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ルポ 資源大国アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄

公開日: :


先週、アフリカ経済の魅力についての本「アフリカ 動き出す9億人市場」を読んだが、
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2462816
今回は、暴力という負の側面からアフリカをとらえた本を読んだ。
毎日新聞白戸圭一記者の
「ルポ 資源大国アフリカ 暴力が結ぶ貧困と繁栄」
だ。
著者がヨハネスブルクの特派員時代に取材した内容をまとめた渾身のドキュメンタリー。
紛争地帯や犯罪組織への突撃取材は、臨場感たっぷりで、行間から緊張感が伝わってきて、
読んでるこちら側をも緊張させ、とても読み応えがある。
アフリカは金、ダイヤモンド、石油など資源が豊富で、経済も活況を呈しているように見えるが、
それらは、一部の富裕層の懐を潤しているだけで、すさまじい所得格差を生んでいるのだ。
南アフリカの異常な犯罪発生率やナイジェリアの組織犯罪の理由は、
所得格差がありすぎると、人は真面目に働くことが嫌になり、犯罪を通じて「富」にアクセスしようとするからだ。
また、長年の内戦状態のコンゴやスーダンについては、兵士同士殺し合うには勝手にしろと思うが、
これらの紛争での一番の問題は、兵士による住民虐殺が横行していることだ。
なぜ住民を虐殺するか?に対する本書での1つの解答例には戦慄を禁じ得ない。
住民に恐怖心を植え付けることで、対抗勢力に協力しなくなるようにするためだからだ。
ソマリアについても緊迫感あふれるルポだ。
無政府国家とはどういう状態なのか。
表現は適当ではないかもしれないが「北斗の拳」さながらの暴力が支配する社会がそこにはある。
映画「ブラックホークダウン」で描かれた世界がそこにはあるようだ。
冷戦時ソマリアには米ソから大量の武器が流れた。
今やその武器はソマリア中に拡散し、海賊として先進国に襲いかかる。なんという皮肉。

さて、ルワンダ虐殺を描いた映画「ホテル・ルワンダ」にこういうセリフがある。
大虐殺の映像を撮ったカメラマンがこう言う。
「この映像をテレビで流しても何も変わらない。酷い、かわいそうと言うけど、そのままディナーを続けるだけだ」
(こんな感じのセリフだったと思う)
私の反応もそんなものだ。
この本を読んで、怒り、哀れみ、同情をすることはあっても、その先の具体的行動に進むわけでもない。
無力な一市民である。
しかし、私たちは無関係とはいえないので、こうした事実があるということを認識する必要はある。
たとえば、
かつて、給料の3か月分で買った婚約指輪は、デビアス社を通じ、アパルトヘイトによる黒人弾圧の資金になっていたことを。
私たちが輸入している石油の一部がスーダンのダルフール地方での住民虐殺の資金になっていることを。
携帯電話、パソコンなどのハイテク機器に使われるレアメタルが、コンゴの腐敗した政権の軍資金となっていることを。
石油などの資源は、決して、現地の一般人の生活を向上はさせておらす、貧富の格差を加速させているということを。
これらは、トーマス・フリードマンの「グリーン革命」の以下の記述を思い出す。
 
 地面に穴を掘るだけで政府が歳入を増やすことができる国では、
 自由は狭められ、教育予算は不足し、人間の発展が阻害される。

絶望的な話ばかりだが、
本書は全般を通じて悲壮感はあまりない。
困難な状況を生きる人々への著者の眼差しはとても温かい。
私個人的には、
インターネットを駆使して全世界から支援者を募るスーダンの反政府軍の活動の話や
無政府国家ソマリアでの起業家の話に、一筋の光明と人類の希望を感じた。
そして、自らの危険を顧みずに活動するジャーナリスト、医師、NGOなどを忘れてはいけない。
まだまだ人類には希望があるのだから。

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