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映画『ノマドランド』を観て

公開日: : 映画感想文 ,

 

 

新型コロナのおかげで、私は基本、リモート勤務になった。ここ1年間、週に1、2回しか出社していない。それでもなんとかなっている。

 

今は広島県では外出半減など新型コロナ感染拡大防止集中対策が実施中であるが、コロナ収束後はリモートワークは当たり前のことになるだろう。

日本中、いや世界中をワークしながら回ることがあながち夢ではなくなってきた。

 

「また、そんな妄想を」と思われるかもしれないが、2年前に今の状況を想像できただろうか?

 

 

かつてヨーロッパの頭脳と呼ばれたジャック・アタリは、世界中の人間が遊牧民(ノマド)のように世界中を転々とする時代が来ると言った。

グローバル化やIT化の進展により、2050年には国家の役割は解体され、我々は全員、望むも望まないも、以下のどれかのノマドになるという。

 

・21世紀の新しい支配層「ハイパーノマド」

・定住民として国の枠組みの中に住みながら、ネットやガジェットを使って国境を越える「バーチャルノマド」

・仕事を求め世界中に出稼ぎに行かなければ食って行けない「下層ノマド」

 

 

 

新型コロナのおかげでデジタルが加速した現在、既に世界のどこかにハイパーノマドは存在しているだろうし、2050年を待たずともバーチャルノマドは数年のうちに普通のことになるだろう。

 

問題は下層ノマドだ。

新型コロナのおかげで、世界中に出稼ぎすらいけない「国内での下層ノマド」が急増する恐れが現実のものとなっている。

さらに、リンダ・グラットンが「ワークシフト」などで言ってたように、一生働く時代が現実のものになっている。

 

もはや保険会社や証券会社のパンフレットに掲載されているような豊かな老後など全く期待できず、一生働く時代になってきた。

そして、一歩間違えれば誰もが、家を失い下層ノマドに転落する可能性のある時代がやってきそうだ。(もはや僕が気がついていないだけで、既にそういう時代かも)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今年の米国アカデミー賞作品賞を受賞した映画「ノマドランド」を観た。

 

Ogp nomadland 01

 

 

ここで描かれるノマドは、下層まではいかない。キャンピングカーを所有できるほどの中流ノマドといった感じではある。

 

未来には無限の枝分かれがあるというが、私の10年後もありうる未来だなと思った。自分の老後を見てるようだった。

 

ここで描かれることは、決して人ごとではなく、今の環境は明日には激変するかもしれない。

僕の老後もこうなる可能性はある。

ただ、これがを簡単に自己責任だとも言えない。

どんなに努力しても不可避なことはたくさんある。

とにかく、一生働き続けばいけない時代になるのだろう。

 

 

それにしても、ブラック職場の代名詞と揶揄されることが多いAmazonの倉庫がいい具合にセーフティネットとして描かれてたのは意外だった。

主人公は、旅の最中でAmazonで季節労働者として働く。

 

ケン・ローチ監督の映画『家族を想うとき』ではAmazonは家族を引き裂く悪の権化かのように描かれてたのとは対照的だ。逃げ場のないイギリスという島国と広大な北アメリカ大陸の違いなのか。

 

しかし、Amazonの倉庫も近いうちにはロボットに置き換えられると思うと、ますます我々には逃げ場がなくなっていくのだろう。

 

 

 

夫に先立たれた高齢の主人公は、独りで終始寂しそうな雰囲気だったけど、生まれながらに独立心が強く縛られない性格らしく、悲壮感はまったくない。どんな環境になっても愛する人との思い出があれば逞しく生きていけるんだという希望を感じられた。

 

病室のベッドに縛り付けられて死ぬことを考えれば、旅をしながら死ぬことは人間の尊厳を保てる最期だと思う。

 

 

 

農業で定住化するまでは人間はみなノマドだったことを思うと、ひとりでもどんな環境になっても強く生きていかなければいけないという覚悟が我々に求められてきたのかなと漠然と思う。

 

 

 

 

 

 

 

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