)

・発展途上国のあらゆる問題は、エネルギー問題である。
・世界が温暖化するとき、電気が使えないと、気候変動に順応する能力が危険なまでに限られる。世界がフラット化するとき、電気を使えないと、コンピュータ、携帯電話、インターネットを使うことができない。エネルギー貧困は、世界でもっとも脆弱な人々の参加を阻むだけでなく、そういった人々の今後の貢献を、私たちから奪っている。
・フラット化した世界では、電気を使える人びとと使えない人びとの格差は、算術的にではなく、幾何級数的に拡大する。
・想像してほしい。世界でもっとも貧しい人びとの創造力や革新的な能力を、私たちが利用できるかもしれないということを。競争し、接続し、共同作業するのに必要なツールやエネルギーをあたえて、彼らに力を授ければどうなるかを。 爆発的なイノベーションが生まれるはずだ。科学、テクノロジー、芸術、文学など、あらゆる分野で、世界がかつて見たこともないようなものが。
・クリーンで信頼できる安い電気が豊富にあれば、世界で本当にフラットな競技場が創られる。世界でもっとも貧しい人びとの能力が解き放たれ、私たちが抱えている大きな問題を解決するのを手伝ってもらえるだろう。

 

■カーボン優位
・カーボンニュートラルに甘んじていいのか。「カーボン優位」を得るほうが、ずっと利益が大きい
・カーボンニュートラルは的外れだ。自分のCO2排出を埋め合わせるために、他人に金を払って木を埋めてもらう理由がわからない。企業が他人の善行に投資するのは良いことだが、自社によるもっと持続可能な手法の創出に投資するほうが重要だろう。
・気候変動は脅威ではなく。ビジネスチャンスだ。
・グリーンな企業、国、学校、都市は、もっとも優秀な人材を引き寄せる。
・グリーンパワーのソリューションを、コンセプト化し、デザインし、製造し、配備し、督励せずに、世界の指導者の地位を得ることはできない。

 

■語録
・レイプを目撃しているのと同じだ。
(マイケル・グランウォルド、アマゾンの熱帯雨林の伐採を見て)
・私たち人間は母なる自然のオーケストラでやかましいエレキギターを弾いている。
(ハイディ・カレン 気候学者)
・体重が増えると、人間は体重計に乗らなくなる。
・私たちはタイタニック号に乗っていて氷山を避けなければならないのではない。すでに氷山にぶつかったのだ。船内には海水がなだれ込んでいる。だが、まだダンスフロアを離れようとしない人びとがいる。ビュッフェで食事をすませない人びとがいる。
(ロブ・ワトソン 環境コンサルタント)
・石器時代が終わったのは、石が無くなったからではない。
・映画「スピード」を見るといい。中国はそのバスだ。年8パーセントで成長しないと中国は爆発する。
(ナヤン・チャンダ エールグローバルオンライン編集人)
・私たちは「善良な人々がどうして黒人や女性を差別していたの?」と疑問を抱く。私たちの子供たちはこう聞くだろう。「地球温暖化を食い止めるだけのテクノロジーがあったのに、どうして正しいことをやらなかったんだ?」
(ジェフリー・イメルト GEのCEO)

 

他にもグーグル参入で話題の「スマートグリッド」のことや、環境問題では避けて通れない中国のこと等読みどころ満載です。
おりしも、オバマ大統領のグリーン・ニューディールをはじめ、世界中でグリーン革命が起きようとしています。
今は人類の歴史の転換期なのかもしれません。
グリーン革命によって、本当の「フラットな世界」が実現し、個人の能力が有効に使える世界になるためにも、我々には不断の努力が必要なのです。

 

 

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  1. グリーン革命

     「温暖化」、「フラット化」、「人口過密化」する世界でアメリカは何をすべきかを示唆した本が、この「グリーン革命」である。作者は、「フラット化する世界」で有名なトーマス・フ

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