銃・病原菌・鉄
日本人は、欧米人に対しては畏怖の念を持っていますが、
日本人以外のアジアの人々、アフリカの人々を見下しているように感じることがたまにあります。
人種差別主義者ではないのでしょうが、感覚的、無意識的に、「日本人は優秀な民族だ」と思っている人が多いような気がします。
特に外国人と接する機会の少ない人は、そのような傾向が強いと感じます。
そうは言っても、
日本のテクノロジーや文化は凄いじゃないか。
欧米列強に侵略されず、アメリカに戦いを挑んだこと、そしてソニーやトヨタがあるのは、日本人という民族が優秀だからだ。
という意見があるでしょう。
でも待てよ。
ニューギニア人とかアボリジニとか自給自足の生活を行っている人たちが、本当に私たちより劣っているのだろうか?
私たちが熱帯雨林の奥地や大自然の中で生活ができるか?
そう考えると、実は彼らの方が優秀なのではないか?
そもそもなんで、彼らと日本人の文明が、こんなにまで違うのか?
彼らがソニーやトヨタのような会社を作ることだってできたはず。
逆に、日本人が自給自足の狩猟生活で過ごすことになってたかもしれない。
.......
その回答は、ジャレド・ダイヤモンドの著者に記されています。
ピュリッツァー賞受賞作
『銃・病原菌・鉄』
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎 ジャレド ダイアモンド,倉骨 彰草思社 売り上げランキング : 8239 |
上下巻で約800頁の圧巻のボリューム。
ついに、読破しました。
趣味は読書といいながら、この名作をそのボリュームからずっと敬遠していましたが、読み始めると知的好奇心を刺激され、すごく読み応えがありました。
おかげで、グローバルな格差の根本的な原因が分かりました。
決して、人種の優劣なんかじゃない。
では、その結論を2文字で言うと、
驚くべきことに、
「地形」
なのです。
元も子もないけど、これがすべての原因なのです。
ユーラシア大陸は東西は長く伸びているから、文明が発達しましたが、
一方で、アメリカ大陸、アフリカ大陸は、南北に伸びているため、文明が発達しませんでした。
農業、家畜、鉄、銃 など
どこかである新しい技術が生まれるとします。
東西には伝播しやすいが、南北には伝播しにくい。
東西に伝播しやすいのは、さほど気候は変わらないから。
南北だと、それは厳しい。
1万3000年前は、人類に格差はありませんでした。
しかし、各大陸の地形の違いによって、大きな格差が広がりました。
ユーラシア大陸は、アメリカ、アフリカ大陸をはるかに上回るスピードで発展していったのです。
そして、その格差がはっきりと表れた瞬間が訪れます。
1532年11月16日
スペインの征服者ピサロがインカ皇帝アタワルパを捕らえました。
本書の表紙は、まさにその瞬間を描いたものです。
ピサロはわずか168人、インカ皇帝アタワルパは8万人の兵士によって守られていたのにもかかわらず、二人が対峙して数分後にアタワルパは捕らえられました。
それは、銃、鉄製の武器による圧倒的な戦力の差によるもので、わずか168名のスペイン人によって、たった1日で7000人のインディオが殺されました。
このように直接の原因は、銃、鉄なのです。
そしてそれ以上に、ヨーロッパ人が持ち込んだ病原菌により、免疫を持たないアメリカ大陸の先住民の多くが死に絶えました。
インカ帝国に始まり、北アメリカの先住民、オーストラリアのアボリジニと
「銃、病原菌、鉄」を持つ者が、持たざる者を征服する歴史が繰り返され、現在の世界の格差が形作られたのです。
強引にまとめます。
つまり、
世界中の民族間、人種間の格差は、
生物的な差異ではなく、おかれた環境により形成された差異。
根本的な要因は、各大陸の「地形」によるもので、
東西に伸びているか、南北に伸びているか、
その違いが、持つ者と持たざる者の格差を生み出し、
「銃、病原菌、鉄」を持つ者が、それを持たざる者を征服し、
今の世界を形成した。
ということ。
それにしても、
世界的格差の根本的原因を突き止めると、
「地形」だなんて、
やるせない気持ちになります。
でも、それは大きな希望にもなりました。
「人種に優劣なんかない」
ということを説明できる知識を与えてもらったからです。
そして、現代にはインターネットがあります。
インターネットは、地形という物理的障壁をあっさりと超えることができます。
世界中どこにいても世界の英知に触れる事ができるからです。
実際に、世界中の人々がオンラインでアメリカの有名大学の講義を受けています。
パキスタンやモンゴルの少年少女が優秀な成績を収めたという話題は記憶に新しいことです。
1万3000年に渡って「銃・病原菌・鉄」によって広がった格差が、
今後数十年で「インターネット」によって無くなる。
まさに今は人類の歴史上の大転換期にいるのではないでしょうか。
地形の恩恵で、今の生活を享受できている私たち日本人ですが、
その恩恵を受けれる時間は、あと僅かかもしれません。
インカ帝国皇帝アタワルパのような情報弱者のままでいるのか、
スペインの征服者ピサロのようになるべきなのか。
歴史は、形を変えて繰り返されることでしょう。
【参考】ジャレド・ダイヤモンドの著作
文明崩壊 上: 滅亡と存続の命運を分けるもの (草思社文庫) ジャレド ダイアモンド,Jared Diamond,楡井 浩一草思社 売り上げランキング : 2666 |
私の過去ブログ
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