『謎の独立国家ソマリランド』を読んで
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本 独立国家ソマリランド, 謎
『謎の独立国家ソマリランド』という本を読んだ。
ソマリランド共和国は、アフリカのソマリア共和国の中にある国だ。
ソマリアときいて、
海賊、リアル北斗の拳というイメージが浮かぶ。
僕は、リドリー・スコット監督の「ブラックホークダウン」という映画を思い出す。
いずれにせよ、崩壊した国のイメージだ。
しかしながら、どんな国なのか実際のところよく分かってない。
そんななか、実はソマリランドは、国連から国として認められてないが、平和な独立国家であるということを聞いて驚いたのが、本書を手にとった理由だ。
以下、本書に書いてあることをざっと書きてみると、
(2013年発行本なので今はどうかは分からないが)
ソマリランドは伝統的な血縁社会の枠組みの中で、平和と安定が保たれている。
貧しくて何もない国だから、利権がない。利権がないから汚職も少ない。土地や財産や権力をめぐる争いも熾烈でない。
現地人のこの言葉に妙に納得する。
「いったん国際社会に認められたらどうなる? 援助のカネが来て汚職だらけになる。外の世界からわけのわからないマフィアやアンダーグラウンドのビジネスマンがどっと押し寄せる。そのうちカネや権力をめぐって…」
つまり、ソマリランドは「国際社会が無視していたから和平と民主主義を実現できた」というのだ。
欧米諸国がいらんおせっかいをするせいで、アフリカ諸国が混乱しているのかもしれない。
秩序については、独自の戦争の掟「ビリ・マ・ゲイド」のおかげで保たれている。
直訳すると「殺してはいけない者の掟」という意味で、女性、子供、老人、賓客(たまたまその場に居合わせたゲスト)、傷病者、宗教的指導者、共同体の指導者、和平の使節、捕虜に危害を与えることを禁止しており、内戦中も、この戦争法のおかげで女子供はまず殺されることはなかった。
また、経済的にも安定している。
通貨ソマリア・シリングは、20年間中央銀行が存在しないにもかかわらず、今でも共通通貨として一般の人々に利用されている。
無政府状態になり、中央銀行もなくなり、新しい札が流通しなくなたっため、シリングは安定するようになった。
そして近隣の国の通貨よりも強くなったという。
中央銀行が存在しないのに強い通貨、経済学の常識を軽くひっくり返してしまったのだ。
ソマリアは「経済学の実験室」と一部で呼ばれている。
ただ、ソマリランド以外の国は大変危険で、そこへの訪問記事はとても緊張感が伝わってきた。
海賊が基幹産業(?)のソマリランドの隣のプントランド
リアル北斗の拳と言われる南部ソマリア
しかし潜入すると、確かに危険ではあるが、一般市民は普通に過ごしており、ソマリアの首都モガディショは栄えている。中央政府はいないのに秩序は保たれている。
軍隊を含めて全部「民」に移行したのだから、ある意味、究極の小さな政府を実現できている。
以上、西欧的な民主主義、国家とかいったい何なんだろうと思ってしまう。
国家よりも部族、血縁によって秩序が保たれること、
国際社会の支援がない方が安定するなど
実は、日本国内の地方創生の話にも通じるのかなとも思う。
このように、内戦で荒廃した国の中に、世界中に知られてない平和な国があるなんて、現代のファンタジーかのようでとても興味深く読んだ。
終始ユーモアある語り口から未知なる国への冒険心を刺激してくれる。ふらっと行ってみようかと思わせる危険性もある。
しかし、そもそも国連に国家として認められてなく、我が国との国交もなく、何かあったときに身の安全は保証されない。
だから、私は本書でソマリアに行った気分に浸ることにする。
危険な国、未知なる国を取材してくれる人たちに感謝。
本は身の危険なく世界を広げてくれる。
コロナ禍で冒険に飢えているあなたに。
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