映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を観て、人生に愛されるためにはどうしたらよいのか考える。
And did you get what you wanted from this life, even so?
I did.
And what did you want?
To call myself beloved,
to feel myself beloved on the earth.
この人生で望んだものは果たしたか?
果たしたよ。
何を望んだんだ?
自分を愛されしものを呼ぶこと、
自分がこの世から愛されたと実感すること。
(本作の冒頭でテロップされるレイモンド・カーヴァーの詩)
ここ数年でSNSが一気に普及した。
なぜ、これほどまでに、普及したのだろうか?
それは、人間誰しも持っている、「誰かに認められたい」という願望を手ごろに満たしてくれるからだと思う。
「今日、僕はこんなことをした」
「すごい!」
「いいね!」
「いいね!」
いいねの数に心を満たされる。
思い起こせば、僕は幼少のころは何をやっても褒められた。
下手くそな絵を描いても褒められた。
幼稚園のころ「薔薇」という感じを描いたら、すごく褒められた。
「漢字博士」だと。
小学生の時にパソコンを触ったら褒められた。
「天才少年」だと。
でもそれって僕だけのことではない。
そんな天才少年はゴロゴロいたるところにいた。
時が経つにつれ、かつての天才少年は、褒められる回数は減り、ただの凡人であることに気づき、周囲に埋没していくのが、世の常だ。
そして、社会人になる。
世間を知らない若いうちは、坂の上にある雲が、ぼやっと見えている。
一緒懸命働けば働くほど、自分が成長しているのを実感し、顧客・上司からの信頼を獲得していき、坂を一歩一歩登っていってるなあという実感を持つ。そういうことで労働から人生の充実感を得ていく。
しかし、いつのころからか、坂の上の雲には到底到達することはできないと気づく。自分の限界を知る。そんなこんなで、多くの人間は敗北感を感じ、埋没していく。
今年のアカデミー賞受賞作「バードマン」を観た。
主人公は落ちぶれた映画俳優。
過去「バードマン」というヒーロー物の主人公で大人気俳優だったが、いまや落ちぶれている。
過去の自分の声が脳内で囁く。
「お前は一体何をしているんだ。お前の実力はこんなんじゃないだろう」
彼は、ブロードウェイで一発逆転を狙っている。
その顛末を、ハリウッドの商業主義の批判とブロードウェイの芸術志向への批判を混ぜ、クールなジャズドラムをバックにスタイリッシュな映像で描くドタバタなブラックコメディだ。
中年のおっさんになっても、いくつになっても、人間は誰かに認められたいと思う。
全盛期というものを経験している人はなおさらだ。
しかし、結局のところ、人生の幸せってなんなんだろう。
誰かに認められたいってのは究極のエゴだし、主観的なものにすぎない。
私は10年前くらいに、2泊3日で千葉県の山奥の寺で修行体験をした。
3日間ひたすら正座しお経を読んだ。
そこで言われたことで未だに覚えていること。
「我執」
自分に執着すること。
それを忘れることが修行なのだと。
正座すれば、足がとても痛くなる。
それは「我執」があるからだ。
この世のすべての問題は「我執」があるからで、
満たされない想いは「我執」があるからだ。
冒頭の詩のように、自分を肯定し、自分は人生に愛されていると実感することが、充実な人生なのではないかと思う。
子供の頃に「青い鳥」という童話を読んだ。
チルチルとミチルは、青い鳥を探し大冒険するんだけど、結局青い鳥は身近な場所にいた。
って話だったと思う。
本作は、中年のおっさんが「青い鳥」を探すお話。
「青い鳥」は身近にいるのだけど、我執のある人間には、それが見えない。
かつての栄光をひきづってるあなたへ。
人生、こんなはずではなかったと思ってるあなたへ。
そんな人にオススメする。
ラストシーンが何を暗示しているのか。
意見が分かれるところだけど、主人公の娘の表情に救われる。
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