映画『この世界の片隅に』を観て
こうの史代原作の漫画を映画化した「この世界の片隅に」を観ました。
原作漫画の大ファンですので、制作が発表されて以来、ずっと楽しみにしてきました。
この作品は、太平洋戦争時の広島県呉市、広島市の一般庶民の生活を、一人の女性とその家族の視点から淡々と描きます。
戦時中の広島が舞台ということなので、えてして戦争の悲惨さを強調した反戦映画、お涙頂戴の感動作品となりそうなところですが、全くそんなことはありません。
主義主張、感動の押し売りは全くなく、日常生活をコミカルにほのぼの描いているだけです。その辺の戦争映画のようなPTA推奨的な鬱陶しさはありません。
ドジでおっとりした性格の主人公すずさんの日常生活にほのぼのする一方で、そのほのぼのした生活がいつかは戦争で破壊されていくのだろうという不安が交錯します。
日常生活を徐々に非日常が侵食していく様子、突然非日常が現れる様子を見るにつけ、現代に生きる私たちの日常も非日常と背中合わせだということを感じます。
とはいえ、全体的にはほのぼのムードな映画です。
戦時中ですが、一般庶民は普通に生活しています。
普通の生活を淡々と描くだけなのですが、時代考証を徹底的に追求していること、背景、人物などの動き・描写がリアリティ溢れているので、まるで自分が当時の呉で生活してるのではないかと思えるくらい、物語の世界にどっぷりと没入してしまいます。
そして、空襲のシーンの描写が凄まじいです。
焼い弾が生きているかのようにうごめく描写、爆弾の破片の危険さを意識させる描写、今までたくさんの映画を見てきましたが、これほど空襲シーンを恐ろしく感じたのものはなかったです。
それに音響が凄いので、自分があたかもその場にいるかのような臨場感を感じます。
だから、DVDではなく、絶対に映画館で見るべきです。
その他、印象的なシーンはたくさんあるのですが、私は玉音放送のあった日にご飯を炊くシーンが印象的です。
終戦の日も、日常生活に変わりはありません。
終戦の日も、ご飯を炊くことに変わりはありません。
今日も、明日も、明後日も、1年後も、何年後も、ご飯を炊くというようなセリフがあったように覚えています。
ご飯を炊くことは今に続いていて、すずさんが昭和20年8月15日に炊いたご飯は、平成28年に私たちが炊飯器で炊くご飯につながっています。
また、この作品は、たくさんのエピソードが時系列につながっており、エピソードの最初に、「9年1月」、「21年1月」というように、元号を外した年月のタイトルが表示されます。
つまり、ここで起きていることは特別なことではなく、戦時中も現代も市井に生きる人々の生活に大きな変わりはなく、このような事態はいつどこで誰の身に起こってもおかしくないということを表しているのではないでしょうか。
この世界の片隅で起こってることは、時代を超えて場所を超えて、誰の身にも起こりうることなのです。
最後に後悔したこと。
この作品は、大手の映画会社から敬遠され、資金調達が難航し、一時は作品の完成すら危ぶまれたそうです。
しかし、クラウドファンディングで多くの資金を調達したおかげで、日の目を見ることができました。
エンディングテロップにクラウドファンディングの支援者の名前が流れます。
それを見るにつけ、こんなに素晴らしい映画のクラウドファンディングを見逃していたことを後悔しました。
とはいえ、こんなに素晴らしい映画なのに、今のところ公開されている劇場は少ないです。
ぜひ、劇場に足を運んで、この映画の素晴らしさを広めましょう!
PS.
映画館でもらったキャラメル
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