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レ・ミゼラブル

公開日: : 最終更新日:2016/06/05 映画感想文

(注意)ネタバレあり

私たちは、いずれ死ぬ。
生まれた瞬間から死ぬために生きている。
武士は死に場所を求め、
宗教を信じる者は死後天国に行く為に神を信じ徳に生きる。
世界中のほとんどの人間にとって、現世は辛いことばかり。
唯一死ぬことで救済される。
唯一死ぬことで解放される。
そのために宗教を信じ、善行を重ね、神に祈る。

「レ・ミゼラブル」を観た。
歌の力は偉大なことに改めて気づく。
登場人物の心情が歌を通じてダイレクトに伝わってくる。
全世界で息の長い人気を続けている理由がよく分かる。


私は、恥ずかしながらこの年になるまで主人公の名前は知ってたけど、「レ・ミゼラブル」の話をまったく知ならかった。
私のような文学に疎いものが感想を言うのもおこがましいが、率直な感想を述べたいと思う。

この世の中には「救いようのない話」と「救われる話」がある。
これは「信じるものは救われる」系の話に分類されるだろう。

しかし私にとっては「救いようのない話」に思えた。
やっと最後に幸福が訪れたジャン・ヴァルジャンを死なす必要があったのだろうか?
聖人として死ぬことが美徳なのかもしれないけど、残念に思えてしかたない。
結局死ぬこと以外で救われる方法はないかと思うと、やるせない。
そして、悪役の位置づけだったジャヴェール警部。
彼を自殺させる必要があったのだろうか?
法の番人として職務に忠実だった彼に、会社に忠実な日本のサラリーマンを重ねて見たからなおさら辛いものがある。
結局彼の魂は救われなかった。
自分が信じたものが全て崩れさった絶望の中、橋の上から身を通じたジャヴェール警部の自殺シーンのまるで地獄へ堕ちるかのような描写には、やるきれなさが残る。
結局救われなかった「ロード・オブ・ザ・リング」のゴラムを見ているようだ。

本作の舞台である19世紀のフランスは現代の社会と何も変わらない。
女工哀史、蟹工船のような職場は、今のブラック企業、派遣社員の境遇と同じだ。
クビになればあっという間に社会の底辺まで落ちてしまう。
暴動を起こす若者は、アラブの春、オキュパイウォールストリート、ギリシャやロンドンのデモ、原発デモを見ているようだ。

このように、超格差社会が進んでいる今この時代だからこそ、世界中で民衆が立ち上がっているからこそ、改めて「レ・ミゼラベル」を映画化したのだろう。

女工哀史のように工場で働く女性は悲惨な人生を送る。
若者の暴動は失敗に終わる。

救いようのない話だ。

しかし、年代、世代、国を違えど、多くの人間が同じような悲惨な状況にありながら、希望を胸に戦っている。
たくさんの犠牲者の積み重ねが、人類を少しずつだが前進させているに違いない。
19世紀のパリの若者の無念は、世代、国を超え、今の私たちに引き継げられてるのだ。

この世は救いようがないことで満ちあふれてる。

しかし、
それ以上に愛と希望で満ちあふれてると思いたい。

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