人事部は見ている。
(注)今回は「ビジネスパーソン」という言葉は使わず、あえて「サラリーマン」という表現を使います。その方がピッタリだから。
私は日本のサラリーマンをやってきて約20年ですが、飲みにいくと必ず「次の人事異動」の話になります。
人事異動の話はみんな大好きです。
それに職場には人事評論家や人事博士がたくさんいます。
あの人はどうだあ、こうだあ、あのときああだったから今こうなんだ。とか。
ワイドショー好きな専業主婦と同様、人事への関心はすこぶる高いです。
しかし、そうはいっても実はみんな人事部のことはよく知りません。
そんなあなたに、この本をご紹介。
『人事部は見ている。』
この題名が良い。
家政婦は過去形だけど、人事部は現在進行形。
CIAのように、公安のように、ビッグブラザーのように、
人事部は見ている。。。
という、権謀術数的な内容を想像してしまいますが、サラリーマンの一番の関心事なんだけど、秘密のベールに隠されてよく分からない「人事部」というものにスポットをあてた、しごく全うなマジメな人事部入門です。
ある程度将来がうっすらと見えてきた私のような40歳過ぎのサラリーマンよりも、20代の若手にこそ読んでもらいたいと思います。
私も若いころにこういう本を読んどけば、ちょっとは違ったサラリーマン人生だったのではないかなあって思ったりします。
人事部が何を考えているのか、何を見ているのか。
この本を読んどけば、理不尽だと思われる人事についてもある程度心の準備や自分なりの戦略が立てられると思うからです。
さて、本書で一番目を引く箇所は、「出世の条件」でしょう。
多くの企業の人事担当者、役員にヒアリングした結果から導かれた「出世の条件」
それを一言で表現すると
「(結果的に)エラくなる人と長く一緒にやれる能力」
えっ?
なんじゃ、そりゃ?
でも、そうなんです。
まずは、(結果的に)エラくなる人と「出会い、知り合う」ことです。
エラい人からしても、まったく知らない人を「ヒキ」上げることはできません。
「同じ部署に在籍した」
「職場は違っても一緒に仕事をした」
「ゴルフで何度も一緒にラウンドした」
など同じ時間、空間を共有することが必要なのです。
それは単なるゴマスリや茶坊主ではなく、仕事の力量がないといけないは言うまでもないですが、どんなに優秀な人だとしても、エラくなる人との接点がないとヒキあげられるのは困難であることも確かです。
社内のエリート部署にいれば必然とその機会は増えますし、若い間に頑張ればエリート部署へ配属される可能性も高いです。
だから、「今」を精一杯がんばることなのです。
そして、最も大事なことが、直属の上司との関係を良好にすることです。
間違ってもケンカなぞしてはいけません。
直属の上司の評価こそが、将来のサラリーマン生活をサバイブするうえでの出発点になるからです。自分ではどんな優秀と思っていても、直属の上司に評価されないとほかの誰にも伝わりません。
そんな理不尽な。。。
といっても冷静に考えれば、当たり前だと分かるはずです。
確かに、人事評価は、多少上司の好き嫌いや上司との相性の影響を受けるかもしれません。
しかし、部下同士、仲間同士の評価とかけ離れた評価をすると、評価者自身が職場の支持を失い、評価者自身の評価をさげることにつながりかねないため、めちゃくちゃな評価になることはありえません。
だから、繰り返します。
「今」をがんばりましょう。
がんばれば、「(将来)エラくなる人」と知り合う機会も増えます。
上司のマネジメントについては、ドラッカーも数々の言葉を残してますので、ご参考まで。
上司の強みを生かすことは、部下自身が成果をあげる鍵でもある。
可能なかぎり上司を効果的に働かせ成果をあげさせることが、部下たる自らの義務であり利益であることを認識することである。
結局のところ、昇進していく上司の部下になることが、成果をあげるためのベストの方法である。
現実は企業ドラマと違う。
部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るなどということは起こらない。
上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである。
あるがままの上司が、個性ある人間として存分に仕事ができるようにすることである。
上司を不意打ちから守ることは部下たる者の仕事である。
【参考:過去記事リンク『プロフェッショナルの原点』】
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2908401
といっても、人事部もその存在自体が、曲がり角を迎えています。
有無をいわせない転勤、配置転換命令という強力な人事権は、終身雇用という保障があったからこそ成り立っていました。が、もはや終身雇用は幻想です。社員を強力に縛ってたパワーは無くなりつつあります。
それに、高度成長期の名残である新卒大量採用、大量教育、入社年次による一括管理は、グローバル化、ダイバーシティが求められる現在には、適合しなくなってきています。
そもそも上司と部下がいて上意下達でつながっている発想、机を並べてシマを作る猿山のような発想から考え直さないといけないのかもしれません。
そして、知恵と意欲にあふれた人材は、そもそも管理できないという発想から始めることが必要で、人事の仕事は彼らを支援すること以外は何もできないということが出発点なのかもしれません。
経営の名書『ビジョナリー・カンパニー2』によると
偉大な企業になる条件の1つに「適切な人をバスに乗せ、不適切な人をバスから降ろす」ことをあげています。
適切な人をバスに乗せれば、管理しなくてもいいし、モチベーションを鼓舞する必要もない。と書かれています。
【参考:過去記事リンク『ビジョナリー・カンパニー2』】
http://pub.ne.jp/TakeTatsu/?entry_id=2353582
成長から成熟を迎えた現在、もはや「出世」をエサとしたマネジメントが力を持たなくなり、「働く意味」を問うケースが増えてきました。
そのために著者は最後に1つの解決法を提示されています。
それは「選択」
仕事を自ら選択できるようにすること。
そうすれば、多くの問題は解決できるはずです。
しかし選択には大きな責任が伴います。
1人1人のビジネスパーソンが、会社の言いなりではなく、自らのライフスタイルを主張し、人事面について交渉し選択できるほどのスキルを磨かなければいけない時代になっていくのでしょう。
最後に、
再び『ビジョナリー・カンパニー2』より
「人材こそがもっとも重要な資産だ」という格言は間違っている。
適切な人材こそがもっとも重要な資産なのだ。
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